#3 チュービーのふしぎ絵

ドッキーが問題児の回は極悪トリオがいいやつになるという見本のような(?)エピソード。

個人的に不思議とふしぎとフシギの書き分けは特に基準を決めていません。前後の文脈との兼ね合い、読みやすさと気分で書いてます。公式は平仮名を使うことが多いかしら。


第3話「チュービーのふしぎ絵」

(脚本:須田泰成、絵コンテ:奥山潔)


\テストはいやだ! テストはいやだ!/

イエローリザードクラス総出で机をバンバン叩いて(一人、ピラニンの椅子の上でジタバタしている猿もいますが)、抜き打ちテストに文句垂れています。

「いきなりテストだなんてずるいよ~!」

「ヒッキー、そんなことじゃ本物のフシギを作れないぞ」

「テストきらーい!」

「ああ、リディーまでそんなことを!」

ピラニンまで眉を吊り上げて抗議しているのですが、ここ、うまいことドッキーが映らないのが悔しい。お前も机バンバンしてたのか……!?

モニターから飛び出して一喝する先生のド迫力に、椅子から転げ落ちてひっくり返るチュービーが今日の主役です。みんなの机がトコトコ元の位置に戻る動きがかわいい。


「ナスキーは毎日一人で地面に絵ばっかり描いている生徒だった。そんなナスキーは卒業して南アメリカのペルーに渡った……たどり着いたのは見渡す限り砂と小石ばかりの砂漠。そこでナスキーはせっせと地面に絵を描き続けた。出来上がった絵は地上にいるとなんだかよく分からないものだったが、空から見るとなんとクモやハチドリなど素晴らしい絵になっていたんだ! その後ナスキーの描いた砂の絵はナスカの地上絵と呼ばれて世界の七不思議に数えられるようになったんだ。……君たちもナスキーのように立派になりたいのならテストくらいでブーブー言っちゃいけないよ」


卒業生ナスキーの話でなんとなく言いくるめられて、生徒たちは素直に運命を受け入れ実技試験に臨むのであった。

一番手ヒッキーは「練習したんだもんねー!」との言葉通り、なかなか立派なライオンの絵を黒板に描く。ただし絵は飛び出すどころか猫のように鳴くだけで、「これじゃフシギというよりお笑いだな」とサラマン先生も厳しいお言葉。いや、絵が動いて鳴いてるだけでももうちょっと評価したげてよ!

続いて自信満々で「投げ縄絵の具」を披露するチュービー。ヒッキーとチュービーがクラスメートとして対等なライバルやってるとなんかワクワクする。絵の具の色や形が次々変わるパフォーマンスは確かに見どころのある技なんだけど、永く人間の記憶に残るフシギかというとそこまでではないわけで、先生にそれ以上を求められてチュービーは頭が真っ白になってしまった。期待をかけられるほど緊張してダメになっちゃうタイプっぽい。

「人に迷惑をかけるなんて、ふしぎでもなんでもないぞ!」

「なんで(↑)こーなる(↑)ズラ…」


このくらい怒られた程度でここまで激しく落ち込むような子が極悪トリオ名乗ってて大丈夫なのかって心配になっちゃうんですが、今日のチュービーはいつものようにおバカな親分たちに付き合う元気もありません。

「ハエでサッカーボール作ったんだ! 遊ぼうぜ!」

「さーっすが親分! ハエを使わせたら宇宙一!」

「今日は遊びたくないズラ……」

柄でもなく落ち込むチュービーを気にかけるヒッキーとリディー(柱の陰からダンゴになって出てくるのがかわいい)ですが、それに対しても「ほっといてくれズラ……」とかなり重症っぽい。


そんなチュービーに突然つむじ風ふっかけてくるドッキーの方がよっぽど極悪だよ。

「フッ、俺のフシギが迷惑かけたな」

「そんなのフシギじゃないズラ! 人に迷惑かけるようなフシギなんてフシギでもなんでもないってサラマン先生が言ってたズラ!!」

「お前に言われたくないね」

こいつもしかしてテストでめちゃくちゃ褒められでもしたんでしょうか、とにかく自分のフシギを見せつけたくて見せつけたくて仕方ないという様子で、もう出るわ出るわ、キメッキメにキマったセリフの数々!

