なぜ介護職員の給与が増えないのか

2015.8.8

(ねこ)

高齢者の増加で介護サービスのニーズは増える一方だにゃ。でも介護職員の皆さんの給料は決して高くないのにゃ。その割に介護の仕事はきついというにゃ。仕事がきつくて給料が安いなら介護職員になる人は増えるはずがないにゃ。これじゃ日本の介護は成り立たない。なぜ介護職員の給料が増えないのかにゃあ。

(じいちゃん)

それは簡単じゃ。介護を必要とする高齢者に支給される年金や保険金が少ないからじゃ。介護サービスの利用者である高齢者がおカネを持っていないのじゃから、支払えるおカネも限られる。じゃから介護サービスの単価は低くならざるを得ず、介護サービスを提供している事業者の売上も増えないのじゃ。これでは介護職員に高い給料を払うことはできない。

(ねこ)

それもそうだにゃ。でも財務省主導の緊縮財政によって、1人当たりに支給される年金は減る一方だし、介護保険金の支給金額も渋くなる一方だにゃ。このままだと介護職員の給与も増えず、介護サービスに就職する人も増えず、日本の介護が危機的状況になるにゃ。

(じいちゃん)

それだけではないぞ。日本の景気が良くなるほど、ますます介護サービスが成り立たなくなる可能性もあるのじゃ。まず一般的な企業の場合を考えてみよう。たとえば景気が良くなると人手不足になる。すると労働市場では労働者が不足するために賃金が上昇するのじゃ。賃金が上昇すると企業にとってはコストアップになるので困る。じゃが一方で、労働者の賃金が上昇することで消費者の購買力が増加するから、消費者一人あたりの売上が増加し、企業の売り上げも増加するのじゃ。つまり景気が拡大した場合、一般的な企業にとっては賃金コストの上昇と売り上げの拡大が同時に起きるから大きな問題は無い。

ところが、介護サービスの売り上げについて言えば、介護サービスを受ける人の一人あたりの売上は景気が良くなってもあまり変わらん。景気が良くなっても、それで高齢者の購買力が増えるわけではないからじゃ。それどころか年金が減り続るから、1人当たりの高齢者が支払うことができる料金はますます減るのじゃ。すると、介護を必要とする人が大きく増加する一方で、売り上げの伸びはそれほどでもない。そうなると仕事ばかりが増えて、介護職員の給与を引き上げることができない。介護職員は、より高い賃金を求めて介護サービス産業から労働者が別の産業へ逃げてしまう。そのため介護サービスを行う業者の経営は厳しくなり、介護サービスのコストが上昇し、一部の豊かな高齢者だけしか介護サービスを受けられない状況になるかも知れん。

(ねこ)

う~ん、最悪だにゃ。やっぱり賃金の安い外国人労働者を採用するという話になるのかにゃあ。

(じいちゃん)

そんなことはないぞ。外国人労働者を受け入れなくても、介護サービスの生産性を向上すれば良いのじゃ。つまり一人の介護職員が介護できる高齢者の人数を増やす。もともと介護は人手による作業が中心じゃから生産性を向上することは難しい。そこで介護補助ロボットや介護用機械が登場する。より高度な作業ができるこれらの機材を導入することで、介護職員一人が対応できる高齢者の人数を増やすのじゃ。

このような投資には高額な費用が必要じゃから公的な支援が必要となる。しかし公共工事で自動車の通らない橋を造る予算があれば、それくらいの費用は出せるじゃろう。と言っても機械の導入費を全額支援する必要はない。介護設備投資によって生産性が向上すれば自力で投資を回収できるから、事業者に助成金などを支給して投資のハードルを下げてやれば良い。

(ねこ)

なるほど介護補助ロボットか、それはいいにゃ。わけのわからないインフォメーションロボットより、そっちの方が役に立つのにゃ。

(じいちゃん)

そういうわけじゃから、高齢化が急速に進む日本において介護補助ロボットや介護用機械の開発が急務なのじゃ。政府はもっと大規模な予算を投じてこの分野の研究開発を後押しすべきじゃ。そして大規模な開発によって介護の生産性が向上すれば、介護サービスの費用単価が低減されるから介護費用も軽減される。つまり社会保障費の抑制にも役立つんじゃ。そして介護事業者の数が増えなくても、個々の事業者の生産性が高まれば介護受入れ可能な人数も増加する。そうすれば介護サービスの供給不足の問題を解決できる。しかも事業者あたりの介護人数が増えれば売り上げも増加するから、介護職員の賃金の上昇につなげることが可能なのじゃ。

(ねこ)

高性能で低価格の介護ロボットを開発すれば、介護職員の給与が増えるし肉体的な負担も軽減できる、介護の受け入れ人数も増える、介護産業の利益率も向上する、おまけに社会保障の費用も節約できるにゃ。政府はもっと大規模に介護ロボットの開発に投資して欲しいにゃ。