ベーシックインカムは不可避です

2016.12.18

(じいちゃん)

将来においてベーシックインカムは必ず導入される。ベーシックインカムについては、賛否両論があるようじゃが、いずれは導入せざるを得なくなる。いつ、どんな形で導入するか、という点が問題なだけじゃ。

(ねこ)

ふにゃ、ベーシックインカムは必ず導入されるのかにゃ、なんでかにゃ。

(じいちゃん)

技術的失業問題があるからじゃ。技術的失業とは何か?今日、テクノロジーは急速に進化を続けておる。将来的に高度なテクノロジーによって生産性が向上し続けると、やがて人間が労働しなくとも機械(人工知能や生産ロボット)によって殆んどの財(商品やサービス)が生産されるようになる。すると、企業では人手が不要となるから、やがてほとんどの従業員が解雇されてしまうようになるじゃろう。すると、世の中のほとんどの人々は失業してしまう。これが「技術的失業」と呼ばれておる。

失業してしまうと、人々はどこからも所得を得ることができない。おカネがなければ人は財(商品やサービス)を購入することはできなくなる。一方で、企業では自動生産工場などから自動的に大量の商品が生産されてくるが、ほとんどの人は失業しているためそれらを買うことができない。生産された商品の大部分が売れ残る。そうなると、企業がすばらしい商品を大量に生産している一方で、ほとんどの人がそれを買うことができずに貧困にあえぐことになる。と同時に、商品が売れないためほとんどの企業は倒産する。つまり経済が破綻してしまうのじゃ。

(ねこ)

バカみたいな話なのにゃ。

(じいちゃん)

まったく馬鹿げておる。しかし現在の市場経済の仕組みのまま何も手を打たなければ、やがて必ず経済が破綻することは明白じゃ。もちろんすぐにそうなるわけではない。それが何年後になるかは明確ではないが、科学技術が進歩して、生産性がどんどん向上すれば、いずれは必ずそうなると断言できる。

このような経済の破綻を防ぐにはどうするか。それは、企業に勤めている、いないに関わらず、何らかの形で人々におカネを供給(給付)しなければならない。人々におカネを渡せば企業の生産した商品は売れるから、企業は倒産することもないし、人々が飢えることもない。また企業が生産した商品やサービスが売れ残ることもなくなり、企業の利益も確保できる。そうすると市場経済は今までどおり機能できる。このおカネを政府から人々に支給すれば、それがベーシックインカム(あるいは国民配当)と呼ばれる。じゃから、ベーシックインカムは必ず導入されなければならない、というわけなんじゃよ。

(ねこ)

ん~、でも、人工知能やロボットが進化しても、それに応じて新しい仕事が生まれてくるから心配ないと主張する人も居るのにゃ。

(じいちゃん)

確かに新しい仕事は今後も生まれてくるじゃろう。しかし生まれる仕事の数が問題なんじゃ。技術的失業の研究者であるオックスフォード大学の先生と野村総研の共同研究によると、今後20年間で、日本人の行っている仕事のおよそ50%が機械によって代替可能であるというのじゃ。もちろん技術的に可能という話であって、必ずしも日本の労働者の半分が失業するとは限らない。しかし、企業が本気になって人工知能やロボットの導入を進めるなら、最大で50%の労働者が職を失う可能性があるということじゃ。

日本の就労人口はおよそ6500万人じゃ。じゃから3000万人以上もの人が仕事を失うかもしれない。3000万人を20年で単純に割ると年間150万人じゃ。さて、今後20年間に渡って毎年150万人分の新しい仕事を作れるのか?普通に考えると不可能だとわかるはずじゃ。

しかも、仮に年間150万人分の仕事が生まれたとしても、その仕事は従来に比べてはるかに難易度の高いスキルや資格が必要となる可能性もある。なぜなら、普通の人ができるような仕事は機械がやってしまうからじゃ。そのため、機械ができない仕事といえば、難しい仕事ばかり残る可能性がある。こうした仕事に就くためには、高度で長期間の教育訓練を必要とするようになり、かなりの教育費が必要となるかも知れん。つまり、より高額な教育費を払うことができる富裕層の子供ほど就職が有利になり、逆に教育費に十分なおカネをかけることのできない貧困層の子供は就職が難しくなったり、あるいは低賃金の仕事に就かざるを得ない状況が生まれるかもしれん。現在でもこうした「教育の格差」を通じて、貧困が子供へ連鎖する問題が指摘され、給付型奨学金が検討されておるが、こうした問題はますます厳しさを増すことになるじゃろう。

