法師温泉

長寿館

法師温泉長寿館(みなかみ町)

上州と越後を三国峠で結んだ旧三国街道の上州側最後の宿場が「永井の宿」です。新潟県からですと三国峠を越えてここで国道17号線と別れ、細い山道を戻るように数キロ辿っていくと法師温泉「長寿館」です。昔懐かしい赤い円筒形の郵便ポストと「御入浴客御宿」と書かれた古い看板が温泉情緒を盛り上げます。

本館と法隆殿を繋ぐ渡り廊下

玄関では何かの撮影が

明治8年築の本館の玄関を入ると正面はかつての云わばロビーで、真ん中に囲炉裏があり、左奥には帳場、吹き抜けの空間の右隅には2階の客室へと繋がっていた階段があったようです。現在は囲炉裏の上は畳敷きで大きな胡桃の木の火鉢が置かれ、帳場跡には図体の大きな初期の頃と思われるレジスターがピカピカに磨かれて置かれています。古い大きな柱時計や小道具等も飾られ、当時の賑わいが目に浮かぶかのような演出です。

廊下を進むとすぐ、上原謙と高峰三枝子が国鉄フルムーンポスターの中で混浴しながら微笑んでいます。一刻も早く風呂に入りたいと思わせるのです。

「胎内入浴」 と称する「法師の湯」

やはり昔ながらの「法師の湯」は健在です。河原の横の源泉に玉砂利を敷きつめそのまま浴槽にして囲ってあります。下から湧き上がるお湯と、引き湯して流れ落ちるお湯のバランスも実にいいです。浴室の建物がまた良く開放的で明かりは四隅の行燈だけで周りの自然と一体化して落ち着きます。温度も温くゆっくりと浸かれるのです。そこでは浴客も実に静かに湯の中に佇んでいるではないですか。 正に国宝級です。女性も入りやすいように男女別の脱衣場が設けられていました。(賛否はあるかもしれませんが。)

そして問題は新浴殿「玉城の湯」です。普通の温泉旅館と比較するならばすばらしい風呂と言えるでしょう。建物は実にすばらしくかつ美しいのです。しかし人工的な露天風呂、そしてコンクリートの上に玉石を敷きつめた内湯はやはり「法師の湯」には敵いません。すばらしい風呂はそう簡単には出来上がらないと云うことを改めて見せ付けられた思いでした。人が「玉城の湯」に流れ「法師の湯」が静かになった点と、団体誘客がますます助長される可能性がある点が功罪でしょうか。

基本混浴の「法師の湯」の外観

カラン・シャワー完備の新浴殿「玉城の湯」

これで料理と接客サービスがもう少し良ければ、日本一の温泉旅館ではないでしょうか。(すべての温泉に行った訳ではありませんが。)サービスの割には料金も割高です。それでも人が行くのだから、温泉がそれほどすばらしい証拠です。(2003/6/21)