中国経済が崩壊しない理由

2016.3.6

(ねこ)

中国経済が崩壊するとずいぶん前からマスコミや新聞で騒がれているにゃ。でもなかなか崩壊しないのにゃ。にゃんで中国経済は崩壊しないのかにゃ。中国の社会主義が優れているからなのかにゃ。

(じいちゃん)

中国経済が崩壊しない理由は、中国が「非常識な国」だからじゃ。

(ねこ)

にゃんと、中国はとんでもない大馬鹿野郎の国なのかにゃ。

(じいちゃん)

いやいや、非常識といっても「とんでもない野郎」という意味ではない。資本主義の顔をしておるが、資本主義国では当たり前に行われることが中国ではされない、あるいは資本主義の国では考えられないような行動をするという意味じゃよ。だから常識的に判断しようとしても無理ということじゃ。

(ねこ)

ふ~ん常識が通用しないのかにゃ、例えばどういう事にゃ。

(じいちゃん)

例えば中国のバブル崩壊を考えてみよう。バブル経済では、企業が資産(株式や不動産など)の売買を繰り返すことで資産価格がどんどん値上がりするのじゃが、そのとき、手持ち資金だけで資産の売買をするわけではない。多くの企業は銀行から借金して、それを元手にして資産の売買をしておる。資産の買値よりも売値が大きければ、銀行に借金と利息を返済しても手元に利益が残るわけじゃ。そのため資産が値上がりを続ける限り、いくら借金しても儲かる。

とはいえ、いつまでも資産価格の上昇が続くはずがない。ある時、不動産価格が下落に転じる。資産が値下がりを始めると資産を持っていても儲からないから、多くの企業が資産を売って銀行に借金を返済しようとするんじゃ。資産を買う人より売る人が多くなれば資産価格は下落するから、ますます資産を売る人が増える。すると売りが売りを呼んで資産価格の「暴落」が生じる。

普通の資本主義国ではそれが原因でバブルが一気に崩壊するんじゃ。ところが中国では資産を大量に保有している企業に対して共産党が「資産を売るな」と命令しているとのウワサがある。資産が売られなければ市場の暴落は起こらないわけじゃよ。こうした命令は普通の資本主義国では行われないから、常識的に言えばあり得ない。

(ねこ)

なるほど、だから非常識なんだにゃ。でも、それって無理があるんじゃないのかにゃ。別のところにひずみが出ないのかにゃ?

(じいちゃん)

確かにひずみが出る。なぜじゃろうか。資産の売却が禁止されるとなると、借金の返済もできなくなる。すると企業に貸し付けを行っている銀行が貸し付けたおカネを回収できなくなり、貸し付けが「不良債権」となる。こうして銀行の不良債権が増えると銀行の経営が苦しくなり、銀行がおカネを貸さなくなる「貸し渋り」になるのが普通じゃ。それどころか企業に貸しているおカネを無理にでも回収しようとする、それが「貸し剥がし」じゃ。貸し渋りや貸し剥がしになると、世の中におカネが回らなくなり企業の売り上げや収益もどんどん悪化してしまう。すると普通の資本主義の国では、企業の倒産がどんどん増加するんなずなんじゃ。

しかもバブルだけじゃない。過剰投資の問題があるんじゃ。投資の多くは借金によって行われる。じゃから投資したおカネは返済する必要があるんじゃ。たとえば借金して分譲マンションを建設するとしよう。最初のうちは建設されるマンションの数が少ないから良く売れるし、借金の返済も簡単じゃ。ところが我も我もとマンションを建設する業者が増えると、あまりにも多くのマンションが建設されるものじゃから、マンションの価格が暴落するし、売れ残りが大量に出てしまう。すると借金の返済ができなくなり、企業が倒産してしまうはずなんじゃ。

(ねこ)

でも、まだ中国経済は持ちこたえているにゃ。

(じいちゃん)

そうじゃな、おそらく銀行が借金を「追い貸し」していると思う。つまり、普通は銀行が企業に対しておカネを貸さなくなるはずなのに、逆にますますおカネの貸し出しを増やしているのじゃろう。中国共産党が銀行に命じて貸し出しを増やしていると思う。さらに「シャドーバンク」がこうした企業に貸し付けを行っている可能性もある。普通の資本主義国ではこんなことはない。ちなみに企業は赤字が原因で倒産するのではない。おカネの支払いができなくなるから倒産するんじゃ。ニュースで倒産が報道される際に「手形が不渡りになる」と言うが、これは企業が支払い不能な状態になる事なんじゃ。逆にどれほど真っ赤な赤字企業であっても、銀行からおカネを借りて支払いに応じている間は倒産しないんじゃ。銀行がおカネを貸さなくなった瞬間に倒産する。その時が中国経済崩壊の時じゃ。じゃから貸し付けを止められないのじゃ。

