財政再建の方法まとめ 消費税ありきではない

2015.7.13

(じいちゃん)

財政再建の方法論をまとめてみたのじゃ。

<財政再建の方法まとめ>

A)税収を増やす

①名目GDPの増加(パイを大きくする)

・インフレ目標の達成・・・金融緩和政策

・実質GDPの増加・・・金融緩和、公共投資、投資減税、規制緩和、給付金

②増税(国民を締め上げる)

・ストック課税・・・金融資産課税(現金預金、証券債券)

・フロー課税・・・不労所得課税(配当、利子、キャピタルゲイン)、所得税、法人税、消費税

B)歳出を削減する

①公務員改革

②公共投資見直し

③社会保障・年金改革

④医療費抑制

(ねこ)

方法はいっぱいあるにゃ~、消費税の増税はたくさんある財政再建の方法論のうちの一つに過ぎないのにゃ。それなのに、まるで消費税の増税だけが財政再建のような話ばかりにゃ。よっぽど消費税の増税が財務省にとってうまみがあるんだにゃ。

(じいちゃん)

おまけに、財政再建の方法論をマスコミは「なぜか」一覧表にしない。おそらく消費税以外の方法を国民に知られたくないのじゃろう。これが「報道しない自由」じゃ。財務省とその提灯を持つ新聞各社は、財政再建の手段に過ぎないはずの「消費税の増税」に異常なほど執着しておるため、どの新聞を読んでも「財政再建のために消費税の増税」としか書いてない。じゃが、ワシは手段にはこだわらない。結果として国民の負担が少なく財政再建できれば良いのじゃ。それじゃあ、順番に簡単な補足説明をしようかのう。

A)税収を増やす

①名目GDPの増加(パイを大きくする)

日本の税収の多くは循環する通貨(フロー)に課税する方式をとっておる。じゃから循環する通貨が増加すると税収が自動的に増加するのじゃ。通貨の循環量は名目GDPが増加すると増加する。従って名目GDPを増やすことで財政再建を図るのじゃ。この方法は俗に「経済のパイを大きくする」と言って、経済を拡大することでみんなの取り分を多くすることで財政再建を行う方法なので、国民が重税に苦しむことはない。理想的な方法じゃな。

では、どうすれば名目GDPが増加するのか。名目GDPは全国の市場で商品が取引されるときに使われるおカネの量、つまり全国の売上高の総額が増えれば増加する。では、どのような場合に売上高が増えるのじゃろうか。

・インフレ目標の達成・・・金融緩和政策

一つはインフレじゃ。インフレになると商品の単価が値上がりする。商品の単価が上がれば商品の売れる数量が増えなくとも、自動的に売り上げ額が増加する。だから、現在日銀が打ち出しているインフレターゲット2%を達成すると、商品の単価が2%増加するから自動的に売り上げが2%増加して名目GDPも2%増加する。すなわち、インフレになるだけで名目GDPが増加するのじゃ。このインフレターゲットを実現するためには、金融緩和(量的緩和)が有効じゃ。

・実質GDPの増加・・・金融緩和、公共投資、投資減税、規制緩和、給付金

全国の売り上げ総額を増やすもうひとつは実質GDPの増加、つまり実質経済成長を達成することじゃ。これは商品の単価が増えるのではなく、国内の景気が回復して市場で取引される商品の量が増えることじゃ。すると売り上げが増加するので、循環する通貨量も増える。従って名目GDPも増加する。つまり先ほどのインフレと合わせて、

「名目GDP成長率=インフレ率+実質GDP成長率」の関係があるのじゃ。

実質経済成長を実現するためには、金融緩和によって企業がおカネを借りやすくする方法や、公共投資によって有効需要を作り出す方法、国民に給付金を支給して消費を喚起する方法のほか、一般に「成長戦略」と呼ばれる方法がある。それが規制緩和、投資減税などの政策じゃ。TPPなどもこれに位置づけられるじゃろう。

②増税(国民を締め上げる)

これは財務省と新聞社の大好きな方法じゃ。国民を締め上げて税金を搾り取るのじゃ。ワシはこの「禁欲すれば救われる」というのは単なる暗示じゃと思う。昔から人々には「禁欲信仰」があって、人々は禁欲すれば見返りに救われると考えてきた。これは暗示に過ぎん。こういう思い込みは昔から多いが、現代社会は禁欲すれば救われるほど甘い世界でない。それより経済理論が重要じゃ。仮に増税といってもいろいろな種類がある。

・ストック課税・・・金融資産課税(現金預金、証券債券)

これはストック、簡単に言えば貯め込まれているおカネに課税する方法じゃ。この方法は家計および企業の現金預金や証券債券に課税するのじゃ。これはピケティ氏が主張していた「資産課税」とほとんど同じじゃよ。現在の世界不況は「過剰な貯蓄と低い投資」が引き起こしているとの見解は経済学者に一致した見方じゃ。貯蓄が多すぎるのじゃから、資産をたっぷり貯め込んでおカネを使わない個人や会社に税を負担してもらうわけじゃ。

