少子高齢化社会は耐久性の向上で解決

2015.10.28

少子高齢化社会は耐久性の向上で解決

(ねこ)

日本は少子高齢化、人口減少社会だから生産性を高めなければならないとか、移民を受け入れるべきだとか主張されてるにゃ。人口減少に対応するにはそうした方法論しかないのかにゃあ。

(じいちゃん)

他にもあるぞ。「良いものを長く使う」という方法じゃ。つまり商品の耐久性を高めるのじゃ。食料品などの消耗品を長く使うことは無理じゃが、耐久消費財や衣類などは長く使うことができるから、それらを大切に長く使うのじゃ。たとえば同じものを2倍長く使えば必要な生産量は2分の1になる。すると、もし労働人口が減少して生産力が低下した場合でも、耐久性を高めれば必要な生産力も同時に減少するから問題はない。もちろん安物の粗悪品を長く使うことはできないから、多少価格が高くても品質やデザインの優れた良いものを生産し、それを長く使えば良いのじゃ。

たとえば住宅の耐久性をさらに高めて100年、200年の使用を可能にすれば、中古住宅を利用することで、新たに建設しなければならない建物の棟数を減らすことが出来る。建物本体の耐久性を高めれば、キッチンやトイレなどの什器や間取りが時代の流行に対応しなくなった場合でも、リフォームすれば新築同様に利用できる。パソコンや家電製品のように機能性の進化が早いものについても、筐体に高い耐久性や汎用性を持たせておけば、内部のパーツを交換するだけで対応できる。そうすれば生産しなければならない部品を減らすことができる。もちろん「飽きる」という問題もあるから、伝統的デザインのように、長く使っても飽きない、あるいは味のあるデザインを工夫する必要はあるじゃろう。また商品の耐久性が高まればリサイクルショップのような中古市場が活性化するから、今の商品に飽きたら別の種類の中古品に買い替えるという方法もあるじゃろ。

(ねこ)

なるほどにゃ、確かに労働人口が減って生産力が低下したとしても、良いものを長く使えば、それだけ必要とされる商品の数量も減るから、少子高齢化で生産力が低下しても大丈夫なんだにゃ。日本人の古くからの美徳だった「もったいない」の精神が大切なんだにゃ。長く大切に使うにゃ。おまけに、良いものを長く使えば、資源の節約にもなるし、ゴミも減るし、いいことずくめなのにゃ。

(じいちゃん)

ところが、ここにおカネが絡むとこうした考え方は成り立たなくなる。人々が良いものを長く使うようになると、商品が売れなくなってしまうから企業はおカネが儲からなくなる。すると景気が悪くなってしまうのじゃ。現代の資本主義は「大量生産・大量消費」を前提として成り立っておる。ドンドン作ってどんどん売らないと利益が生まれないからじゃ。もし商品の売り上げが減れば人々に支払われる給与も減ってしまう。給料が減ると耐久消費財だけではなく、日用生活品の売り上げにも影響する。売り上げが減少するとGDPが減少して経済がマイナス成長になり、企業は投資しなくなる。そして税収も減少するから、財政運営も厳しくなり、財政赤字の問題が大きくなる。つまり経済システムが動かなくなってしまう。

だから、新聞もマスコミも、決して「良いものを長く使って少子高齢化に対応しましょう」とは言わない。そんなことをすると、スポンサーの商品が売れなくなってしまうじゃろう。マスコミはそもそも広告宣伝を行って人々の購買意欲を高め、大量消費を仕掛ける立場にある。

(ねこ)

そうなのにゃ。「少子高齢化だから同じモノを長く使いましょう」なんて話は聞いたことがないにゃ。大量生産・大量消費は資本主義の宿命なのにゃ。そうしないと経済が停滞してしまうのにゃ。だから良いものを長く使うなんてとんでもない話にゃ。そんなことをすると企業が潰れてしまったり、企業が海外へ逃げてしまうのにゃ。中国の市場が注目されるのも、爆買いが歓迎されるのも、すべて「大量消費」があるからにゃ。にゃんでこうなってしまうのかにゃ。

(じいちゃん)

それは現代の経済が「おカネの循環」で成り立っているからじゃ。このおカネの循環で成り立つ経済には、いろいろな矛盾がある。前回に説明した「ロボットと人工知能で失業が増える」という話もその一つじゃ。おカネの循環で成り立つ経済システムには、他にも大きな問題がいくつかある。たとえば、おカネの循環で成り立つ経済はデフレスパイラルのような奇妙な現象も引き起こす。この言葉は一時期にテレビのニュースなどで多用されたから、多くの人が知っておるじゃろう。

デフレスパイラスの仕組みはこうじゃ。景気が悪くなって商品が売れなくなると企業は商品の価格を引き下げる。商品の価格を引き下げれば一時的に売り上げは伸びる、しかし値下げすると企業の生産コストが上昇するから、労働者つまり消費者に支払われる賃金が削減されてしまう。賃金が減少すると消費者の購買力が低下するから、ますます商品が売れなくなる。これが延々と繰り返され、モノの価格がどんどん下がると同時に人々の所得もどんどん減少する。これがデフレスパイラルじゃ。こうした現象もおカネの循環が関係しておる。何回も同じことが繰り返されるのじゃ。同じことが連鎖的に起きる。

こうしたおカネの循環によって生じる問題や矛盾は、人々が普通の生活で理解している常識では解決することが難しい。なぜなら、普通の生活においておカネが循環することを意識する必要はないが、社会全体の経済である「マクロ経済」では、おカネが常に循環することを意識しなければならないからじゃ。

おカネを使わずに経済を考える際はおカネの循環など考える必要はないが、おカネを使った経済を考える場合は、常におカネの循環を意識する必要があるのじゃよ。