第3ユニット 第4回研究会

「アンセルムスの思想における『共生』」

2012年10月25日(木)、東洋大学白山キャンパス第2会議室において、第三ユニット第4回研究会が行われた。発表者は早稲田大学教授の矢内義顕氏、題目は「アンセルムスの思想における『共生』」であった。発表の要旨は次のとおり。

カンタベリーのアンセルムス(1033/34-1109年)において、「共生」、「共に生きること」とは、彼の修道院的な霊性と神学的な思索の稀有な総合のうちに見いだされる。

彼にとって「共生」とは、第一に「神と人との共生」を意味する。これは、三位一体の神の似像である人間が、記憶・理解・愛によって神を求めることであり、彼の神学的な思索,修道生活をとおして遂行される。第二に「人と人の共生」。これは「友愛」によって実現される。彼にとって真の友愛とは、神を求める者同士が、魂の奥底において互いの自己を認め合うことにあり、これは、天国においても存続し、完成する。第三に「自然と人との共生」。彼にとって、神によって創造された自然との共生は、人が神の意志に従うことによって可能となる。第四に「諸文化の共生」。彼がアングロ・サクソンの伝統とノルマン修道制の伝統の共存・調和を実現しようとした点に、諸文化の共生へ努力が見いだされると言えよう。