連続研究会「明治期における人間観と世界観」第8回

第1ユニット連続研究会「明治期における人間観と世界観」
第8回研究会報告(三浦節夫)

2015年2月18日、東洋大学白山キャンパス1号館1312教室にて、三浦節夫研究員の発表による、「日本近代における伝統の「発見」―井上円了の『仏教活論序論』」と題された研究会が開催された。この研究会は、「明治期における人間観と世界観」をテーマとした連続研究会の一つとして開催されたものである。

三浦氏は、井上円了の『仏教活論序論』の構成を紹介し、その内容について説明した。そして、『仏教活論序論』で述べられている円了の思想遍歴を紹介することによって、その内容がどのように形成されたのかを明らかにした。和漢洋の諸学を修めながら、それらの内に真理を見いだせなかった円了であるが、東大で哲学を学ぶことによってその真理を知ったのである。同時に仏教が哲学と一致するような真理を備えたものであることに気付き、仏教の改良を志すようになるのである。円了は『仏教活論序論』の中で哲学と仏教の共通点を挙げながら、仏教の語る真理を明らかにしたのである。

三浦氏の発表の特徴は、田村晃祐、金子大栄、高木宏夫、山口輝臣、池田英俊などの研究を参照しながら、『仏教活論序論』の意義を、歴史的評価を含めて明らかにしたことである。円了は、宗派別に分かれていた仏教を、一つの概念に高め、「学」として仏教の教理をまとめた。このことは、教団内部に閉じられていた教理を歴史的社会的に開放したことを意味している。また、近代的な諸学問と関連づけながら仏教の真理への信仰告白を行い、同時に仏教教団の現状への批判を行ったことは、仏教の歴史の中でも大きな事件であったと言えよう。 

 三浦氏は、自身の経験を交えながら、円了の『仏教活論序論』の意義を、多面的に描き出した。円了は、伝統的な仏教を、真理を備えたものとして「発見」し、近代的な知の枠組みへと高めた。様々なエピソードを交えながら、円了の仕事の意義を改めて描き出したことが、この研究会の大きな成果であった。