投資って何だ 投資の本当の意味

(推敲中)

2015.7.2

(じいちゃん)

おカネを使わずに投資とは何かを考えてみるのじゃ。

(ねこ)

ふにゃ、投資っておカネを使うことじゃないのかにゃ。株式投資とかいって、株式市場で株を買ったり売ったりしてるにゃ。おカネを抜いたら投資なんてないにゃ。

(じいちゃん)

普通の人はそう思うじゃろうが、あれは投資ではなくて「投機」じゃ。マスコミが投資も投機もこちゃまぜにして「投資」と呼んでおるから多くの人が用語を混乱しておるのじゃ。投機は株などの金融資産や不動産資産の売買を通じて利ザヤを抜くことじゃ。株式市場も不動産市場も、ほとんど「投機」なんじゃ。投機は付加活を生み出さない。カネを増やしておるだけじゃ。

本当の投資とは、企業を成長させ、経済を成長させるために資源の配分を行うことをいうのじゃ。だから、投資におけるカネの動きはあくまでも表面的な現象であり、実体経済では資源が動いておるのじゃよ。

(ねこ)

へえ~、投資で資源を配分するってどういうことかにゃ。

(じいちゃん)

資源といえば「経済成長って何だ」の話でも触れた経済の3大要素である「労働力」「生産設備」「技術」の3つであると考えられるのじゃ。もちろん資源として材料も必要となる。たとえば投資家が、ある会社の新規発行株式を買うと、そのおカネは会社に渡る。これは資産家にとって「おカネによる投資」じゃ。会社はそのおカネを使って労働力を採用し、生産設備を準備し、商品を開発して、材料を仕入れ、財を生産して販売する。会社にとって労働力を採用し、生産設備を準備し、商品を開発して、材料を仕入れることが「資源による投資」となる。実際に財を生み出しておるのは会社じゃから、おカネを使わなくても投資でやっていることは説明できる。

(ねこ)

つまり、投資というのは、労働力、生産設備、技術、材料などを準備することなのかにゃ。

(じいちゃん)

そのとおりじゃ。経済活動で重要なのは、そうした資源をどのように組み合わせて財を生産し、それをまんべんなく社会に供給するかじゃ。組み合わせがへたくそだと、効率的に財が生産できなくて、たとえば人手ばかりかかって思うようにモノが作れない。そこで、誰かが資源の組み合わせを考えて生産活動を行わねばならないが、資本主義ではこれを資本家が主導でやっておる。また政府が行う場合もある。一方で社会主義では資本家ではなく、すべて政府が主導で行う。資本主義であろうと社会主義であろうと、資源の配分という意味での投資は必ず行われる。根本的にいえばカネは関係ない。

(ねこ)

なるほど、資本主義でも社会主義でもやっていることの根本は同じなのにゃ。資源をどう配分して財を生産するかにゃ。ただし資本主義では資本家がそれを主導し、社会主義では政府が主導するのにゃ。どっちがいいのかにゃ。

(じいちゃん)

なかなか難しい質問じゃ。社会主義は明らかに失敗じゃったから、資源の配分がへたくそだったのは間違いない。しかし資本主義が最高なのかといえば、バブルとバブル崩壊を繰り返し、デフレ不況で経済が低迷して失業者が溢れておる。失業者はまさに資源配分の失敗じゃ。ワシに言わせれば資本主義も社会主義もどっちもまるでダメじゃ。

(ねこ)

どうしてそんなことになるのかにゃ。

(じいちゃん)

非常に難しい質問じゃ。ワシが勝手に考えておることを話す。社会主義は社会全体を一つにして管理するため社会全体としての資源配分が可能となる。しかし、あまりにも大きすぎた。まして現代のような情報ネットワーク網がまったくない時代では、そんな巨大な組織を情報を用いて細かく調整することは不可能じゃったろう。あちこちで連携ミスによる資源配分の非効率が発生するはずじゃ。資本主義は無数の企業がそれぞれ自立的に管理されておるから、全体を管理しなくとも経済が成り立つ。個々の企業をみると企業間競争により、非常に効率的に資源が運用される。ただし社会全体として資源配分を最適化するメカニズムを持たないため、資源配分は利ザヤを求めて暴走し、インフレ、デフレ、不況、大量失業を生み出す。結果に資源を有効に活用しきれていない。そのように考えておる。

従って、それぞれの長所を取り入れ、短所を克服した新しい経済システムが必要なのじゃ。

(ねこ)

うひゃー難しすぎるにゃ。資本主義と社会主義の「良いとこ取り」の経済なんてできるのかにゃ。

(じいちゃん)

ワシもよく分らん。じゃが、高度な情報ネットワークと人工知能がカギになると考えておる。

資源の配分には情報が極めて重要じゃ。なぜそう思うのか。生産は非常に多くの作業が連携しており、しかも生産地が別々に存在しておる。たとえば自動車のタイヤ、フロントガラス、ミラー、ライト、座席、エアコン、電子制御機器など別々の工場で作られ、しかも種類が無数にある。いつ、何を、何個必要なのか。すべて管理されなければスムーズな生産は不可能じゃ。これは高度な情報ネットワークに連結されたシステムによって可能となる、実際にそれらを体現したものがSCM(サプライチェーンマネジメント)じゃ。

さらにそれらの生産は需要と密接に関係しておる。需要のない商品を生産するのは資源のムダであり、最適な生産とは「オンデマンド」つまり、需要にあわせて生産する事じゃ。とはいえすべて予約生産とはいかない。需要と生産にはタイムラグが存在するので、資源配分のムダが生じる可能性もある。そこでビッグデータ解析などによる人工知能によって最適な需要を予測して生産する。また資源の過不足の予測も人工知能により可能になるかも知れん。

つまり、いままで個別の企業が独立してバラバラに行っていた生産活動が、高度情報と人口知能によって集中的に「社会全体として」生産可能なシステムを構築することが可能になると予測するのじゃ。これは社会主義で目指そうとしていた生産方式に近いかも知れん。

(ねこ)

つまり、高度情報化と人工知能によって「全体最適化」の生産システムが可能になるって予測だにゃ。

にゃんだか、投資の話からすいぶん飛躍してきたのにゃ。

(じいちゃん)

つれづれなるままに書いておるからのう。とにかく、投資と言えば兎角おかねを考える人が多いが、投資の本質はおカネではなく「資源の配分」なのじゃ。投資の本質を踏まえれば、社会や経済のシステムを考えるうえで、もっと柔軟な発想が出来るようになる。血眼で「カネ、カネ」と投資先を探しまわるのは止めるべきじゃ。そんなことで経済が成長するのではないし、人々が豊かになるのではない。

経済活動で重要なのは、資源をどのように組み合わせて財を生産し、

それをまんべんなく社会に供給するかじゃ。