実際、中国の民間企業の借金は増加しておる。中国の経済指標がどんどん悪化しているにも関わらず貸し出し(借金)は伸び続けており、なんと総額2000兆円を超えたというのじゃ。これは中国のGDPの2倍を超える金額で、他の先進国がGDPの1.5倍程度であるのに比べてかなり大きいと言える。このまま貸し出しを続ければ、かつて人類が経験した事の無いほどの借金を抱えるかも知れんのう。

(ねこ)

にゃんと、借金が膨大なうえに、さらに借金を増やすことで経済の崩壊を防いでいる可能性があるのにゃ。もしそうだとしたら、問題を先送りしているだけで、この先必ず破綻するのにゃ。

(じいちゃん)

普通はそう思うのじゃが、そこが中国の非常識なところじゃ。もしかすると今度は中国政府が銀行や企業の「不良資産の買い取り」を始めるかも知れん。資本主義国ではあり得ないがの。もし中国政府が国債を刷って、その財源で銀行や企業の抱えている不良債権を買い取るとどうなるか?銀行の不良債権を買い取れば、銀行の経営は一気に改善する。また価格が下落して含み損を抱えてしまった企業の不動産を取得時の価格で買い取れば、企業の経営も一気に改善する。

(ねこ)

すごいにゃ、中国政府が不良債権を全部買い取れば問題解決だにゃ。

(じいちゃん)

そうじゃな、しかし、その代わりに中国政府が不良債権を抱え込むことになる。そしてその損失分をどうするかが問題となるじゃろう。それは日本も似たようなものじゃよ。日本は銀行や建設業界の抱える不良債権を直接買い取ったわけではない。しかし、国債を発行して財政出動することによって、間接的に買い取った形になったんじゃ。その結果、政府が膨大な借金を抱え、建設業者と銀行の不良債権は消えたんじゃ。そして今、政府の抱えた膨大な借金をどうするかが問題となっておる。

(ねこ)

そしたら、国債を刷らない方法で不良債権を買えばいいにゃ。たとえば財源として国債を発行するんじゃなくて、税金を増やしたり、通貨発行をすればいいにゃ。

(じいちゃん)

そうじゃな、本当は「税金を増やす」が良いじゃろう。と言っても生活の苦しい一般庶民に課税すれば暴動になる。中国は社会主義などと言っておるが、実はアメリカよりも強烈な格差社会じゃ。共産党の幹部は私腹を肥やしてそれをドルに換金してアメリカに送金しているらしいし、他にも中国にはバブルで儲けた大富豪がごまんといるからな。そうした連中に課税すれば相当なおカネが手に入るはずじゃ。そうすれば社会の格差も縮小するし不良債権も減る。しかし強欲な共産党員がそんな事をするはずがない。奴らは資本主義の旨味を味わってしまったのじゃ。究極の拝金主義に侵されておる。

であれば、通貨「元」を湯水のごとく印刷し、それで不良債権、不良資産を買い取ることは出来るじゃろう。ただしその結果何が生じるかわからん。そんなことをやった国はいままで無いからじゃ。普通に考えればハイパーインフレになる可能性がある。しかし預金準備率を強力に引き上げたり増税を実施して消費の抑制策を同時に行うならインフレが抑えられる可能性もある。一方、元を刷ると為替市場で投機筋が売り浴びせを仕掛けてきて元が暴落するかもしれん。そうなると国内の消費が増えなくても、輸入価格が急増することで激しいインフレになる可能性もある。いずれにしろ通貨を刷って民間の不良資産を買い取った国は無いので、本当に何が生じるかわからん。面白いから実験して欲しいのじゃ。

(ねこ)

ふにゃー実験なんて無責任だにゃ。変なことすると日本も巻き込まれて大変な事になるにゃ。

(じいちゃん)

ほっほっほ、そうじゃな。確かに安易に実験されても困るが、何もしなければ確実に崩壊することは間違いない。今は問題を先延ばししているだけじゃ。どうせ崩壊すれば日本経済もただでは済まないじゃろう。となれば、普通の国では絶対にできないような政策をやってみて欲しいと思う気持ちもあるのじゃよ。もしそれがうまく行けば、他の国でも同じことが出来るかも知れん。