青森県

蔦温泉

根城(八戸市)

蔦温泉「蔦温泉旅館」

蔦温泉は八甲田山と十和田湖の中間に位置する一軒宿です。近くには湯治文化の総本山とでも云うべき酸ヶ湯温泉があり、その影に隠れてやや目立たない存在ではあります。静かな分、密かに秘湯通に愛され続けてまいりました。酸ヶ湯温泉は酸性の白濁したお湯が「効くー」と思わず声が出る感じですが、こちらは無色透明で柔らかな泉質に「癒されるー」と云った感じです。そして何といっても、浴槽の底から源泉が静かに湧き出しているのがすばらしい。「源泉かけ流し」ならぬ「源泉湧き溢れ」状態です。

「久安の湯」の外観

時代を感じさせる本館玄関(改築中)

ついでと言っては何ですが、浴槽の底や横から湧き出す温泉を、ご紹介済みの中から少し列挙してみます。酸ヶ湯温泉「熱湯」(白濁していて良く分かんない)、鉛温泉藤三旅館「白猿の湯」(深いので立ったまま、溺れないようにご注意を)、二岐温泉大丸あるなろ荘「自噴甌穴岩風呂」(岩の割れ間から湧き出す)、法師温泉長寿館「法師の湯」(国宝級の胎内入浴)、等々。共同浴場や野天風呂も含めるともっとあるでしょう。源泉の真上を浴槽にしたわけですから、湧出量が豊富であれば、極上の湯を堪能できます。温泉の理想形です。

日帰り利用もできる「泉響の湯」

男女入替制の「久安の湯」

蔦温泉旅館は経営難により、ホテルやレストラン等を経営する城ケ倉観光が支援することになりました。この年は西館(新館)のみの営業となり、しかも大幅改築のため冬期間休業することになりました。大正時代に建てられたと云う重厚な本館はすでに工事中で、変貌する前の見納めをと思い、冬期休業直前にお邪魔することにしました。着々と改築・改装が進み、秘湯色は薄れ、近代的になりつつあります。湯治時代の名残は、外に湯治場らしい売店があることぐらいでした。(いずれ売店もなくなるのでしょうか?)昔を知る人は寂しい限りで「蔦温泉おまえもか」と言いたいでしょうが、時代の流れでどこも同じです。

広く快適な旅館部西館

本館や湯治棟は今後いかに?

食事は食堂になりますが、夕食は秘湯と思えない本格的な会席料理で、一品ずつ運ばれてきます。青森と云えば、平目やホタテの刺身となりますが、「平目昆布〆真砂和え」が酒のつまみに最高でした。朝食はバイキング形式で、内容は比較的ノーマルで、「けの汁」と思しき具沢山の味噌汁が郷土色を感じさせます。

海・山の幸が上品な味付けで

甘い真っ黒なふろふき大根

旅館の周りには七つの沼が点在し、ぐるりと廻って1時間程度の散策路も整備されています。八甲田山や十和田湖・奥入瀬渓流も近く、観光には好位置です。私が訪れた初冬は荒涼とした景色でしたが、それでも十分楽しめました。 来春以降の改築再オープン後に、再訪したいものです。(2014/12/1)