混浴体験談

パート1:蓮華温泉・酸ヶ湯温泉・万座温泉

パート2:親谷の湯・野地温泉

法師温泉「法師の湯」(群馬県)

パート1:蓮華温泉・酸ヶ湯温泉・万座温泉

混浴の初体験といえば卯辰山ヘルスセンターの大浴場であったと思うが、大人になってからは各地の野趣豊かな秘湯となる。

【蓮華温泉】(新潟県) 新潟県蓮華温泉は旅館裏につづく遊歩道沿いに露天風呂が点在する。いずれも道端に木の枠で桝を切っただけという正に露天。山腹の湯畑近辺は噴泉により植物も生えず展望がよく、紅葉の名所でもあり観光客が多い。その中でも最も展望が良いところにあるのが薬師の湯。遮るものが全くなく、入浴のためと言うより観光の見世物としてあるようなもの。

どうしてもこの湯に浸かりたく、観光客が少なくなるのを待ち構え脱ぎ始めようとしたところ、傍らの中年女性がバスタオルを巻きながら脱衣しあっと言う間に入浴。入れなくなった私は女性の湯上がりを待つことになる。悠々と入浴を楽しんだ後の女性が色っぽく着替えする傍らを、私は恥ずかしさを堪えて薬師の湯へ飛び込んだ。すると堰を切ったように周りの男性達が、次々と狭い湯壷に入浴してくるではないか。もう浸かる余地のないくらいに数人のオヤジ連中に囲まれてしまう。そんなことならさっきの女性と入るのだった…。

【酸ヶ湯温泉】(青森県) 東北の温泉でかつては湯治場として栄えた山の秘湯は、男女別の仕切りは途中までで奥は繋がっている風呂が多い。千人も入れるという総ヒバ造りで有名な青森県酸ケ湯温泉のヒバ千人風呂もその一つ。脱衣場からの入口は幾種類もの湯壷が並ぶ浴場全体をほぼ一望できるくらい高くなっている。建物の大きさと湯治場独特の雰囲気に圧倒される。

そして何よりも奇異だったのが、手前の大浴槽に何とも言えない表情をした男性達が、ずらりとこちらの方に顔をむけ所狭しと雁首を並べていることだ。階段を降りその雁首達と向かい合わせて湯壷に浸かったのだが、視線はすぐ隣上方の女性用の出入口一点に集中しているのだった。よく首が痛くなったりのぼせてしまわないものだと感心してしまった。奥の方は正に混浴。とはいえ女性といえば60歳過ぎの女性のみ。そこへ40歳ぐらいの中年女性が大きなバスタオル巻き、堂々とお湯巡りにきたからドッキリだ。

【万座温泉】(群馬県) ドッキリといえば、群馬県万座温泉ホテルの湯治棟日進館は湯質の異なる湯船が数種類ありほとんどは男女別だが、一個所だけ混浴となっている。そこへ入ろうと脱衣場から風呂場を覗くと、なんと若い男女のグループがにぎやかに入っている。もちろん女性はバスタオルを巻いてはいるのだが、それほど大きくないため湯船に腰掛けるお尻がポッチャリと赤裸に出ているではないか。(後姿なので前は如何なる状況かはわからなかった。)到底入る勇気などないおじさんは高鳴る心臓を抑えて退散することになった。

別のお湯に入り暇をつぶして再度脱衣所の扉を開けたところ、着替えの済んだ彼女たちが座っている。目が合うと「いいですよ、どうぞ」という、座り続けたまま「どうぞ」といわれても目の前で裸になれというのだろうか。またしても退散。時代が変わりおおらかに温泉を楽しんでいるのは女性の方なのだろうか、それとも特異な例なのか。(その後日進館は大部分が閉鎖となりました。群馬県(吾妻)の万座温泉ホテルを参照してください。)

(以上は勤務先の社内報にかつて掲載された原稿を一部修正したものです。)

残念ながら写真は掲載できませんのでご了承ください。

(2003/4/18)

パート2:親谷の湯・野地温泉

よほど日頃の精進が良いのか、運が悪いのか、露天風呂混浴事件の体験をまたご紹介することができることになってしまった。

【親谷の湯】(石川県) まずは地元で、かつては岳人の湯、今は観光スポットとなってしまったドスの湯(親谷の湯)から。白山スーパー林道内にあるのは大出費だが、駐車場や遊歩道が整備され多くの人で賑わっている。駐車場からの急坂を蛇谷へ降りて行くとともにスーパー林道を行き交う車の音も次第に遠のいて行く。渓谷の清流を間近に眺めながら遊歩道を少し上流へ行くと、老婆の白髪のように白く幾筋にも分かれて流れる姥ケ滝が親谷との出合に現れる。ここまで散策をするだけでも価値があるが、更に姥ケ滝を眼前にした露天風呂は贅沢の極み。観光客からは丸見えだが入らない手はない。

登山の帰りに子連れで寄ったところ、アベックが水着で悠々入浴中。無理せずに待つことにしたのだが、なんと記念撮影をしていた別のアベックが水着の女性に誘われるままバスタオルを衝立代りにして脱ぎだしたではないか。(でもほとんど丸見え状態。)いつもの様にますます入れなくなるおじさんとなるのでした。所在なく目の遣りどころもなく暇を潰していると、ようやく上がりだすものの、水着の女性だけは一向に上がる気配が無い。痺れを切らし混浴を決め込むこととなる。地団駄を踏んで待つこと約半時、ようやく至福の時を手に入れることができたのだった。

【野地温泉】(福島県) 温泉は自然湧出(非加温、非循環、非掘削)に限れば、やはり山の鄙びた一軒宿になってしまう。しかも源泉近くに素掘りしたような露天風呂が一番。当然混浴だが最近は誰にでも楽しめるように男女別時間制を採るところも増えてきた。福島県の吾妻連峰標高約千二百メートルにある野地温泉もその一つで、昔ながらの木造の温泉棟、近代的な檜風呂、露天風呂等幾つかの風呂を時間で男女別にしている。

その露天風呂「鬼面の湯」入口の男性タイムを示す看板の前に若い男女と中年女性が何やら屯している。そこに偵察隊と思しき男性が「今誰も入っていないよ」と叫びながら戻ってくる。「後手に回ると入れない。」と直感した私は、傍らを潜り抜け子供らを急かせて更衣室へと雪崩れ込む。ところが負けじと中年女性が「私はおばちゃんだからいいわよね、あなたたちも入りなさいよ。」と彼女達に言い残し、まだ我々がいる狭い更衣室に入り込んで横で脱ぎ始めるではないか。「浸かってしまったら見えないわよ」とまで言い放って一緒に入浴することに。白濁した硫黄泉が近くの湯畑から直接流れ込み、外は氷点下にも拘らずほど良い湯加減。囲い塀が展望を邪魔しているのは残念だが、地吹雪で荒涼とした山々を眺めながらの露天は格別だった。

その中年女性が「若い女性が入るから男性諸氏はしばしあっちを向いてなさい。」と仕切る中、次々と先程の若い男女が加わり、計男3人女5人(私の娘2匹を含む)の完全混浴状態となり、最後には皆で記念撮影に収まる盛り上がりとなってしまった。後日雑誌を読むと「しばしば女性側から時間制を破られ混浴になるほど人気がある。」とある。やはり良い温泉と大自然の為せる業なのだろう。幸いにも先手必勝の混浴体験となった。

残念ながら写真はお見せできません。ご了承ください。 これは勤務先の社内報にかつて掲載された文章を転載したものです。

(2003/5/30)