バブル経済Q&A

2016.5.29

Q.(ねこ)

バブル経済って何かにゃ?どうして発生するにゃ?

A.(じいちゃん)

株式、証券、不動産などの資産が転売を繰り返されることで値上がりを続けることをバブルと言い、それで生じる経済状況のことをバブル経済と言うんじゃ。一般に資産は保有していると利益を得られる場合が多い。たとえば株式は配当金が得られるし、不動産は地代家賃を得られる。じゃから、資産がこうした収益性を元に一定の価格で取引されるのは普通じゃ。ただし、得られる利益に比べてあまりにも高い価格で資産が取引されるなら、これはバブルと言える。

こうしたバブルにおける資産取引の場合は、資産を保有することで利益を得るのが目的ではなく、その資産を転売することで売却益(キャピタルゲイン)を得ることが取引の目的となるんじゃ。こうした取引はギャンブル性が高く、投資ではなく「投機」と呼ばれるんじゃ。

バブルがどのように発生するのか?根本的な原因は極めて簡単じゃ。市場で取引する人々の大部分が「資産価格が値上がりする」と信じることじゃ。そうすると本当に市場で資産価格が値上がりする。「値上がりする」と多くの人が信じると、多くの人が資産を買い求める。すると本当に値上がりするわけじゃよ。尤もらしい説明はあとからくっついてくるだけじゃ。

ところで、資産価格がどんどん値上がりを続けると、やがて値段が高くて所持金では買い取れないほどの値段になってくる。普通はこの時点で資産価格の値上がりはストップする。しかし、まだまだ資産価格が値上がりすると市場参加者が信じていると、おカネを借りて売買する人々が出てくる。このときにおカネを貸すのが銀行じゃ。従って、銀行が市場のプレイヤーにどんどんおカネを貸し、そのおカネでプレイヤーが資産の売買を続けることでバブルは拡大を続けるんじゃ。

そのため、バブル経済では資産価格や世の中の資産総額がどんどん膨らみ続ける一方で、銀行に対する世の中の借金総額もどんどん膨らみ続ける仕組みになっておる。資産と借金が同時に膨らむのがバブルの実態じゃ。

Q.(ねこ)

バブル経済はどうして崩壊するの?

A.(じいちゃん)

すでに説明したように、バブルが成長する過程では、世の中の資産総額がどんどん膨らみ続ける一方で、世の中の借金総額もどんどん膨らみ続ける。借金の金額が小さいうちはまだ良いが、そのうち天文学的な借金が世の中に作られる。こうしてプレイヤーが借金を続けるには「低い金利」が動機となる。プレイヤーは銀行から借金すれば銀行に利息を支払わなければならない。しかし金利が低いうちは、資産の売買差益から利息を支払っても手元に儲けが残る。じゃからバブルは膨張を続ける。しかしバブル末期になると中央銀行(日本銀行やFRB)が金利を引き上げ始める。金利が高くなると、資産の売買差益から支払利息を引くと、十分な利益が出なくなる。資産を売買しても儲からないので、多くのプレイヤーは資産を売って処分し、借金を返済するようになる。

資産が売られるようになると、資産の価格は下落を始める。すると、それまで資産を保有していた人々も、損をしたくないので次々に資産を売り始める。そのため市場は資産の売りが殺到し、資産価格が暴落する。こうしてバブルは崩壊するんじゃ。

Q.(ねこ)

バブル経済が崩壊するとどうなるの?

A.(じいちゃん)

バブルが崩壊すると資産価格が暴落するが、そうすると多くのプレイヤーは資産が逆ザヤになる(債務超過という)。つまり持っている資産をすべて売っても借金を返済できない状況となる。このため借金を返済できない人や企業が続出する。するとおカネを貸している銀行は借金が返済されない(不良債権を抱えるという)ため、銀行の経営が悪化する。こうして金融危機になる。

投機筋や資産家がマネーゲームで破産するのは自業自得で勝手だが、バブルの最大の問題点は、無関係の人々がどんどん巻き添えになることじゃ。資産の売買つまりマネーゲームに首を突っ込んでいない個人や企業にもバブル崩壊の悪影響が波及する。なぜじゃろうか。多くの企業は事業を行う目的で銀行から借金をしておる。銀行から借金するときには担保として自分の資産を差し入れている。バブル崩壊で資産価格が暴落すると、担保の資産価格も暴落してしまうんじゃ。こうなると銀行はおカネを貸している企業に対して担保の追加を求めるようになる。もし追加で銀行に差し入れる担保がなければ、借りているおカネの返済を求められたり、それ以上の融資を受けられなくなってしまう。これによって企業の資金繰りが悪化すれば、従業員をリストラしたり、事業を縮小したり、倒産に追い込まれる場合もある。

