第3ユニット国際シンポジウム「グローバル化時代の哲学」

 2015年12月11日、東洋大学白山キャンパス5号館5B12教室にて、第3ユニットは、国際シンポジウム「グローバル化時代の哲学」を開催し、海外からの2人の研究者に提題いただいた。通訳は小野純一客員研究員(東洋大学非常勤講師)が務めた。永井晋研究員(東洋大学文学部)による開会あいさつのあと、まず、マルクス・ガブリエル客員研究員(ボン大学)が「グローバル哲学?(Globale Philosophie?)」と題する講演を行った。氏はまず理性の普遍主義・単一性を正しい仕方(つまり、局地的な声にも耳を傾けることができるようなあり方)で理解可能なものとするためにはグローバルな哲学から出発すべきだと問題を提起した。その上で、他者の存在や他者の理性について、諸哲学者を引き合いにだして論じ、最後に、われわれの背景的想定を他の者たちがもつであろう背景的想定と対話において明確に言葉で表現し、批判がいつでもできるような状況に身を置くことの必要性を訴えた。 

 続いてハンス・スルガ氏(カリフォルニア大学バークレー校)が、「グローバルな権力、グローバルな政治、グローバルな哲学」と題する講演を行った。氏はまずグローバル化を、人間的権力が拡大する過程であり、この過程は技術的諸技能と科学技術的諸媒体でもって動かされるとさしあたり規定し、次に、権力(Macht)という概念を詳細に検討した。さらに、グローバルな政治は、人間的権力のグローバルな拡大によって成立したと述べ、現代社会の位置づけや問題点を歴史的に考察した。その上で、擬似グローバル的単調さの時代にあって、グローバルな哲学的思考は、グローバル化の人間的な出発条件である多元主義をしっかり見据えねばならないとし、グローバルな哲学的対話は異なる思考様式と思考伝統の間にある様々な差異や移行に精確に取り組むであろうことなどを提起した。

 講演録は翻訳とともに『国際哲学研究』5号に掲載された。