世の中の借金は増え続ける宿命にある

2015.7.17

(じいちゃん)

世界中で借金が膨らみ続けている理由を考えてみるのじゃ。結論から言えば、世界の借金は永遠に膨らみ続ける宿命にある。

(ねこ)

世界の借金は永遠に膨らみ続ける宿命にあるのかにゃ。恐ろしいにゃ。なぜ世界は借金地獄から抜けられないのかにゃ。

(じいちゃん)

その根本原因は前にも説明したことがあるが、世の中のおカネがすべて借金からできておるからじゃ。世の中のおカネがどのようにして世の中に供給されるのか復習してみよう。おカネは最初に日本銀行が現金を発行することで作られる。その後、現金は民間銀行に主に貸し付けの形で供給される。民間銀行はその現金を元にして預金を発生し、この預金を個人や企業に貸し付けることで預金として世の中におカネが供給される。じゃから基本的におカネはすべて貸し付け、すなわち誰かが銀行から借金することによって初めておカネが世の中に流れ出すのじゃ。

(ねこ)

すごい借金経済システムなのにゃ。借金しないと経済が成り立たないのにゃ。でも世の中のおカネが借金からできていると、なんで借金が増え続けるのかにゃ。

(じいちゃん)

世の中のおカネはすべて借金からできておるのはわかったな?さて経済が成長すると生産される財(物やサービス)の量が増え、市場取引が活発になって、取引のためによりたくさんのおカネが必要になってくる。そのおカネは銀行が行う個人や企業への貸し付けによって供給される。従って経済が成長すればするほど、世の中の借金が増える仕組みになっておるのじゃ。

(ねこ)

ふにゃー、借金を返すどころか、経済が成長して景気が良くなるほど世の中の借金が増えるのにゃ。借金はしない方がいいけど、借金をどんどん増やさないと経済が成長しない仕組みなのにゃ。これじゃあ借金が減るどころか、世の中の借金は毎年増える一方なのにゃ。

(じいちゃん)

日本銀行がおカネをばんばん発行して民間銀行に供給し「銀行からカネを借りろ~、借金をどんどんふやせ~」と言っておるのは、借金を増やさないと経済が成長しないからじゃ。嘘ではないぞ。新聞にも「企業がおカネを借りると景気が良くなる」と書いてある。現代の経済は「借金経済システム」なのじゃよ。

(ねこ)

う~ん、でも家計の金融資産や企業の内部留保を使えば、借金を増やさなくても経済成長はできるんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)

確かにそうじゃが、金持ちも大企業も貯め込むことに熱心で、誰もおカネを使わない。使うどころか年々家計の金融資産も企業の内部留保も増え続けておる。ところで家計の金融資産や企業の内部留保として貯め込まれている貯蓄=「預金」はどこから生まれたおカネなのかな?

(ねこ)

う~ん、おカネは借金から生まれるから、家計の貯金も企業の貯金もすべて誰かが銀行から借りた「借金」からできているのにゃ。驚きなのにゃ。

(じいちゃん)

そういうことじゃ。ということは、国民や会社が苦労しておカネを貯めれば貯めるほど、世の中の借金が増えることを意味しておる。信じられないかも知れんが、これは嘘ではないぞ。バランスシートという帳簿の仕組みを理解すれば誰にでもわかることじゃ。それを理解するのは少々難しいが、詳しくはワシの拙著(金融緩和の天国と地獄)を読んでくれ。みんなが頑張っておカネを貯めるほど世の中の借金が増えると知ったときは、ワシも正直愕然としたし、なにか虚しい気分に襲われたものじゃ。だが、この根本的な仕組みについては「公然の秘密」となっており、専門家に問い詰めれば教えてくれるが、決してマスコミの側から積極的に発信されることはない。触れてはいかんアンタッチャブルな領域なのじゃ。

(ねこ)

たぶん為政者が国民に知らせたくないことって世の中に山のようにあるんだろうにゃ。マスコミが触れなければそれは「なかったこと」になるのにゃ。これが報道しない自由にゃ。

(じいちゃん)

ところで利息はどこから生まれると思う?

(ねこ)

おカネを借りた会社が商品を売って利益を出して、その利益の一部が利息になるのにゃ。

(じいちゃん)

多くの人はそう思っておるじゃろう。それじゃあ、その商品を買った時に支払ったおカネの一部が利息ということになるのう。それでは利息分のおカネはどこから来ると思う?おカネはずっと流れてくるものじゃから、遡れば最初にたどり着くはずじゃ。

(ねこ)

そんな風に考えたことはないのにゃ。でも、考えてみるとそれは誰かの借金にゃ。

(じいちゃん)

そう、利息も誰かの借金から出来ておる。さて世の中のおカネが総額で1000だったとしよう。Aさんが銀行から100のおカネを10%の利息で借りたとする。さてAさんがおカネを返す時には110返さなければならない。利息分の10は商売などによって世の中のおカネから得なければならない。だからAさんが110のおカネを銀行に返済すると、世の中おカネの総額は990に減る。その後、再びAさんが銀行から100のおカネを借りて110返済する。利息分10は世の中のおカネから充填されるので、世の中のおカネの総額は980に減る。さてこれをずっと繰り返すと何が起きるかな?

(ねこ)

ふにゃー、世の中のおカネがどんどん減って銀行に吸い取られていくのにゃ。大変だにゃ、最終的にはおカネが利息として全部銀行に吸収されて一円もなくなるのにゃ。

(じいちゃん)

その通りじゃ。それを防ぐためには、利息として銀行に返済する以上のおカネを常に作って世の中に供給しなければならない。つまり誰かが借金して次々に新たなおカネを作り出さねばならないのじゃ。そんなわけじゃから、銀行にあるおカネが利息のおかげでどんどん増え続ける一方で、その利息を支払うために新たな借金がどんどん増え続けておる。こうして、利息の支払いを介して銀行の預金は増え続け、世の中の借金もまた増え続ける。

借金を返済するためには、さらに多くの借金をするしかない。

これが「世界の借金は増え続ける運命にある」理由じゃよ。

(ねこ)

逆に借金が減ることはないの?

(じいちゃん)

あるぞ。不況になって経済が衰退する時じゃ。たとえば大恐慌になれば、借金は極端に減るじゃろう。そのかわり経済は荒廃し、預金も失われる。何しろ、預金は借金から作られたおかねじゃからな。

このような話は「バランスシート」を使えばもっとよく分るぞ。おカネについて知りたければ、バランスシートの基本的な仕組みを知るべきじゃ。