また、バブルが崩壊すると景気が悪くなる。すると企業の売り上げが減って利益も減る。もし銀行から借金して積極的に設備や研究開発に投資していた前向きな企業があったとすれば、「借金の返済+売上減少」によってダブルパンチで追い込まれる。前向きな企業ほど危機になるんじゃ。多くの企業がこれにすっかり懲りたため、経営状況が回復した今でも、日本の企業は前向きな投資を行わず、リスクに備えてひたすらおカネ(内部留保)を貯め込むようになった。これがバブルの後遺症じゃ。

(ねこ)

ふざけてるにゃ。バブル経済は正直者が馬鹿を見る世界なのにゃ。

(じいちゃん)

ところでバブル崩壊が激しいとおカネが回らなくなって(流動性が損なわれるという)経済が崩壊する。どういうことか。多くの企業は「後払い」で取引している。請求書払いなんかがそうじゃな。後から売上のおカネを回収することで支払いができる。ところがバブルが崩壊して多くの企業の経営が立ち行かなくなると、売った先の会社が倒産するなど、売り上げの回収ができなくなる。すると支払いもできなくなる。支払いができなくなると、別の会社にとっては回収ができなくなることになるから、その会社も支払いができなくなる。これが次々に連鎖して、企業が続々と支払い不能になって連鎖倒産する。これが流動性危機じゃ。

もし企業が売り上げの回収ができない事態に陥っても、銀行からおカネを借りることができれば、借りたおカネで支払いをすることができる。一時的に借金は増加するが、流動性危機による連鎖倒産を回避できる。しかし、銀行はマネーゲームに膨大なおカネを貸してきたため、すでに膨大な不良債権を抱えており、企業にカネなど貸すどころではない。そこで中央銀行が天文学的なおカネを刷って銀行へ投入する。中央銀行は流動性危機に際しては、無利息で無制限に銀行へ融資できる。こうして銀行からの貸し出しを維持し、おカネの回収と支払いを成立させることが最優先となる。

こうして最悪のケースを逃れても、銀行への借金は残ったままじゃ。これが長期的な不況の原因となる。日本における失われた20年もこれが原因で始まったんじゃ。銀行への借金の中には、返済の難しい借金がある(不良債権という)。これは銀行の経営を悪化させる。銀行は経営状態を良くするため、リスクのある貸し出しを減らし、他方では貸し出したおカネを回収しようとする。これが「貸し渋り、貸し剥がし」と呼ばれる現象じゃ。銀行が貸し渋りや貸し剥がしを行えば、経営の厳しい企業は倒産したり廃業せざるを得ない。また不況になると借金する企業が減るから、世の中のおカネの量が減って(信用収縮)おカネが回らなくなる。

また企業においては、バブル崩壊によって保有している資産の価値が下落し、しかも銀行への借金(負債)が大量に残っておる。これが会社経営の財務帳票である貸借対照表(バランスシート)の内容を悪化させることになる。企業にとってバランスシートを改善することは経営上の最優先課題じゃ。つまり借金を返済することが優先される。そのため、企業は利益が出てもそれを再投資せず、借金の返済におカネを回すことになる。すると世の中の投資が減って不況となる。このようにバランスシートの悪化によって引き起こされる不況は「バランスシート不況」と呼ばれる(リチャード・クー氏)。バランスシート不況になると、おカネを借りる企業よりも返す企業の方が多くなり、結果として世の中のおカネの量が増えなくなる(信用収縮)。これがデフレを引き起こすんじゃ。

バブルが崩壊すると多くの企業は過剰な借金を抱えた状態となり、バランスシートは悪化する。だから企業の抱える借金を処理できなければ、いつまでたっても景気は回復しない。また、おカネを貸している方の銀行の不良債権も回収できない。そこで政府が膨大な国債を発行して(借金)、そのおカネを財政出動として世の中に供給したんじゃ。そのおカネを使って企業は借金を返済し、銀行は不良債権を回収し、企業や銀行のバランスシートはすっかり回復できたんじゃよ。とりわけ不動産バブル崩壊で瀕死だった建設業とそれに多額のおカネを貸していた銀行は蘇った。そして、その代わりに政府に膨大な借金が残された。つまり「バブルのツケを政府に押し付けて回復した」のじゃ。そして次の段階として、今度は財務省が消費税の増税で政府の借金を減らそうと企んでおる。つまり「政府に押し付けたバブルのツケを、今度は国民にまわす」というわけ。それが財務省の本当の狙いじゃろう。ふざけた連中じゃ。

Q.(ねこ)

バブル経済はすべて悪いことなの?

