全体シンポジウム「22世紀の世界哲学に向けて」を開催

2015年10月10日(土)、東洋大学白山キャンパス8号館7階125記念ホールにて、国際哲学研究センター全体国際シンポジウム「22世紀の世界哲学に向けて」が開催された。2011年7月に発足した本センターは5年目を迎え今年度で終了するが、その一区切りとなる全体シンポジウムとなった。

河本英夫研究員が開会あいさつを行い、続いて、基調講演、シンポジウムが行われた。基調講演はゲオルグ・シュテンガー(ウィーン大学)教授による「間文化的哲学 哲学全体への挑戦として」というタイトルで行われた。講演では、「哲学とは、社会政治的問題や難民問題等、他の外的な理由によってだけではなく、間文化的にならねばならないのであり、哲学は、その内的な哲学的、したがって哲学することの基盤にかかわる根本的理由によって間文化的になりゆく」、「間文化的思惟ないし哲学は、方法論的及び体系的解明の作業、すなわちそれと結びついている「自己反省化」の作業を省こうとは思わない」という二つの命題が詳述された。

続くシンポジウムでは、相楽勉研究員が、「日本哲学の再構築に向けた基盤的研究」を課題とした第1ユニットの活動の総括として、「日本における「哲学」受容の独自性―自然観の転換という観点から―」と題した発表を行った。西洋哲学受容において翻訳が果たした役割を積極的に評価し、今後の「世界哲学」において「異文化の翻訳」についての研究が必要になるだろうということが示唆された。続いて、永井晋研究員が「世界哲学におけるイランという視座」と題する発表を行った。「多文化共生社会の思想基盤研究」を目的とする第3ユニットでのユニークな活動が、4年前から行ってきたイランとの文化交流である。イランは、地政学的のみならず、文化的・思想的に東洋と西洋の「中間/媒介」となりうるので、イランを方法論的視座とすることにより東洋と西洋の対立枠を解体して新たな世界哲学を構築することが可能であることが指摘された。なお、この提題は9月に行われたイラン出張の報告も兼ねている。 

総合討論では河本研究員の司会のもと3名の発表者が討論をし、山口一郎客員研究員が通訳を務めた。河本研究員は、22世紀の世界哲学の構築を100メートルとすれば、5年間でこのセンターが到達したのは2メートル半くらいであると述べ、さらなる研究の継続の必要性を訴えた。渡辺章悟研究員が閉会あいさつを行い、30名ほどの来場者のある中身の濃いシンポジウムとなった。