ベーシックインカム動画・第1話ナレーション

第1話 なぜ今、ベーシックインカムが注目されているのか?

はっはっは、私は「ばらまきマン」だ。どうして私をばらまきマンと呼ぶか、それはさておき、私がこの番組のナレーション役を務めることになったんだね。よろしく頼むよ。

さ~て最近、テレビや新聞で「ベーシックインカム」という言葉を耳にする機会が増えてきたよね。ベーシックインカムというのは何だろう。

どうやら、すべての国民におカネを配るという政策らしい。つまり、大人から子供まで、すべての国民におカネをばらまく政策だ。いや~これぞ、ばらまきマンだね。これが実現したら、みんな大喜びだ。

また、最近はベーシックインカムを政策に掲げる政治家や政党もあるらしい。そこでこの番組では、ベーシックインカムとは何なのかを毎回、考えてみたいと思うんだ。今日はその第一回目なんだね。

ベーシックインカムが注目され始めた理由

ベーシックインカムの基本的な考え方は、かなり昔の時代から存在していた。しかし財源などの問題もあって、これまでは、それほど大きく注目されてこなかった。ところが、最近になって人工知能やロボットが急速な進化を遂げ、にわかにベーシックインカムが注目を集めるようになってきた。人工知能の出現によって、人間の仕事が奪われるのではないかと考えられるようになったからだ。

人工知能やロボットと言えば、機械の一種だよね。機械は産業革命以後に登場してきた。そして、それまで人間の労働者が担ってきた仕事を、代わりに請け負うようになってきたんだ。そのため、社会の生産能力は飛躍的に伸びた。

ところが、機械がどんどん増えてきた産業革命当時は、人間が機械に仕事を奪れて職を失い、失業者が溢れて大問題になったんだ。労働者の中には雇用を守ろうとして、機械をぶっ壊そうとする人まででてきた。

一方、当時の機械は人間が操作しなければ能力を十分に発揮できなかった。だから、機械が増えるにつれて、その機械を操作するための労働者が大量に必要になり、失業者はそうした仕事に吸収されてゆき、失業問題が社会を破綻させるようなことはなかったんだ。

その後も機械は増え続けて、そのたびに人間の仕事は機械に奪われた。でも、サービス業という、人間でなければできない仕事、例えば、接客業、飲食業、医療介護、宅配、趣味娯楽産業といった仕事が増えることで、失業者を吸収してきた。

ところがここ最近、人工知能という機械が急速に進化してきたんだ。この人工知能がこれまでの機械と大きく違う点は2つあって、一つは「人間の操作を必要としない」、機械だけで生産活動ができるという点だ。これは完全無人工場のような、労働者をまったく必要としない生産設備が登場することを意味する。そうなると、機械を操作する労働者はいらなくなってしまう。

もうひとつは、人間にしかできなかった仕事が、機械にもできるようになる点だ。例えばこれまで機械にはできない、と考えられてきたサービス業が、機械に置き換わる可能性が出てきた。良く知られた例では、ソフトバンク社の開発した「ペッパー」と呼ばれるロボットがある。これはまだまだ人工知能ロボットの初期の段階だけど、それでも接客業務の一部を担うことができる。

このような、人工知能やロボットの進化によって引き起こされる失業問題は「技術的失業問題」と呼ばれている。では、どれくらいの仕事が機械に置き換わってしまうのだろうか。それについては幾つかの研究があるらしいけど、野村総研の発表したレポートによれば、今から10年から20年後に、現在の労働人口の49%が人工知能やロボットに代替可能だとされる。

だから、このままだと未来は、人工知能やロボットに仕事を奪われた、失業者が溢れる世界になる可能性が高いんだ。働きたくても、仕事がなくなってしまう。これは個人の努力で解決できる問題じゃない。

こうした失業問題を放置すると、様々な社会問題が発生すると考えられる。犯罪や自殺の増加、貧困の拡大、生活の糧を失って餓死する人も出てくるだろう。貧富の格差が拡大して、暴動やテロが発生し、治安の悪い不安な社会になるかも知れない。

しかし、冷静に考えてみれば、これは極めておかしな現象だよね。それはなぜか。そもそも機械は「豊かに生活したい」という人間の欲求から生まれてくるものだ。そして人間の代わりに機械が仕事をしてくれるなら、人間は楽になるし、機械が自動的に様々な商品やサービスを生産してくれるのだから、多くの人が遊んで暮らせる社会になるはずだよね。

ところが現在の「資本主義経済」のままだと、「機械が人間の仕事を奪うことで、人間の生活を貧しくする」という本末転倒の現象が生じる。つまり、現在の経済のシステムに、何らかの修正を加える必要がでてきた。そこで注目を集めているのが「ベーシックインカム」という考え方なんだ。現在の資本主義の考え方に、ベーシックインカムの制度を取り入れることで、未来の社会システム、つまり「ポスト資本主義」の社会が実現すると考えられるんだ。

そのような社会では、すべての人々が、働いている、働いていないに関わらず、一定の所得を得られる社会になるから、社会における格差や貧困をはじめとする多くの問題を解決できる可能性がある。

そして、「人工知能やロボットが進化すればするほど、人間は豊かになれるはず」だから、人工知能やロボットが進化すればするほど、人々に配られるおカネの金額も増え続けるはずだ、と理解できる。

こうして、これまでとは比較にならないレベルで、機械が人間の仕事を奪う時代になると、これまでのように、働くことを条件として人々に支給されてきた所得、つまり賃金のみによって社会のシステムを維持することは困難になり、政府がすべての国民に一定の所得を給付する仕組みが必要になると考えられるのです。これが、今日、ベーシックインカムが注目を集めている理由です。

さて、次回はベーシックインカムの定義と、ベーシックインカムの歴史について考えてみよう。今日はこれまで、ベーシック!