第2ユニットの第5回研究会が、第1ユニットの研究会と合同で2月16日に東洋大学白山キャンパス第2会議室にて開催された。第2ユニットの発表者としてフランスから黒田昭信研究員を迎え、「西田哲学の方法論」と題された研究報告がなされた。
西田は、「真実在」の定義から、哲学の方法を導き出そうとする。真実在とは、「知るもの」と「知られるもの」の二項対立では捉えられないものであり、対象化を通じて知ることができないものである。その意味では直接的に感得されるべきものであるが、決して神秘的な合一体験や、すべてを回収する自我を意味するのでもない。自己を否定して自己を対象化しつつ、対象化された自己をさらに否定していくようなものとして、創造的に新たに自己を更新していくものなのである。こうした真実在から、世界が自らを知る自覚として、創造的自己の自覚が哲学の方法となる。
これは、常に自己否定を媒介にする自覚でもあるので、哲学の方法とは否定的自覚とも考えられる。また、真実在が自らを知る自覚として、世界が世界自身に対する関係と特徴づけられる。
一方、科学の方法としての「行為的直観」とは、世界と自己との関係から考えられる。ここで考えられる自己とは、ポイエーシス的自己である。しかも、ポイエーシス的自己として働くことができるのも、創造的な自己の自覚が根底にあるからである。ここで、科学の方法と哲学の方法の違いが浮かび上がる。科学の方法は、自己と世界の関係の中でポイエーシス的自己の自覚を遂行することである。さらにそのポイエーシス的自己の根底に、哲学の方法として、世界自身の自覚としての創造的自己の自覚があることになるのである。
以上のような黒田客員研究員の発表の後、「否定」という言葉の意味や西田の場所論について、活発な議論が交わされた。多くの聴講者が来場し、盛況な研究会であった。
なお、発表の模様は第2ユニット研究会(YouTube)から見ることができる。