通貨発行による財政運営で借金ゼロに

2016.12.25

(ねこ)

来年(2017年)の一般会計予算案が発表されたのにゃ。また例によって新聞マスコミが「国の借金の積み増しガー」と騒いでいるにゃ。それによると、新規国債発行(新たな借金)が34兆3698億円、国債費(借金の返済)が23兆5285億円だから、その差10兆円の借金が増えているというにゃ。それが(図1)にゃ。

(じいちゃん)

ほっほっ、相変わらず飽きない連中じゃのう。まあ国債発行によって国家財政をやりくりしようとすれば、そういう騒ぎになるじゃろう。国債を発行する、つまり借金をすれば、それは返済しなければならん。じゃから財政運営が厳しいものになるのは当然じゃ。しかし国債の発行ではなく、政府通貨の発行によって国家財政をやりくりする方法を採用すると、話がまったく違ってくるのじゃよ。

(ねこ)

ふにゃ、そんなことできるのかにゃ。

(じいちゃん)

できると思う。ところで、国債を発行して歳入をまかなうと世の中のおカネが増える。政府がおカネを使えば、そのぶんだけ世の中におカネが出てゆくからおカネが増える(マネーストックの増加という)。一方、政府通貨を発行して歳入をまかなっても、やっぱり同じように世の中のおカネが増える。だとしたら、何も国債を発行せずに政府通貨を発行しても同じじゃ。政府通貨と言っても、それは日銀に発行させるから実際には現金と同じじゃ。さて問題は通貨を発行して歳入を増やした場合、それだけだと、世の中のおかねがどんどん増え続けてしまう。世の中のおカネを増やしすぎると、必要以上のインフレを引き起こす原因になるから、あまり増やし過ぎるのも考えものじゃ。

(ねこ)

でも、国債を発行してそのおカネを歳入にした場合でも、世の中のおカネ(マネーストック)は増えるんだよね。だったらやっぱり国債を発行しても、世の中のおカネが増えすぎるんじゃないのかにゃ?

(じいちゃん)

そこが重要じゃな。国債は返済しなければならん決まりじゃ。国債を返済するためには世の中からおカネを税金として回収する必要がある。おカネが税として回収されるから、世の中のおカネは減るわけじゃよ。じゃから国債によって世の中のおカネが増えすぎる事はない。つまり政府の借金の返済とは「世の中のおカネを減らすこと」なんじゃ(マネーストックの減少という)。ということは、通貨を発行して世の中のおカネを増やした場合でも、税金によって世の中のおカネを回収して減らせば、国債の場合と同じように世の中のおカネが増えすぎる心配はないんじゃ。そしてその場合は、税として集めたおカネを発行とは反対に消却(消してしまう)すればよいのじゃ。

(ねこ)

にゃんだ、国債で歳入をまかなうのも、通貨発行で歳入をまかなうのも、すごく似ているにゃ。考えようによっては、どっちでもかまわないと思うにゃ。

(じいちゃん)

その通りじゃ。そこで、通貨発行で財政を運営したと想定し、政府通貨の発行を歳入に組み込んで来年度2017年の予算案を考えてみると、こうなる(図2)。

(ねこ)

にゃんだ、借金で財政運営するのと、ほとんど変わらないにゃ。

(じいちゃん)

左様、ほとんど変わらん。変わるのは新規国債発行が「新規通貨発行」になり、国債費が「通貨消却」になるだけじゃ。おカネを発行しつつ、増えすぎないようにおカネを消去する。この場合、新規通貨発行額と通貨消却額には10兆円の差がある。つまり、世の中のおカネが10兆円増えてしまったことになるんじゃ。

(ねこ)

ふ~ん、ちっとも大変に思えないにゃ。10兆円くらいおカネが増えてもぜんぜん困らないにゃ。

(じいちゃん)

ほっほっ、そうなんじゃよ。10兆円借金が増えると大騒ぎになるじゃろうが、10兆円おカネが増えても大騒ぎにはならん。もっとも、デフレ不況の時代にも関わらず「ハイパーインフレ・ガー」と365日叫んでいるヤツもおるから、10兆円のおカネが増えると発狂するかも知れんな。もちろんおカネは増やしすぎない方が良いが、経済が成長するなら、ある程度は増やす必要がある。10兆円は今の日本のGDPである500兆円の2%程度に過ぎん。仮にインフレになるといっても知れておるのじゃよ。そして景気が悪くて世の中のカネ回りが悪いなら、世の中に出てゆくおカネが10兆円ではなく、20兆や30兆であっても良いじゃろうし、逆に景気がよくなれば、これを限りなく小さく、あるいはマイナスにすることもあって良いと思うのじゃよ。

実際、これは世の中のおカネの量をコントロールすること(金融政策)じゃから、これまでの常識では、もっぱら日銀のような中央銀行だけが独占的に行うべきとされてきた。しかし現在のデフレ経済状況を見ると、もはやそういう古い時代のシステムでは通用せんようになってきておると激しく感じておるんじゃ。じゃから日銀(金融政策)と政府(政府支出)の両面からおカネのマクロ環境をしっかり整える必要があると思うんじゃ。その意味からも政府通貨によって国家財政を運営する意味があるじゃろう。

(ねこ)

すごいにゃ、それがいいにゃ。借金で国家財政を運営して「借金ガー」「ワニの口ガー」と365日マスコミに煽られて大騒ぎするより、政府通貨の発行で国家財政を運営して「おカネ増やしすぎちゃったテヘ」と言ってる方が精神衛生的にもいいにゃ。健康にゃ。

(じいちゃん)

そのとおり、健康第一じゃ。はて、何の話だったかのう。おおそうじゃ、ちなみに通貨発行で財政運営したほうが予算規模が小さくてムダもないんじゃ。たとえば、国債(借金)で財政運営した場合は「新たな借金」と「借金の返済」の両方が予算として必要じゃ(図2)。じゃから34兆円を借金しつつ23兆円を返済する。これは意味不明じゃし、借金の支払利息が取られてしまうからムダじゃ。

一方、通貨発行で財政運営すると、「通貨発行」または「通貨消却」のどちらかだけでよい。来年度予算の例で言えば、国債であれば34兆円発行する必要があるが、通貨発行なら10兆円を発行すれば済むんじゃ(図3)。すると予算規模はおよそ98兆円から74兆円に縮小、おまけに借金の支払利息なんてものは発生しないから、ムダなカネを使わずにすむ(=税金が安くなる)。借金で財政を運営するのと、通貨発行で運営するのと、国民にとってどっちが良いかは考えるまでもないじゃろ。もしインフレが激しくなった場合は、通貨発行を中止し、代わりに歳出に「通貨消却」を計上して、増税により通貨を減らすわけじゃ。その場合は消費税の増税もありえる。

なんとも狐に摘まれたような話かも知れんが、通貨をマクロ的な視点から考えるとそんなに不思議な話ではないんじゃ。現在の通貨制度は「借金によっておカネが生まれる」仕組みだからじゃ。マクロやおカネの仕組みを知らねば、経済のことは何もわからないに等しいと考えたほうが良いじゃろう。

まさに時代は激動期にある。頭が硬いと為政者に利用されるだけじゃ。いまこそ頭を柔らかくし、ゼロベースで常識に囚われずに考える必要があると思うのじゃ。

(※なお、民間銀行による信用膨張の影響を避けるため、100%マネー制度の併用をお勧めします。)