この課税方法の優れた点は、不況になっても税収が減らず、極めて安定した税財源となることじゃ。所得税や消費税は景気が悪くなると税収が落ち込んでしまう。ところが一般に景気が悪くなるほど政府はおカネを使う必要に迫られる。つまり現在の税制は「税収の必要な時ほど税収が減る」システムになっておる。ところが金融資産課税の場合、資産は景気が悪くなっても簡単に減ったりしない。逆に日本の金融資産はデフレ不況でも増え続けたのじゃ。すなわち安定した税収を得るには消費税などより金融資産課税の方がはるかに安定している。しかも消費税のような逆進性(所得の低い人ほど税負担が重くなる)がない。にもかかわらず、マスコミは金融資産課税をスルー(無視)しておる。

なお、ストック課税にはこのほかに不動産などの固定資産税や相続税がある。

・フロー課税・・・不労所得課税(配当、利子、キャピタルゲイン)、所得税、法人税、消費税

フローとは先ほども説明したように循環するおカネのことじゃ。現在の日本の税制はフローへの課税が大部分じゃ。この中で注目すべきは「不労所得課税」じゃ。日本の配当(株主に支払われる配当金)課税率は20%と、ドイツ(26%)イギリス(37.5%)フランス(60.5%)(いずれも最高率)に比べて驚くほど低い。にも関わらず、なぜかマスコミは完全にスルーしておる。配当課税は法人税との関連もあるから単純比較はできんが、話題にすら取り上げられないのはおかしい。

また株価上昇などの資産値上がり益(キャピタルゲイン)が急増しておるから、これに対する課税も当然ながら検討すべきじゃ。そうすればバブルの膨張速度を押さえることもできる。株式譲渡益に対する課税も日本(20%)は、ドイツ(26%)イギリス(28%)フランス(60.5%)(いずれも最高率)に比べて低い。このような議論もマスコミではまったくスルーされておる。

さて財務省・新聞社連合の大好きな消費税じゃが、これは時代遅れの税制じゃ。現在の経済状況は消費税という税制が考案された当時とは似ても似つかない状態にある。昔はインフレが深刻じゃった。消費税は消費を抑制するからインフレを抑える働きがある。じゃからこれは「インフレ」が当たり前じゃった前世期の税制としては優れておる。しかし今の時代はデフレが深刻で「貯蓄過剰で投資不足」になった。消費や投資を増やさねばならないのじゃ。にもかかわらず消費税は消費を減らす。つまり時代に逆行した税制で、ガラパゴス税制と言える。しかも、御用学者が「広く浅く公平」とか言うが、実際には低所得者ほど税負担率が重くなる「逆進性」があるし、資産課税に比べて景気変動の影響を受けやすく、税収の安定性も低い。

B)歳出の削減

財政再建のもう一つの方法は、使う金を減らすことじゃな。いわゆる「緊縮財政」じゃ。じゃが緊縮財政は景気を冷やす副作用があるので「両刃の剣」じゃ。もし緊縮財政で経済そのものが収縮すれば逆に税収が減少して財政再建が不可能になる可能性もある。そして「緊縮スパイラル」つまり、

緊縮→経済衰退→税収減少→緊縮の繰り返しで、経済が破綻する恐れもある。従って、どの分野の歳出を抑制するかの判断が難しいのじゃ。

①公務員改革

公務員改革によって行政の効率化を図り、公務員のリストラによって人件費を抑制する方法じゃ。なぜかマスコミは社会保障カットばかり必要性を強調して、公務員改革の話題はスルーしておる。「公務員の人数は他の先進国に比べて多くない」というが、そんなことは関係ない。税収が無いという理由だけで社会保障費を「聖域なく見直す」のだから、公務員改革も聖域なく見直すのが筋じゃ。カネがないなら聖域なくすべて削減じゃ。

平成26年における公務員の人件費は国家公務員・地方公務員など合わせておよそ26兆円じゃ。平成26年の税収がおよそ56兆円じゃから、税収のおよそ半分程度が公務員の人件費に消えておる。これでは財政再建など夢のような話じゃ。もちろん、名目GDPが増加すれば税収が増えるから公務員の人件費の削減も必要ないかも知れない。しかし財務省・新聞社連合は「日本は成長しない」と叫んでいる。新聞の言うとおり日本が成長しないのであれば公務員の人件費にメスを入れるのは避けられんな。日本が成長しないなら公務員を減らすしかない。

②公共投資見直し

③社会保障・年金改革

④医療費抑制

だいたい言いたいことは言ったので、②③④は省略するのじゃ。また機会があれば書くのじゃ。

(ねこ)

うへぇいい加減だにゃ~。それにしても、マスコミの大胆なスルーには恐れ入るにゃ。報道しない自由が如何なく発揮されているにゃ。こんな新聞なんか読んでいても考えが偏ってしまうにゃ。ところで、じいちゃんは、どの方法がお勧めなのかにゃ。

