第3ユニット 連続研究会「文字化された宗教教典の形成とその意味」第3回

連続研究会「文字化された宗教教典の形成とその意味―多文化共生を図るツールを考える―」第3回

10月21日、東洋大学白山キャンパス8号館第2会議室にて、第3ユニット連続研究会「文字化された宗教教典の形成とその意味―多文化共生を図るツールを考える―」第3回が開催され、松田和信氏(佛教大学)より、「インドから中央アジアへ―インド語出土写本から見たバーミヤンの仏教―」という発表がなされた。

仏教経典は当初は暗唱によって伝承されたが、紀元前後には写本による伝承(文字化)が始まる。ただ、インドでは仏教の伝統は途絶えたので、これまで写本が発見されてきたのはスリランカやネパールなどであった。そのような中、1990年代初頭、それ以外の地域から多数の写本が発見されるようになった。まずはアフガニスタンのバーミヤン渓谷ザルガラーンから、カローシュティー文字あるいはブラーフミー文字を用いて貝葉や樺皮に書写された仏教文献が発見された。写本類は、紀元2世紀から8世紀に遡る様々なインド文字を用いて、貝葉、樺皮、羊皮に書写されたガンダーラ語あるいは梵語の仏教文献であったが、その総数は小さな破片も含めると1万点以上にのぼった。また、ガンダーラや、パキスタンのギルギットからも多数の写本が発見された。内容は、伝統的な教団(部派)文献と大乗仏教文献の両方を含む。バーミヤンで発見された写本の用紙についていえば、古いもの(3世紀以前から)はすべて貝葉に書かれているが、5~6世紀には樺皮や獣皮も見られるようになり、8世紀以降ではすべて樺皮に書かれるようになったという変遷が見られる。このように、松田氏の自身の数十年に渉る写本研究や最新の研究成果をスライドを交えながら丹念に解説した充実した内容であった。20名程度の来場者があり、発表の後には盛んな質疑がなされた。