#8 磁石ロボット!マグネロン

何と言ってもこの回は

「それが分かったらフシギじゃないマグ!」

もうね、MHSは全部これだからね。それが分かったらフシギじゃないから分からないままでいいんだよね。メタ視点入ってるけど汎用性高すぎてけだし名言である。


第8話「磁石ロボット!マグネロン」

(脚本:荒島晃宏、絵コンテ:酉澤安施)


MHSが誇る芸術家マグネロの新作オブジェ発表会には大勢の……お客さんが……たった3人。それも乗り気なのはリディーだけで、ヒッキーとピラニンは渋々のお付き合いなのだ。

「はあ~、芸術はむつかしいよ……」

「実は私のノリもイマイチなの、だってわけがわからないじゃないマグネロの芸術って?」

「芸術が分からないなんてサイテー! 彼は天才よ!」

ノイジーでさえいまいちノリの悪い(と言いつつノリノリで司会やってるけど)マグネロの芸術に唯一理解を示すリディー、すっかりズレたセンスの持ち主という感じです。スピモンは今回もノイジーの相方で放送係。お愛想で拍手するヒッキー、ヒッキーの様子を伺ってから拍手し始めるピラニン、幕が開くとそこには大きなロボットのオブジェが……。

緊張のあまりに手足が同時に出ているマグネロ。その堂々たる姿(?)に「マグネロかっこいいプー」って言ってくれるアンプーがぼくは好きです。しかしアンプーとワットがスポットライト係で、もう観客よりスタッフの方が人数多いじゃねえか。

マグネロはオブジェの胸にMマークをはめ込むと、ノイジーの頭のマイクにあらん限りの大声で作品タイトルを叫ぶ。

「マグネロンだマグー!!」

磁石のロボットに「かっこいい~!」「なんか強そう……」とすっかり感心した様子のHP。

ちょっかい出してくるのは当然、いつもの3人組です。ヤムヤムの後ろで絵の具をくるくるもてあそぶチュービー。

「俺様はリディーちゃんと一緒で芸術的センス抜群だからな」

ボソッと「あいつに分かるわけないプー」と言うアンプーの本当に嫌そうな言い方がぼくは好きです。ヤムヤム、こういうときは地獄耳。ハエにたかられたアンプーとワットはマグネロンの上に落ちて放電してしまう。

「大丈夫マグ?」

「へいき。マグネロンは壊れなかったプー?」

「びくともしてないマグ!」

とっさにマグネロンを心配してくれるアンプーがぼくは好きです。ヤムヤムに対するマグネロの反応は、いじめられっ子ではないけれど、いじめっ子に関わると面倒くさいということは知っている地味なクラスメート、というポジションのそれ。マグネロンをブリキ細工呼ばわりされて、オブジェだから動かない、と悔しそうに答える。

親分が顎で指図すると、マグネロンへのラクガキ攻撃が始まった。チュービーは絵の具を出すとき頭がむにゃむにゃ動く。絵の具やらカラフルスプレーやらを顔で受け止め、体を張ってマグネロンを守るマグネロ。汚れた顔をリディーがさっと拭いてあげてますが、そのハンカチは机レースの練習のときフラッグにしてたやつですね!

ヤムヤムは去り際に投げキッスまで下さって、なんていうかとっても芸術的です。ウソップの「じゃーな」っていう捨て台詞が、めっちゃウソップ。今回はクラスの関係もあってウソップがいちいち良い反応をするので目が離せません。「マグー……」とヘコむマグネロの背後で、マグネロンの目が怪しげに灯るのだった……。


「世界中には真夜中に屋敷をさまよう蝋人形や動く銅像の話があるが、それらはみんな卒業生たちが作ったフシギである!」

「ティゲール先生! どしたら人形や銅像が動くマグか?」

ものに手を触れずに動かせる「磁石」のマグネロは、だからこそ自分の作品を動かすことにも興味津々なのだ。ティゲール先生、名言頂きます。

「それが分かったらフシギでも何でもなーーーーーい!!」

あ、また「マグー…」って言ったなかわいいぞ。隣の席でイヤミっぽく笑ってるウソップもかわいいぞ。

「マ・グ・ネ・ロ ア・ソ・ボ・ウ」

突如、マグネロンが教室に乱入。金属製の文房具をくっつけながら、マグネロの元にやってくる。ジュノのお花型ハサミとチャップスのキャンディー型コンパス、それにインキーのカンペンケースは、よく見るとリディーのシルエットとハートマークのラクガキが……。のんきにというか豪快にというか、感心するティゲール先生。

「よくできているなあ。どうやって動いているんだ?」

「え、それは……それが分かったらフシギじゃないマグ!」

「気に入った!! これならフシギ間違いなし。校長先生に推薦しておこう!」

ウソップ、マグネロが褒められて気に食わねえ態度が表に出まくっている。マグネロンはマグネロを遊びに連れ出そうと聞きません。マグネロにそんな顔で頼まれたら、ティゲール先生も断れない。「磁力でモニターが乱れる」は、ちょっと時代感じますね……。


いつも頭にくっついている鉄板(投げる以外の使われ方を見たことがない気がする)、投げっこするのもなかなかハードな全身運動だ。校舎から覗く観衆も、飛び交う板に合わせて首を右、左。マグネロンの顔にくっついた鉄板をはがしてあげるマグネロはまるで本当のお兄ちゃんのようだ。

