方法論研究会(村上勝三、沼田一郎、坂井多穂子)

「方法の越境性、あるいは越境の方法」検討会

2月17日、東洋大学白山キャンパス6号館文学部会議室において、国際哲学研究センター第2ユニットの「方法論」研究会「方法の越境性、あるいは越境の方法」検討会が行なわれ、当センター研究員の村上勝三、沼田一郎、坂井多穂子による相互討論がなされた。

今回の研究会は、昨年7月に行った同名のシンポジウムの成果を、来年度に刊行予定の書籍に収録するために、その論稿の検討会という位置づけで行われた。前回、三人の研究員は、それぞれの研究方法(西洋哲学、インド学、中国文学)についてクロスセッションを行い、その際に互いの研究方法の類似と差異が浮き彫りになった。この点を村上研究員がまとめ上げ、沼田研究員と坂井研究員ともに討論し、内容を練り上げていくことになった。

村上研究員は、諸学問の研究方法の共通点として、実証的・客観的なテキスト読解、先行研究の適切な評価とそれに対する独自性、当該研究者と共有できる解釈の提起、語彙と文法の分析に関するコンピューター利用、研究領域における固有な辞書の使用、「比較、類似、一般化、仮説設定、抽象、観察、枚挙、合致、調和、類比」という分析方法を用いること、真理の探究の七つを挙げた。これらが研究において満たされているならば、異なる学問領域間でも、相互浸透性(類似)と相互反発性(差異)が生じることとなる。村上研究員は、領域間の越境という経験において、他学問の知識を無媒介に取り入れるのではなく、自らの研究自体が再帰的に見直され、その地盤が豊かになると述べた。

次に、村上研究員は、領域間の差異について、対象の違い、ジャンルの違い、視点の違いを挙げた。しかし、これらの違いは、先に述べられた真理の探究と関連づけて考えれば、それらの差異の相対性が、無限遠点としての絶対的真理へと収斂すると述べた。村上研究員は、そうした真理という一つの方向へと研究が動いていく契機としても、研究領域間のクロスセッションという越境の経験が必要であると提起した。

以上の点について、沼田研究員と坂井研究員からそれぞれコメントと質問がなされ、相互討論が行われた。会の後半は、フロアを交えて質疑応答が行われ、参加者からの質問がなされた。様々な視点で検討され、内容豊かな議論が活発になされた。