ロボットと人口知能で失業が増える?

2015.10.16

(ねこ)

ロボットと人工知能がすごい勢いで進化してるにゃ。人間の代わりにインフォメーションするロボットが発売されたり、生産ラインに誰も作業員が居ない無人工場も実現しているらしいにゃ。このままロボットや人工知能が進化すると、人間の仕事がすべて機械に奪われて貧困化してしまうんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)

確かにそんな不安を覚えるのう。しかしそもそもロボットや人工知能が人間の代わりに労働してくれれば、人間の労働負担が軽減されて人々は幸福になるはずなのじゃが、逆に職を奪われて不幸になるというおかしな現象が生じる。こうした問題をマスコミなどが正面から取り上げないのは実に不思議じゃな。

(ねこ)

マスコミなどの識者によれば、人間は機械のできない仕事を探してそれを行うから失業しないというにゃ。でも、ロボットも人工知能もすごい勢いで進化しているから、いくら人間にしかできない仕事を探しても、やがて仕事はなくなるにゃ。だから今はなんとか誤魔化せたとしても、将来的には失業者が溢れて大問題になるにゃ。

(じいちゃん)

そうじゃな、このまま放置しておればいずれそうなるじゃろ。ところで昔から機械が進化して生産性が高まると失業が増えるという問題はあった。それを解決する唯一の方法は「新しい産業の創出」だったのじゃ。たとえば、ある産業で機械化が進んで生産性が高まると、その産業では人手が余るために社員を解雇する。すると失業者が増えるわけじゃ。しかしそれとは別の新たな産業が生まれて、その産業が生産活動を行えば人手が必要とされる。すると失業者が吸収されて丸く収まるという寸法じゃ。

(ねこ)

そうすれば失業問題は発生しないにゃ。だから政府は産業の育成を推進しようとするのにゃ。でも機械が進化して生産性が高まるのに合わせて、ますます多くの産業を創出しないといけないのにゃ。そんなこといつまで続けられるかにゃ。

(じいちゃん)

いずれ行き詰るじゃろうと思う。新しい産業をどんどん増やし続けるとすれば、世の中の商品の種類をどんどん増やし続けなけばならない。そのためには人々の欲望を無限に拡大する必要がある。しかもそれは「大量生産・大量消費」をますます拡大することじゃから、地球の資源が枯渇してしまう危険性もある。じゃから、ある時点で「新しい産業の創出で失業者を吸収する」という手法は破綻することになる。また同時におかしな現象が発生する。

たとえば、ロボットや人工知能がこのまま進化し続ければ生産はどんどん自動化されるようになるじゃろう。すると人手がどんどん不要になるので企業は社員を解雇するから、どんどん失業者がふえる。すると究極的には「完全自動生産工場」と「大量の失業者」が誕生することになる。このとき、完全自動生産工場は自動で次々に商品を作り出すのじゃが、一方で大部分の人々は失業しておるからおカネがない。おカネがないから商品は売れない。つまり、完全自動生産工場で多くの消費財や耐久財が生産されるが売れずに在庫の山となり、一方で財が山のように余っていても、それを利用することのできない貧困な失業者が溢れる社会となる。経済は完全にマヒする。

(ねこ)

ほとんど笑い話だにゃ。でもそれは遠い未来の話で、今は関係ないにゃ。

(じいちゃん)

それは間違いじゃ。もし未来の社会においてそうなるのであれば、現時点においてもその方向に向かって変化が生じていると考えるのが当然じゃ。つまり現代の社会に起きている様々な矛盾も、そうした変化が歪みとなって現れておると考えることもできる。現代の先進国は生産過剰と高い失業率という問題を同時に抱えておる。こうした問題の根底に、現代の経済システムが抱える根本的な矛盾が関係していないと言い切れるじゃろうか。

(ねこ)

ふにゃ~、なんでこんな事になるのかにゃ。

(じいちゃん)

それは現代の経済が「おカネの循環」で成り立つ市場経済の仕組みからできておるからじゃ。もし市場経済でなければこのような問題は発生しない。もしおカネが関係しなかったとしたら、ロボットと人工知能が進化して人間の労働がまったく不要になったとしても、何の問題もない。完全自動生産工場で生産された財を人々に分配すれば良いだけだからじゃ。誰も困らんし、人々はますます豊かになる。

(ねこ)

うにゃ、ここでも「おカネ」が絡むと問題が複雑になるにゃ。

(じいちゃん)

市場経済は唯一絶対の優れた経済システムとは言い切れん。多くの問題を抱えておるのじゃ。そうした現代の市場経済の欠陥を検討し、適切に対策を打ってゆかなければ、やがて経済システムは破綻するかもしれん。