秋田県

強首温泉「樅峰苑」

秋田城跡(秋田市)

強首温泉「樅峰苑」

「えっ!こんな処に泊まるの?」と思ってしまう程古い町屋を改装した「ゲストハウス」や、一般家庭にお邪魔してしまう「民泊」が外国人観光客に大層人気です。地元金沢でも外国人旅行客が急増中で、名も無きゲストハウスの行き方を英語で聞かれたり、何もない生活道路を徘徊(失礼、お散歩)されているのに遭遇したりします。最近では秘湯も例外ではありません。そんな外国人にもお勧めなのが、登録有形文化財の温泉宿「樅峰(しょうほう)苑」です。

山形県との県境から秋田市に流れ込む雄物川が、平坦地になると蛇行を繰り返し多くの三日月湖が作られています。そんな大仙市北部に位置する、強首(こわくび)地区の田園地帯に湧く温泉です。湧くと云うよりは、天然ガス試掘中にガスの代わりに温泉が湧いたのが始まりだそうです。海岸から20キロメートル以上内陸にもかかわらず、海水に鉄分を混ぜた様な塩分の強い泉質です。

玄関が二つ並んでどちらから?

安全な階段も別にあります

樅峰苑は有形文化財に登録されている大正6年建立の建物を、改装して温泉宿として使用しております。さすがに浴場やトイレは増築した棟続きに設えてありますが、神社仏閣を思わせる様な屋根や、当時の贅を凝らした大広間・床の間・階段室等、正に豪農の館に泊まっているかのようです。

長~い秋田杉の廊下

一人部屋、トイレは共用

現在は掘削による自家源泉を持ち、別棟の貸切露天風呂もあります。敷地は十分広いですので、大浴場に隣接の露天風呂があればと思ってしまいました。雄物川のすぐ脇にありますが、昔から水害に悩まされ町全体が大きな堤防に囲まれていますので、残念ながら宿からは直接望めません。

樅の大木を眺めながら「貸切露天」

「大浴場」はあまり展望がきかない

食事は山の幸が中心で、山菜・川魚・川蟹が並びます。川蟹のみそ・つみれ、鯉の甘露煮・鱗揚げ、鮎の塩焼き、山菜天ぷら等を堪能しました。また、お隣の刈和野は国無形文化財に指定されている大綱引きで有名で、それに因みゼンマイを大綱に見立てた、大綱薇貝焼(おおつなぜんまいかやき)と称する素朴な鍋料理もいただきました。そうそう、燻した大根の沢庵とでも言いましょうか、秋田名物「いぶりがっこ」も忘れてはなりません。

大広間でいただく地産地消

濃厚な川蟹のみそ

最後にご紹介済みの中で、登録有形文化財の温泉宿を列挙してみましょう。青根温泉不忘閣(宮城県)、銀山温泉能登屋旅館(山形県)、東山温泉向瀧(福島県)、四万温泉積善館、法師温泉長寿館(群馬県)、別所温泉花屋、小谷温泉山田旅館(長野県)、三朝温泉木屋旅館(鳥取県)等です。使いこまれた古い建物も、温泉情緒を盛り上げる名脇役ですね。ゲストハウスもいいですが、純和風の老舗温泉旅館にも是非お泊りください。 (2015/10/1)

平安時代のお役所の遺跡「払田棚跡」