第1ユニット 第5回研究会報告

井上円了の哲学思想

第1ユニットの第5回研究会が、第2ユニットの研究会と合同で2月16日に東洋大学白山キャンパス第2会議室にて開催された。第1ユニットの発表者は竹村牧男研究員で、題目は「井上円了の哲学思想」であった。

まず竹村研究員は、井上円了の哲学観を以下の三点にまとめた。第一に、哲学は諸学を統括する中央政府のようなものであり、諸学の基礎を論究するものであるということ。第二に、実学のように直接の有用性はないとしても、大工にとっての物差しのように、尺度としての有用性が哲学にあるということ。第三に、哲学は思想練磨の術として、広い視野や高潔な人格を養うものであるということである。

竹村研究員は以上のように井上円了の哲学観を特徴づけたうえで、円了がその哲学で何を真理として見出したのかについて問題にした。それは、絶対と相対が同じものではないが、同時に離れたものでもないということであり、ヘーゲル哲学と仏教哲学に共通する真理である。また、円了が妖怪学の探究を通じて見出そうとした本当の神秘(真怪)も、この絶対と相対が離れないという事態なのである。日常にふれる春の花や秋の月こそ、絶対と離れない現象として、真の神秘そのものなのである。

しかし同時に円了は、絶対と相対の両者の関係を観察するだけには留まらなかった。そこからさらに、活動主義ともいえる立場に進むのである。円了によれば、哲学において真理を探究するのも、他者のために働くことが目的なのである。徹底して古今東西の哲学を研究した円了が、ひたすら他者のために働くという単純な境地に辿り着いたのである。

以上のような竹村研究員の発表を受けて、とりわけ円了の活動の問題に関して活発な討議が交わされた。多くの聴講者が来場し盛況の内に研究会は終了した。