財政再建は必要なし:第1話ナレーション

「世の中のおカネはすべて借金」

はっはっはー、私は、ばらまきマンだ。今回は新しい番組として「財政再建とおカネのしくみ」をスタートしようと思う。新聞やテレビで財政再建や消費税の増税を巡って、様々な意見が交わされているからね。

ところで、財政再建には「おかねのしくみ」が非常に深く関わっている。しかしマスコミの多くは、そのことに触れないため、大多数の国民は気付いていないんだ。これじゃあ、財政再建を正しく考えることはできない。だから、この番組ではマスコミが伝えない「財政再建とおカネのしくみ」の関係について考えてみたいと思う。

「世の中のおカネはすべて借金から出来ている」

今回は「世の中のおカネはすべて借金から出来ている」ということを考えてみたい。それは一見すると、財政再建とは関係なさそうに見える。しかし財政再建は借金の問題だから、実は深い関係があるんだ。

ところで「世の中のおカネがすべて借金からできている」と聞いても、にわかに信じがたいはずだ。そんなはずはない、と思うだろう。じゃあ、借金で無いとすると、あなたのおカネは一体どこから来たのだろうか。おカネは日本銀行が発行していることは、誰でも知っているよね。では、ここで質問だ。

質問①:おカネは日本銀行が発行しているという。では、日銀が発行したおカネがどんなルートで世の中に出回り、私たちの手元に流れてくるのか?

日銀が発行したおカネがどんなルートで世の中に出回り、私たちの手元に流れてくるのか?ほとんどの人は、それを考えたことすらないはずだ。だから、それを理解している人は、国民の100人に1人もいないかも知れない。それでも、一般の人は漠然と次のように考えていると思う。

まず日本銀行がおカネを発行する。それが一般の銀行に渡る。そのおカネが企業に渡って、それが給料として私たちの手元に来る。確かにそれは間違いじゃない。しかし重大なことに気付いていないんだ。それは「渡る」とはどういうことか。では、ここでさらに質問だ。

質問②:日銀が発行したおカネは、どうやって一般の銀行に「渡る」のか。日銀が銀行にタダでおカネを渡しているのか?

日銀が発行したおカネを、タダで銀行に渡したら、銀行が丸儲けになってしまう。銀行だけが得をする。そんなことはできないよね。だから、日銀は銀行にタダでおカネを渡すんじゃなくて、「貸し出し」として銀行に渡すことになる。つまり銀行が日銀から借金することで、おカネが銀行に渡る。さて、それじゃあ最後の質問だ。

質問③:銀行が日銀から借りたおカネは、どうやって一般の企業に「渡る」のか。

さすがに誰でもわかるよね。そう、さっきと同じように、今度は銀行が企業に「貸し出し」としておカネを渡すことになる。つまり企業が銀行から借金することで、おカネが企業に渡るわけだ。そして私達一般家計は、企業に勤めて働くことで、企業から賃金としておカネを受け取っている。

つまり、あなたや私の手元にあるすべてのおカネは、企業や個人が借金して手に入れたおカネが、めぐり巡ってきたものなんだ。すなわち、世の中のすべてのおカネは、誰かが銀行から借りた借金からできている。

このように聞くと、多くの人は怪訝な顔をするだろう。そんなはずはないと思うかもしれない。しかし現代の通貨制度である「準備預金制度」を詳しく調べてみると、基本的にそうした仕組みの上に成り立っていることがわかるはずだ。

すべてのおカネが借金からできていることは、日銀が行なっている金融政策でも説明できる。今日の金融政策の基本は「金利政策」だ。この金利は、おカネを貸し出す際の利率のことだ。金融政策では、この金利を上下することで世の中のおカネの量を調整する。

例えば、金利を下げることで貸し出しが増え、世の中の借金が増加する。すると世の中のおカネの量が増えて景気が刺激される。逆に金利を上げると貸し出しが減って、世の中の借金が減る。すると世の中のおカネの量が減って景気が抑制される。これが金利政策だ。

つまり、世の中のおカネが全て借金から出来ているからこそ、貸し出しの金利を調整することで、世の中のおカネの量を増やしたり減らしたりできるんだ。もし世の中のおカネが借金でできていないのであれば、金利政策なんかやっても意味がない。

というわけで、世の中のおカネはすべて銀行からの借金によってできている。日銀が発行したおカネを銀行が借金し、その銀行から企業や個人が借金することによって、おカネが世の中に供給される仕組みになっているんだ。

そして、世の中のおカネがすべて借金からできている、ということは、もし、借金をすべて銀行に返してしまったら、世の中からおカネがすべて消えてしまうことを意味する。おカネがなくなれば、経済は成り立たない。

だから、毎日毎日、銀行におカネを返済する一方で、また新たに銀行から借金する。こうして、常に誰かが借金を負うことで、世の中のおカネの量が保たれているんだ。

しかし、もし銀行からおカネを借りる人が減ってしまったらどうなるか。世の中のおカネが増えなくなる。そうなると経済が不況に陥ってしまう。その実例をみて見よう。これは日本におけるおカネの供給量と経済成長率の推移を並べてグラフ化したものだ。

バブル崩壊前はおカネの供給は毎年5%以上増えてきた。そのあいだは経済成長率も高く維持されてきた。しかし、バブル崩壊後は金融が引き締められて、おカネの供給が激減し、バブル崩壊前の半分以下に減少してしまった。それと同時に経済成長率もマイナスにまで落ち込んでいる。

それだけおカネは経済活動にとって重要だ。だから、世の中の借金をどんどん増やし続けなければならない。

現代社会は借金ナシでは成り立たない借金経済なんだ。政府の借金がどんどん増える原因も、現代の経済が借金経済であることに深く関係している。だから、おカネの仕組みを知ることが財政再建にとって非常に重要であることがわかるよね。

このように、財政再建は、新聞テレビが報じるような、消費税を増税すれば解決できるという、単純な話じゃないんだ。というわけで、次回は、おカネのしくみから、政府の借金について考えてみよう。今日はこれまで、ベーシック!

2018.3.8