そして、機械の能力が高まれば高まるほど、ますます人々に求められる能力や資格要件は高くなるはずじゃ。すると、やがて普通の人が普通の能力では就職できない世界になるかも知れん。それこそ、能力万能で何時間働いても報酬は成果主義でよいという「スーパー労働者」だけが就職できる世界になるかも知れんぞ。

(ねこ)

ふにゃー、スーパー労働者だけが生き残る世界になるのかにゃ。

(じいちゃん)

そうじゃ、ねこも歌って踊って、さらにねずみが獲れるくらいじゃないと捨てられるかも知れんぞ。

(ねこ)

たいへんだにゃ。そんな能力はないのにゃ。普通のねこじゃ生きていけないにゃ~~。

(じいちゃん)

じゃから、ベーシックインカムがあるのじゃよ。ベーシックインカムがあれば、どんなに科学技術が進んで、仕事にスーパー超高度な能力が必要な時代になっても、普通の人が豊かに暮らすことができるんじゃ。

(ねこ)

でも、働いても、働かなくてもおカネを支給したら、世の中の人はみんな働かなくなるんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)

もちろん、まったく働かなくとも生活できるほどのベーシックインカムを今すぐに始めると、みんなとは言わないまでも、多くの人が働かなくなる恐れがないとは言い切れん。それは社会に大きな影響を与えてしまうかもしれない。しかし、最初から毎月10万円、15万円のおカネを支給する必要はないと思うのじゃ。機械が人間に代わって労働するといっても、すべての仕事を機械が代替するようになるにはまだ期間が必要じゃろう。じゃから、ワシはまず毎月1万円の支給から始めるべきじゃと考えておる。

子供まで含めたすべての国民に毎月1万円の支給に必要なおカネは、毎月およそ1.2兆円じゃ。一年間だとおよそ15兆円じゃ。金融緩和政策として、いま日銀が発行している現金は年間80兆円のペースじゃ。じゃから、80兆円のうち、15兆円をベーシックインカム、あるいは国民配当という名目で国民に給付すればよいのじゃ。こうして政府中央銀行が現金を発行し、それを財源として人々に給付することは「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」と呼ばれる。最近も新聞マスコミにおいて、ヘリマネを実施すべき、すべきでない、といった議論があったが、実施には至っておらん。しかし、すでにこうした議論が起きておる段階じゃ。始めるなら、まず、小額のヘリコプターマネーとして始めるのは現実的なんじゃよ。

もちろん、小額のヘリマネからスタートするんじゃなくて、今すぐに最低生活を保障するのに十分なおカネを支給すべきだ、と考える人もおる。それは導入方法じゃから、多様な意見があって良いと思う。

(ねこ)

でも、いまから始める必要はあるのかにゃ。早過ぎるんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)

そう思う人も多いじゃろう。人間はどうしても尻に火が付くまで本気にならないものじゃ。じゃが先ほどの研究にあったように、20年後に最大でおよそ3000万人、年間150万人の失業が発生する可能性もある。問題が深刻化してから騒いでも遅いかもしれないと考えるべきじゃ。備えあれば憂いなし。

しかも、こうした技術的失業問題はすでに始まっていると考えるのが賢明じゃ。何も人工知能やロボットだけが問題なのではない。どのような原因であろうと、生産性が向上すれば生産過剰になり、失業が増え、格差が拡大する傾向にある。そして今日の世界では生産過剰、失業増加、格差拡大が生じている。これが技術的失業とまったく無関係と思うのは不自然じゃ。

世界デフレ不況の原因として技術的な失業問題も関係しておるはず。じゃから、まずはヘリマネのような給付金で人々の所得を増やし、消費を引き上げることに意味がある。そして、それがシームレスに将来におけるベーシックインカム・国民配当の仕組みにつながるのが、理想的だとワシは思うのじゃ。もちろんおカネを配れば循環通貨不足も解消される。

(ねこ)

そうなのにゃ、毎月1万円のヘリコプターマネーなら可能だにゃ。すぐできるなら、すぐ始めるべきだにゃ。日銀の金融緩和80兆円のうち、15兆円で給付金を始めよう!なのにゃ。

内容紹介ページへのリンクはこちら