「マグネロン、ここにいるのはみんな友達マグ!」

カフェテリアではAW+HLSPにご挨拶。宙返り一回転するスピモン。気に入らないのは極悪トリオです。

「あいつモテモテズラ!」

「親分、俺アイツが気に食わねえ! ぶっ壊しちまおうぜ!」

「俺様がぶっ壊したらリディーちゃんに嫌われちゃうだろ! 頭使え」

そこへ、芸術に理解のないジュノさんたちがくっついた文具を回収にやってきます。「えへ……ぼく缶ペンケース」インキーはこんなときでも締まりがなくていいな。邪険にされてしまい、気を落ち着けるようにぐっとジュースを飲み干すマグネロ。二股に分かれたグラスは実験器具チックでマグネロによく似合う。

背中にベンダーマシンをくっつけたマグネロンを見て、よい考えを思いついたウソップがひそひそひそ……の流れも定番になってきたなあ。


階段下に一人残されて寂しがるマグネロン、見た目はごついが中身は生まれたての子供なんですよね。スロット扉に手を伸ばそうとしたところに、サボりのウソップが誘惑の声をかける……

「よぉマグネロン。マグネロに嫌われたんだな」

「チ・ガ・ウ……」

「じゃあなんで遊んでくれないんだ」

ああ、いじけるマグネロン、かわいいよお……

「じゃあ俺たちと遊ぼうか」

口車に乗せられ、ついでにエレベーターにも乗せられ、カフェテリアにやってくると、待ち構えていたのはヤムヤムとチュービーであった。

「もっといろんなものをくっつけてゲージュツ的になったら遊んでやるズラ!」

「モット……クッツケル……」

マグネロンを暴走させるのに、その善意を利用して自分の手を汚さないという狡猾なやり口。カトラリー装甲が出来上がるのを見て「わぁすげえ磁石パワーだ」っていうヤムヤムがちょっと面白い。踏みつぶされて下駄にされるベンダーマシンは前回に引き続き大災難すぎる。

ウソップもスチール缶なので、当然くっつきます。マグネロンの背中でジタバタするのを助けもせず笑い転げているヤムヤムとチュービーのクソガキ度が高い。


なんでもかんでもくっつけようとしてマグネロンが暴走を始めてしまい、マグネロは胸を痛める。マグネロは他人にはいささか理解し難い自分の世界を持ってるけれど、基本的にはかなり良識のある子なんだよな……って、MHSには良識のない子が多いみたいな言い方しちゃった、あはは。

「あんなことしたら……マグネロンはここにいられなくなるマグ」

マグネロンの来襲を恐れて教室の隅に固まる生徒たち、一緒にビビる机たち。ガラクタだらけのゾビーのロッカーは磁力の被害が大きそうだ……背中にくっついたままマグネロンをけしかけるウソップも今回本当にクソガキ度が高い。

とうとうロッソのパパまでくっつけてしまったマグネロン。でもまだ遊び方も何も知らないだけで、本当はただみんなと一緒に遊びたかっただけなんだよね……ヤムヤムを持ち上げると、じっと訴えるような目でこう言うのだった。

「ト・モ・ダ・チ ア・ソ・ボ・ウ」

で、エディの首輪までくっつけようとしたのか、腕を扇風機のように高速回転させる謎の技まで繰り出し始めて、一体どうなっちゃったんだ。メカメカしい変形は人語の通じなさそうな感じすら醸し出して、ちょっと怖い。

見かねたマグネロが前へ出る。マグネロンの顔にくっついていたのは、あのときと同じ鉄板だった。

「マ・グ・ネ・ロ……ア・ソ・ボ……」

「その前にくっつけたものを返すマグ」

甘えてマグネロの手を揺するマグネロンに、毅然と言うマグネロ。くっつけたものを返す……ということで、ようやくウソップも地上に帰ってきましたが、「助かったぜ……」なんてしらじらしいこと言うわね……。


さっきの回転で校舎のてっぺんまで飛ばされたヤムヤムを助けるため、マグネロンは一も二もなく校舎を登り始めた。モニターに手をつっこんで火花が散るシーンは、なかなか映像的にもショッキング。いつの間にか学校中の生徒が校庭に集まり、マグネロンを応援している。

あわやのところで一番上にたどり着いたマグネロン。見事ヤムヤムをキャッチして、助かったと胸をなで下ろしたのも束の間……

「ト・モ・ダ・チ・ブ・ジ?」

地面に散らばる金属片を、生徒たちが心配そうにのぞき込んでいる。マグネロンは視界の端にヤムヤムを確認すると、最後に一言だけを残して、物言わぬ金属の塊となるのだった。

「ヨカッタ……」


割れたままの画面、折れたままのアンテナ……まだ傷癒えぬ校庭で、めげずにオブジェを作り直すマグネロと、それを手伝うヤムヤム。このワンシーンだけで和解と前進を描いているところがさわやかで良い……。


結局、どうしてマグネロンは動いたのか? それが分かったらフシギじゃないマグなので、電撃のせいかもしれないし、そのあと必死で守ってくれたマグネロの心に触れたからかもしれないし、そこに答えはないんですよね。

無垢で純粋な非人間的存在がその無垢さゆえに犠牲になる、という定番のプロットでしたが、それが悲しいだけでは終わらない、前向きな余韻が優しいエピソードでした。


ふしぎコレクション「真夜中に動き出す彫刻」

今日のふしぎはマグネロじゃ!

磁力に足腰で対抗せよという校長先生……。


次回予告

「ハアイ! リディーよ。ねえ、みんなはUFOって見たことある? ウソップがUFOを見たんだって。でもみんな全然信じてないの」

次回はいわゆる狼少年話。ウソつきといえば彼の出番だ!!


エンドカード

リディーとオンプー+マグネロンの腕に乗るマグネロ。芸術家チームです。


<まえつぎ>