年金財源Q&A

2016.4.30

Q.(ねこ)

年金財源のために消費税の増税が必要なのかにゃ?

A.(じいちゃん)

そんなことはない。それは固定観念に過ぎんのじゃ。まず年金財源が消費税である必然性はまったくない。年金財源が消費税などという非常識な国は世界中で日本しかない。税金には様々な種類があるが、その税収額は経済や社会の状況によって常に変化する。じゃから年金・社会保障のような重要な財源は、消費税のような単独の財源ではなく、複数の税収を元に万全の財源を準備を整えるのが賢い選択じゃ。

また、税率を引き上げなくとも名目GDPが増大すれば税収は増加する。なぜなら、所得税も法人税も消費税も、すべて名目GDPが増加すると増える仕組みになっておるからじゃ。名目GDPは日本国内の企業の総売上高が増えると増加する。じゃから景気が良くなって企業の売り上げが増えると税収も増加するが、インフレになっただけでも税収は増える。なぜなら、インフレになると商品の価格が上がるから、売れる量が同じでも売り上げは増えるんじゃ。じゃからインフレターゲット2%を達成するだけでも税収は勝手に増える。インフレと経済成長を合わせて3%くらいの名目GDP成長をすれば、当面は増税が必要というわけではない。

ただし、それでも税収が不足するようになれば増税もあり得るじゃろうが、それが消費税の増税である必然性はまったくない。国民に広く薄く負担する安定財源なら消費税以外にもあるからじゃ。

Q.(ねこ)

消費税に代わる安定財源は何があるの?

A.(じいちゃん)

金融資産課税じゃ。家計の金融資産は約1700兆円、企業の金融資産は約1000兆円あるという。この両方に1%広く薄く課税すれば、税収は単純に言えば27兆円となる。消費税1%が税収で約2兆円に相当するというから、それから逆算すると金融資産課税1%は消費税13%に匹敵する巨大な税収なのじゃ。つまり、金融資産に1%課税すれば、消費税をすべて廃止してもおつりがくるんじゃよ。実際には金融資産を完全に掌握して課税するのは無理じゃろうが、それでもかなりの税収が見込めるはずじゃ。

しかも、金融資産課税は景気による影響をほとんど受けないので、極めて安定した財源となるんじゃ。なぜなら、法人税や所得税や消費税は景気が悪くなるとGDPが減るから税収も減る傾向にあるが、金融資産課税が課税対象とする金融資産は景気が悪くても減らない。それどころか逆に景気が悪いのに金融資産だけはどんどん増加を続け、日本の資産格差は広がり続けておる。じゃから格差是正のためにも金融資産へ課税すべきなんじゃよ。

Q.(ねこ)

金融資産に課税し続けると、世の中の貯蓄が減って税収が減る心配は無いのかにゃ?

A.(じいちゃん)

心配無用じゃ。おカネというものは基本的に消えないんじゃ(信用収縮を除く)。ということは、もし政府が金融資産に課税してそれを財政支出した場合、そのおカネは別の誰かの金融資産となる。つまりおカネの保有者が変わるだけじゃ。だれがおカネの保有者に代わっても課税されるので、税収が減ることは無いんじゃ。しかも、もし税収が不足するなら、日銀がおカネを世の中に供給すれば、世の中のおカネの量が増えるので、それだけで税収は増える。つまり金融資産課税を創設し、所得税や法人税と組み合わせれば財源不足の問題は無くなると言ってよいじゃろう。

Q.(ねこ)

高齢者の人口比率が増えれば年金の支給額を減らす必要はあるのかにゃ?

A.(じいちゃん)

これはケースバイケースじゃ。年金の財源については金融資産に課税する税制を採用すればまったく心配は無い。しかし、日本の生産能力が低下してしまえば、年金制度は根本から成り立たん。なぜじゃろうか。経済においては、日本全体で生産した財(物やサービス)を日本国民全員で分配しあっておるのじゃから、日本が生産する財の量が減ってしまえば一人一人の国民が貧しくなるのは当然じゃ。じゃから何よりも生産能力こそ年金制度の維持と発展にとって重要なんじゃ。

そして、ロボットや人工知能、あるいは業務の改革改善、資源の最適利用などにより生産性を向上させることができれば、生産年齢人口が減少しても国民一人あたりの生産量は減少しない。この場合は年金の金額を減らす必要はまったくないし、むしろ増やすことも可能になるじゃろう。ちなみに年間の生産性上昇率が0.65%以上あれば今のペースで人口が減少しても、計算上1人当たりの分配量が減ることはない。現在のところ、平均的には年間0.9%程度の生産性上昇が達成されておる。今後は技術革新でさらに生産性の向上も見込めると思う。じゃからむやみに心配する必要はないんじゃ。それよりもデフレがこのまま続いて投資も消費も減り続ければ、本当に最悪の老後を迎える危険性もある。それが心配じゃ。