グローバル経済は連鎖崩壊する

2017.1.18

(じいちゃん)

グローバル経済は連鎖崩壊するリスクがある。つまり脆弱な経済なんじゃよ。

(ねこ)

ふにゃ、グローバル経済って世界に広がってるから強力なのかと思ってたけど、本当は弱いのかにゃ。

(じいちゃん)

その通りじゃ。なぜ脆弱なのかと言えば、それぞれの国の経済が「依存体質」になっておるからじゃ。自国だけでは経済が成り立たない。それはグローバル経済が「国際分業」から成り立っておることに根本的な原因がある。分業しておるということは、自国だけで国民の生活に必要な商品の生産ができない、不完全な状態にあるのじゃ。それぞれの国が生活必需品を互いに市場で交換することで(貿易を通じて)まかなっておる。互いに依存しておるため、ある国で発生した問題がグローバルネットワークを通じて全世界へ波及するのじゃ。

(ねこ)

ふ~ん、どういうことにゃ。

(じいちゃん)

卑近な例で言えば、アメリカのリーマンショックじゃな。金融のグローバリズムによって国家間でおカネが自由に移動できるようになった。そのためアメリカで住宅バブルが発生した時、世界中のおカネがアメリカに集まり、バブルがどんどん膨らんだのじゃ。もし金融のグローバリズムがなかったら、あれほど巨大なバブルにはならなかったじゃろう。バブルは銀行の信用創造を通じて通貨膨張を引き起こすので、世の中のおカネが増えるんじゃ。増えたおカネは、やはりグローバル化のおかげでヨーロッパへ流れ込み、そこでもバブルを引き起こした。そしてアメリカのバブルが崩壊した。

世界中からアメリカにおカネが集まっておるから、アメリカのバブル崩壊はアメリカ国内の問題では済まなくなった。それがヨーロッパへも連鎖することになり、ヨーロッパのバブルも連鎖崩壊した。日本は1990年のバブルに懲りていたから、アメリカのバブルにあまり関わらなかった。とはいえ、日本経済はアメリカやヨーロッパへの製品輸出に依存しておるから、欧米の景気後退によって日本の経済も連鎖的に悪化してしまったんじゃ。こうしてグローバリズムネットワークを通じて、経済危機が世界中へ連鎖してしまう。

(ねこ)

そういえば、途上国も最近は厳しい状況にあるらしいにゃ。原油安で中東の国々は財政的にかなり厳しいというし、ベネズエラみたいに国民生活がボロボロになっている国もあるにゃ。

(じいちゃん)

それもグローバリズムと関係があるんじゃ。グローバリズムによって途上国への投資が自由に行われるようになると、途上国の地下資源の開発が活発化したんじゃ。途上国はこの地下資源を先進国へ輸出することで外貨を手に入れ、その外貨で他の国から食料や生活用品を輸入することで国民生活を向上させてきた。自分達で生産するのではなく、輸入で豊かになった。これによって途上国の経済は資源輸出依存になってしまったんじゃ。そして最近の資源価格の低迷によって外貨収入が激減してしまい、国民生活を維持できなくなってしまった。確かにグローバル化で労せずして途上国は豊かになれた。じゃがそれは途上国がグローバル経済に組み込まれ、他国に依存しなければ経済が成り立たなくなることを意味する。

(ねこ)

でも、各国の経済はもともと互いに依存しなければ成り立たないんじゃないのかにゃ。

(じいちゃん)

そうとは言い切れないのじゃよ。確かに日本のように資源の乏しい国であれば、資源を輸入しなければ国民生活を維持することができんことは事実じゃ。その意味では他国に依存せざるをえないと言える。しかし良く考えてみるのじゃ。日本が本当に必要としているのは日本国内で調達が難しい資源や生産物じゃ。石油や鉄鉱石、あるいはコーヒーや香辛料のようなものじゃ。じゃから、日本国内で生産可能な財を輸入する必要は必ずしもない。たとえば衣類や食料品などは日本でも作ることができる。

