脱グローバリズムにはヘリマネが必須

2017.1.24

(ねこ)

世界に広がる保護貿易の動きによって世界経済が停滞すると新聞マスコミが毎日同じ記事を繰り返しているにゃ。これだけ同じ事を繰り返されると、何か心配になってくるにゃ。

(じいちゃん)

同じような記事を無限に繰り返すのは新聞マスコミの特徴じゃからな。そうして人々の思考力を麻痺させるのじゃよ。とはいえ、いきなりバリバリの保護貿易なんぞしたら、新聞マスコミが指摘するまでもなく世界経済が停滞するのは当たり前じゃ。もう何十年にもわたってグローバリズムが推進されてきたため、すでに世界中が貿易依存の経済体質になっておる。じゃから貿易を阻害したらおカネが回らなくなってしまう。前回も話したように、脱グローバリスムは徐々に時間をかけて行う必要がある。

(ねこ)

でも世界の貿易量が減る可能性は高いんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)

世界貿易の量が減る可能性はあるじゃろう。貿易量が減ると外国と自国の間で回っているおカネの量が減ってしまう。じゃから減った分だけ国内でおカネを回す必要があるわけじゃよ。それが内需拡大じゃ。外国に製品を売らなくとも、国内で作って国内できちんと消費すればおカネは回り、景気が悪くなることは無いぞ。もちろん貿易をやめろという話ではない。過度に外需に依存する必要は無いという話じゃ。

(ねこ)

どうすれば国内でおカネが回るのかにゃ。

(じいちゃん)

金融政策と財政政策じゃろう。金融政策は日本銀行がすでに異次元とも呼ばれるほどの規模で実施しておる。しかし成果がなかなか出てこないのう。即効性かつ確実性という意味では財政政策が有効じゃ。財政政策とは公共事業、教育科学振興、防衛あるいは社会保障などに政府がおカネを支出することじゃ。これをもっと大胆に行うわけじゃよ。

(ねこ)

でも、国の借金ガー、財政再建ガーと言ってるにゃ。政府の支出は増やせないにゃ。

(じいちゃん)

それはこれまでの財政支出が国債、つまり政府の借金によって行われてきたからじゃ。借金によって支出を増やしたもんじゃから、政府の借金が増えすぎてしまった。それが問題になっておるんじゃ。じゃから新たにおカネを発行して、そのおカネで財政支出すれば良い。それなら借金は増えない。それがヘリコプターマネー(ヘリマネ)じゃよ。

(ねこ)

ヘリマネって、ヘリコプターからおカネを撒くという方法かにゃ。

(じいちゃん)

まあ実際にはヘリコプターから撒くことじゃなくて、国民に平等に給付金を支給することじゃがな。とはいえヘリマネは何も給付金に限ったことではない。新規におカネを発行して財政支出を行うことすべてを指して広く言うこともある。だから政府がおカネを発行して給付金だけじゃなく、国土強靭化のようなインフラ整備をどんどんやれば良いのじゃ。

アメリカでトランプ大統領が誕生し、グローバリズムには陰りが見え始めておる。トランプ氏はどうやら性格に極端な傾向があるようなので、いきなり保護主義的な動きを強めるかも知れない。となれば世界の貿易が減少して世界のおカネが回らなくなる可能性もある。そうした場合、日本は急いで内需拡大に力を入れねばならん。つまり財政支出を緊急的に増やさねばならん事態も想定されるのじゃよ。そんな時に財政支出の財源を税収や国債だけに限っていれば、タイムリーに財政支出を増やすことができず、対応が遅れて日本経済は沈んでしまうかも知れん。

リーマンショック後に日銀が金融緩和を渋ったおかげで対応が後手に回り、円高地獄のデフレ経済に逆噴射したことはまだ記憶に新しい。経済政策には迅速な対応が欠かせない。トランプ大統領の登場によって、ますますヘリコプターマネーの重要性が高まってきたと思われるのじゃ。

(ねこ)

ヘリコプターマネーはどうやって実施するのかにゃ。

(じいちゃん)

ヘリマネについてはこのサイトで何度も紹介しておるが、やり方はいくつかある。最も簡単な方法は政府が新たに永久国債(返済の義務が無い国債)を発行し、日銀が現金を発行してこれを直接に買い取る方法じゃ。財政法の範囲でも国会の承認があれば可能な方法じゃ。政府はこの方法で調達した現金を財源としてヘリマネを実施できる。この方法じゃと日銀の保有する国債は増加するが、永久国債は返済義務がないので国の借金問題は生じない。他にも政府が政府コインを発行して日銀に預金する方法もある。たとえば10兆円の政府コインを発行する。

現在の日本では日銀が金融緩和政策として、年間およそ80兆円の現金を発行しておる。このうち15兆円を新規発行の永久国債に回せば毎月1万円、または年間一括12万円のヘリマネを全国民に支給することが可能じゃ。年間18万円の支給でも22兆円の通貨発行で可能じゃ。日銀が毎年80兆円も通貨を発行しておるのじゃから、不可能な数字ではないじゃろ。

(ねこ)

ヘリマネをやるとハイパーインフレになると主張する人も居るにゃ。

(じいちゃん)

インフレターゲット(物価目標)2%あるいは3%を超えない程度に調整すれば良い。つまり物価がインフレターゲットを超えたならヘリマネは減額あるいは中止する。下回ったら再開するという寸法じゃ。インフレが坂道を転げるように止まらなくなると騒ぐ連中も居る。しかしその原因は政府が発行した現金にあるのではなく、民間銀行による信用創造バブル、つまり貸し出しの増加にある。現在の通貨制度では、世の中のおカネの総量は主に民間銀行の貸し出し総額によって決まる。じゃから貸し出しを抑制すればインフレは止まる。

また、工場など生産設備が破壊された戦後のように需要に対して供給力がとても弱い場合は、需要に引っ張られてインフレが止まらなくなるが、現代は供給量が過剰なほど大きいので、物価が需要に引っ張られ続けることはないじゃろう。ハイパーインフレは杞憂に過ぎん。

(ねこ)

いいにゃ、ヘリコプターマネーをすぐにでも始めるべきなのにゃ。

(じいちゃん)

その通りじゃ、後手に回ってはいかん。アメリカが脱グローバル化へ向かう今こそ、ヘリコプターマネーの導入が必要になると思う。そして、ヘリマネを導入することにより、これまでさんざん言われて実現できなかった「外需依存型体質」から「内需型経済」への転換が実現するかも知れん。これまでも「外需依存からの脱却、内需拡大が必要」などと唱えられてきたが政府は一向に動かなかった。TPPのような貿易協定も、アジアの成長を取り込むとか、農業が海外へ打って出るとか、すべて「外需主導」の話ばかりじゃ。

失われた20年のデフレ経済で国民は所得が減少して貧困化した、すなわち国内にはモノが不足している人々が多いのじゃから潜在的な国内需要は十分にある。自由貿易を優先するより、まずはヘリマネで内需を満たし、国民を豊かにするところから始め事があるべき経済政策じゃと思う。

新聞マスコミのように危機を煽るばかりでは何の役にも立たん。トランプの登場を機会に、日本は自立性が高く、世界不況に振り回されない、強い、内需主導経済体質へと生まれ変わるべき時だと思うのじゃよ。

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