A.(じいちゃん)

確かにバブル経済は最終的に最悪の結果をもたらす。ところが、バブルの最中は最高の経済状況であることも事実じゃ。じゃから、単純に「バブルが悪い」という結論だけでは、バブルから十分な教訓を得たとは言えん。バブル経済の何が良くて、何が悪くて、どうすれば良い効果だけを利用できるのか、それを考えてこそ本当の教訓を得たと言えるのじゃ。新聞マスコミのように、盲目的にバブルを叩くのは愚かじゃ。

実際にバブル最盛期の日本の経済は絶好調じゃったし、アメリカのサブプライムローン・バブルの最盛期はアメリカどころか世界中の経済が絶好調じゃった。これは何を意味するのか?識者の中には「バブルは虚構の経済」という人もおる。しかし実際に生じている現象は夢や幻ではない。実際に財(物やサービス)が生産され、多くの人々に行き渡ったのじゃ。それだけの生産能力が社会にはあるということじゃ。

ところが、バブルが崩壊すると、そうした生産力がまるで無いかのごとく機能を停止する。バブル崩壊前と同じように、そこには工場も設備も労働力も資源も存在している。しかし動かなくなる。そして人々には財が行き届かなくなり、貧しくなり、格差が広がる。それはなぜか?おカネが回らなくなるからじゃ。

バブル経済が生産力を最大限に発揮し、人々に豊かさをもたらす理由は「おカネがまわること」じゃ。バブルでなぜおカネがまわるかと言えば、世の中のおカネがどんどん増えるからじゃ。銀行が投機プレイヤーに貸し出しをどんどん増やすから、世の中のおカネもどんどん増える。しかし、このおカネはすべて借金から出来ておる。じゃから、やがてバブルは崩壊し、おカネの循環は止まり、信用収縮によっておカネそのものも消えてゆく。だからバブル経済は一時的に好景気をもたらすが、あとから大不況を引き起こすんじゃ。

ということは、借金ではないおカネを世の中にどんどん供給すれば、崩壊しないバブル好景気のような状況を作り出すことができるはずだと気が付くじゃろう。その方法が例えば政府通貨や日銀の国債引き受けといった方法なんじゃが、新聞マスコミはこれを「財政ファイナンスは禁じ手だー」と言って必死に止めようとしておる。そのくせ、政府のツケを国民に押し付けることに熱心じゃ。

Q.(ねこ)

日銀が金融緩和するとバブル経済になるの?

A.(じいちゃん)

金融緩和をしたからといって、必ずしもバブル経済を引き起こすとは限らん。これは現代の通貨制度を知らないと意味が解らないので、本サイトの「通貨制度とは何か」や「銀行の基本的しくみ」などを参照して欲しい。簡単に言えば、世の中のおカネはすべて誰かが借りた借金からできているため、借金する人が増えないと、日銀がいくら現金を発行しても世の中のおカネはまったく増えないからなんじゃ。

借金しないとおカネが増えない。じゃからこそ、企業や個人がおカネを借りやすいように日銀が金利を下げているのじゃ。しかし、あまりにも景気が悪いため、いくら金利を下げてもおカネを借りる人が増えない。日銀はすでに200兆円以上もおカネを発行したが、それは銀行の金庫に積まれたまま世の中には出て行かない。バブルにはなっていないのはそういう理由だからじゃ。もちろん、この先にバブルを引き起こさないとは言い切れない。個人や企業がどんどん借金を増やせばバブルになる可能性もある。おまけに現在の日本政府はバブルに対して何の予防策も講じていないからリスクはある。まさに無策じゃな。

Q.(ねこ)

バブルを防ぎながら金融緩和はできないの?

A.(じいちゃん)

できるはずじゃ。一つは資産の売買益(キャピタルゲイン)に対する課税の強化じゃ。資産を転がしても税金に取られるだけだと知れば、投機マネーは動かない。株式や先物の市場取引量が減るが、そもそも投機ではなく、実経済への投資を増やすのが金融緩和の本来の目的なのじゃから、まったく問題ない。

それでも不十分なら、もっと強力な規制方法がある。それが「100%マネー」という考え方の導入じゃ。これは世界大恐慌後にバブルを退治する目的でアメリカの著名な経済学者たちが主張した方法じゃ(シカゴプランという)。詳しく説明すると難しいのじゃが、簡単に言えば、銀行が借金をどんどん貸し付けることで世の中のおカネを増やすやり方(信用創造)を禁止する方法じゃ。こうなると、おカネは中央銀行が発行した現金だけに限定されるため、バブルが膨張しなくなる。

この方法は銀行制度を根本からひっくり返すほどの改革じゃ。おそらく、資産家や銀行など金融街がバブルに踊って世界大恐慌を引き起こしたさまをみて、当時の多くの経済学者が本気で怒ったんじゃな。じゃから金融街にお灸を据えようと思ったのじゃろう。100%マネーは当時の多くの経済学者が支持した方法じゃったが、金融街の猛反対にあって実行されなかった。じゃが未だに金融街は何の反省もしておらんようじゃ。それなら、お灸をすえる必要があるかも知れないと人々が思っても不思議はない。

この話は「タブー」に触れるので、新聞マスコミには決して出てこないが。