(じいちゃん)

「名目GDPの増加」。

これだけで十分じゃと考えておる。名目成長4%程度あれば自然に財政再建が出来るとの試算がある(高橋洋一氏)。名目GDPの増加など造作もないことじゃ。それでも増税を絶対にやりたいのなら、

「金融資産課税」と「不労所得課税」の増税。

この二つでOKじゃ。消費税の増税などまったく必要ないし、かえって財政再建に害じゃ。

(ねこ)

でも大新聞が「経済成長は難しい」「日本の潜在的な成長率はゼロ」「日本は成長しない」とか、さかんに主張してるにゃ。名目成長4%なんか達成できないとか騒いでいるにゃ。

(じいちゃん)

それは新聞は考える力がなくて、財務省のペーパーをそのまま記事にしているだけだからじゃ。ワシなら造作もなくできると断言できる。税収を増やす意味において重要なのは「おカネの循環量」じゃ。所得税も法人税も消費税も、すべておカネの循環量に掛け算して出てくる。だから世の中のおカネの循環量を増やせば自動的に税収が増えるしくみになっておるのじゃ。このおカネの循環量をあらわした指標が「名目GDP」なんじゃよ。名目GDPというのは世の中の売上高を全部集計した数字に比例しておる。つまり世の中の売り上げが増えれば名目GDPは自動的に増える。

(ねこ)

でもその売上を増やして名目GDPを増やすのが難しいと新聞がいってるにゃ。

(じいちゃん)

いやいや、恐ろしいほど簡単なんじゃよ。普通の人は売り上げを増やすためには売れる量が増えないとならないと考えておる。しかし実際には商品の単価が値上がりしただけで売り上げが増えるのじゃ。考えてみれば当然じゃな。100円の商品が110円に増えたら、それだけで売り上げは増える。たとえば日本銀行はインフレターゲット2%を掲げて金融緩和政策を行っておる。インタゲ2%ということは、モノの値段が年率2%上昇することを意味する。つまり、インタゲ2%によってモノの値段が2%上昇し、売り上げも年率2%成長し、名目GDPがほぼ2%成長するんじゃ。

(ねこ)

なるほど、インフレターゲット2%ということは、それだけで名目GDP2%成長になるのにゃ。でもいまだに「金融緩和でインタゲは実現できない」と騒いでいるにゃ。

(じいちゃん)

ちょっとやり方を変えれば、そんなの簡単じゃ。緩和したカネを銀行に撒くのではなく、国民に給付金として商品券や割引券を配布すれば良いのじゃ。日銀は2012年から2014年にかけて、140兆円のマネタリーベースを増やすと言っておった。つまり現金を140兆円も作ることじゃ。これは国民一人当たり100万円以上にもなるカネじゃ。このカネの半分の額でも国民に商品券や割引券として国民に給付すれば消費が増加する。経済は「はずみ車」のような性質があるので、起爆剤として国民1人50万円も給付金をだせば十分に効果があるはずだし、財源も「金融緩和」じゃから、日銀がカネを刷るだけじゃ。財源の心配もない。

(ねこ)

そんなことすると「ハイパーインフレになる」と言う人がいるにゃ。

(じいちゃん)

現在行われている金融緩和のかなり以前から、耳にタコができるほど「カネを刷るとハイパーインフレが出るぞ~」と聞かされてきたが、今日の金融緩和によってどこがハイパーインフレになったのじゃ?そういう輩に限って「消費税の増税は景気に影響しない」とか言っていた連中じゃ。金融緩和でカネを供給してもインフレを誘導することはできないと言いながら、金融緩和して給付金を配ると突如ハイパーインフレになるとか言い出す。どういう都合の良い頭をしておるのじゃろう。そもそもジンバブエじゃあるまいし、日本のような世界3位の生産力を持つ国は、ハイパーインフレになりたくても簡単にはなれない。

なお、インフレになると実質的な債務の負担は軽減する。これはピケティ先生も指摘している。たとえば戦後のフランスやドイツは膨大な国債を抱えていたが、インフレになったため「放置していても財政が再建した」らしい。もし日本がインフレになったら、それだけで政府は財政再建できる。

(ねこ)

なるほど、ハイパーインフレはまずいけど、インフレになるだけで実質的な国債の負担は軽減するんだにゃ。そんなことは絶対にマスコミは書かないにゃ。

(じいちゃん)

そういうことじゃ。「新聞を読めば経済を理解できる」というのは「真っ赤なウソ」じゃ。実際には経済の偏った情報だけを刷り込まれる。そして「わかったような気分」にさせられるのじゃ。そのようにして国民の頭を悪くして世論を誘導するのがマスコミの役割なんじゃ。マスコミは信じるな。もちろんワシの言うことも盲目的に信じるべきではない。自分で調べて、自分で考えるのじゃ。