バランスシートの基本的なしくみ

2016.6.18

(じいちゃん)

新しいシリーズでは、量的緩和など金融政策やヘリマネ、国債、信用創造といったことを、バランスシートを利用してやさしく検討することが目的じゃ。といっても、ほとんどの人はバランスシートなど知識がない。しかし、実際のところバランスシートを使わなければ、金融政策のことは何も理解できないと断言できる。それほどにバランスシートと金融は密接な関係にあるんじゃ。

バランスシートとは何なのか?実際に使って考えてみるのが、理解するのに一番の近道じゃと思う。と言っても簿記の正式な使用方法ではなく、あくまでもバランスシートの性質を説明したいと思う。正式なルールはワシも熟知しておるわけではない。最初にバランスシートという帳簿の構造をみて欲しいのじゃ。

(図A-1)バランスシートは大きく右と左にわかれており、さらに右は上下に二つに分かれておる。左は資産、右は負債と純資産から成るんじゃ。たとえば実際の帳簿では資産の部に資産の項目名と金額が記載され、負債の部には負債の項目名と金額が記載される。そして、右、左、それぞれに上から順にすべての項目を合計した値は、右と左で同じになるんじゃ。

まあ、それくらいにして、実際につかってみよう。ある人が事業を始めようと思う。今回は単純化するため資本金や固定資産などを考えずにスタートしよう。ということは、何も持っていない。何も持っていないので、この会社の帳簿には何も記載されておらん(図A-2)。

何もないと何もできない。そこで銀行から事業資金を借り入れたのじゃ(図A-3)。銀行からおカネを借りて預金通帳に振り込まれた。預金は資産じゃから資産の部に「預金100万円」を計上する。同時に、100万円を借りたわけじゃから、これは負債じゃ。よって負債の部に「借入金100万円」を計上する。なお、純資産は儲けにあたるので、まだゼロじゃ。よって純資産はまだない。

預金を借りただけでは商売ができないので、預金100万円のうち80万円をお札で引き出した(図A-4)。すると資産のうち預金は引き出されて残高が20万円になり、かわりに現金80万円が計上された。預金と現金の合計は変わらず100万円じゃ。こうして帳簿を見ると、預金を引き出すというのは、預金を日銀券(紙幣)を交換(入れ替え)しているように見える。

引き出した現金80万円のうち、50万円を使って商品を仕入れたのじゃ(図A-5)。現金50万円を使ったので現金が50万円減り、代わりに商品50万円が計上された。やはり現金50万円が商品50万円に置き換わったように見える。

さて、商品を売ったところ、50万円で仕入れた商品が100万円で売れた(図A-6)。すると50万円の商品が100万円の現金に化けるw。その結果、資産の合計は150万円になるのじゃ。そうすると、左の合計が150万円で右の合計が100万円となり、バランスが壊れてしまう。

そこで、純資産として50万円を計上するんじゃ(A-7)。50万円で仕入れて100万円で売ったわけじゃから、50万円の儲けが得られた。こうした儲けの部分が純資産に計上されるんじゃ。もちろん、普通は商売するための様々な経費が引かれるので、こんな単純ではないが。

さて、一商売が完了したところで事業を終了しようと思った。まず、手元の現金をすべて銀行に預金した(図A-8)。現金を預金したので、資産はすべて預金になった。

銀行から借りたおカネを返済する(図A-9)。今回は単純化のために支払利息は考えない。100万円借りて100万円を返済する。この時、帳簿では、資産である預金100万円と同時に、借入金100万円が帳簿から消す。この「資産と負債が同時に計上されたり、消されたりする」という性質がバランスシートの極めて重要な点じゃ。つまり、金融取引は多くの場合「資産と負債を対で考える必要がある」のじゃ。これは、単におカネの流れを見ていただけでは理解できない。バランスシートを頭に描かなければ金融の仕組みは絶対に理解不能なのじゃ。今後の話は、ほとんどこれがポイントになる。

さて、銀行へ借入金を返済したので、手元には儲けの50万円が預金として残った(図A-10)。以上、バランスシートの使い方をものすごく簡単に説明した。なんとなくわかっていただけたじゃろうか。

資産と負債は対で考える。資産と負債は表裏一体。これがポイントじゃ。

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