(ねこ)

じゃあ、なぜ日本で生産できるものを輸入するのかにゃ。

(じいちゃん)

それは、世界全体の生産量を増やすためじゃ。それぞれの国で最も効率的に生産できる製品を生産して互いに交換したほうが、世界全体の生産量を大きくすることができる。たとえ自国で生産可能な商品であっても、互いに分業したほうが効率的なんじゃ。じゃが、その結果としてグローバリズム化が進むと、それぞれの国は特定の商品の生産に特化してしまうから、他国に依存しなければ、自国の経済を維持することができない体質になってしまうのじゃ。

それでも世界の生産力が低いうちは生産量を増やす意味はあった。しかし近年、テクノロジーの進歩により生産技術が向上し、世界の生産は過剰であるといわれるほどじゃ。つまりグローバル化によって効率化を優先する意味はなくなりつつあるんじゃ。

(ねこ)

じゃあ、これからは経済の効率性より安定性を求める流れになってもおかしくないにゃ。

(じいちゃん)

わしもそう思う。経済の効率化は確かに大切じゃが、テクノロジーの進歩によってその必要性は薄れつつある。それより、リーマンショックのようなことがしばしば発生するほうが大問題じゃ。2007年に発生したリーマンショックの負の影響は、10年を経た今でも世界経済に深刻な影響を及ぼし続けておる。グローバリズムにおける効率化の恩恵など、経済危機の連鎖による経済崩壊によって吹っ飛んでしまう。恩恵を十分に受けられるのは富裕層などごく一部の人々だけじゃ。そんなグローバリズムなら、やらないほうがマシじゃろう。

そして安定した経済とは、依存体質の経済ではなく自立性の高い経済じゃ。完全に自国内で経済を完結させることは難しいが、なるべくそこへ近づける必要がある。できる限り国内生産を優先し、輸入は国内で調達できない資源や商品に抑えたい。古い時代にこうした考えを実行するのは難しかったが、テクノロジーの進化により、自立性の高い経済を実現できる可能性が徐々に高まってきておる。

たとえば自然エネルギー(太陽・風力・地熱)等を用いることでエネルギー供給を自国内で行うことができるようになり、リサイクル技術の開発により、輸入した資源を何年も使いまわしたり、あるいは資源の代替技術の開発により、金属や石油などの資源の代わりに、身近にある森林資源、セラミック、炭素などを利用できるようになれば、資源を輸入する必要性も減る。テクノロジーの応用よって、各国がなるべく自己完結型で自立性の高い経済を確立できれば、ある国で生じた問題が他の国に連鎖して、危機が世界中に広がるリスクも小さくなる。

(ねこ)

それはいいにゃ。日本もすぐに鎖国するのにゃ。

(じいちゃん)

これこれ、すぐそういう極論に走る者が居るから話がややこしくなるんじゃ。もうすでにグローバリズムが推進され始めてから50年以上にもなるじゃろ。その間に長い時間をかけて、すでに世界中が依存国家だらけになってしまったのじゃ。そんな状態なのに、いきなり貿易を制限してしまったら、世界経済が麻痺してしまう。だから、依存経済から自立性の高い経済に移行する場合も、かなり長い年月を必要とするんじゃ。まず内需をしっかりと活性化して、外需依存の経済から脱却することがまず先決じゃ。その上で、先ほど述べたように、自立性を高めるためのテクノロジー研究も欠かせない。

現在もなお世界経済を苦しめている「グローバリズムの連鎖崩壊」を二度と繰り返してはならない。そのために、世界中の国々はグローバリズムという依存体質から脱却し、経済的自立性を追及すべきじゃ。しかし、こうした社会変革は極めて大きな変革じゃから、計画的に時間をかけて行わなければならないと思うのじゃ。

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