「俺のつむじ風フォーエバーは未来の七不思議さ……」

「フッ、許せ。俺のフシギはちょいと気まぐれなのさ」

とかなんとか言って、チュービーを巻き込んだつむじ風が校内に飛んでいくのを気に留めようともしないのである。


ブルースパイダークラス初登場です。ミスターXの素顔を見ようと逆光で追いつめる迫力満点のジュノさんは、また中の人の一人二役。

つむじ風で紙袋が取れたと思ったら、何枚かぶってるんだこれ! 腰に手を当て不適に笑うエックス……の後ろで、一方的に被害を受けるチュービー。ジュノの「あたいのお花」っていう言い方が好きなんですけど、そんなスポッと抜けるもんなんすね、人喰い花……。

オンプーの悲鳴から発生した音符も飛んでくるし、チュービー既に踏んだり蹴ったりです。


「チュービーのやつ、気になりますね」

「あんな元気のないあいつ、見たことねえからよ」

と、呑気にハエサッカーをしていたYUのところにもつむじ風が襲来。「俺様のかわいい子分を返せ!」と果敢に応戦する頼もしいヤムヤムなんだけど、ハエ軍団が敵うわけなかった。

ウソップもスプレーの風圧で対抗しようとするが、火に油を注ぐようなもの。チュービーは顔の形までゆがんじゃってもう見てられません。こぼれた絵の具が校庭中を汚し、骨山からひょっこり顔を出したヒッキーとリディーも事の大変さを知る。


「ミッドナイトホラースクール気象ニュースです! 先ほどドッキーが発生させた竜巻・つむじ風フォーエバー250号は、チュービーを巻き込み校庭を北上中です!」

つまり見る限り校舎は西向きに建っているということになるだろうか。250号はノイジーの顔にまで被害を及ぼし、ボロッカの傘の骨をひっくり返し、ついには再び校舎に上陸しようとしていた。

「許せチュービー! 今お前を入れるわけにはいかねえんだ……」

学校の危機に、リディーのオルガンからも不安なメロディーが止まらない。感情に合わせて頭のオルガンを演奏するという設定、実際にやってたのこのシーンだけだったなあ……。

子分よりもリディーちゃんのピンチに反応するヤムヤム。ドッキーはこの後に及んでも平然と階段の手すりに腰掛けて足をぷらぷらさせている。こんなタチ悪いヤツをまんまとその気にさせるヒッキーの話術が偉い。

「つむじ風フォーエバーが2つか……責任持てねえぜ」

「いや、つむじ風フォーエバーを超えるふしぎ、つむじ風フォーエバーデラックスをね! ドッキー、君ならできるよね!」

君ならできる、っていうの、第1話の、君には僕の気持ちは分からない、の裏返しじゃん……この関係よ……!!

ヒッキーの目配せを受け、ドッキーが体ごと回転して発生させたつむじ風フォーエバーデラックスは、キラキラ光りながら250号を校庭へ押し出していった。

「「「「いっけー、つむじ風フォーエバデラーックス!!」」」」

今回のドッキー、ちゃんと格好いい男、というより格好つけてる少年らしさが強いんだよな。「フッ、またフシギの限界を破っちまった」のポーズなんて、いっそ初々しくて微笑ましい……!

不憫を一手に引き受けるチュービーは、二つのつむじ風が消滅するとともに、上空から放り出されてしまうのだった。


その上またも先生に怒られる羽目になり、こればかりはチュービーは完全にとばっちりです。ふてくされたように目をそらすドッキーは、まるで反省の色なし。

「でもサラマン先生、つむじ風フォーエバーはすごいフシギだと思わない?」

「思いません!! こんなのふしぎでもなーんでもありません。これは単なるメチャクチャです!」

「また怒られたズラ……」

「チェッ、大人は頭が固いんだなあ……」

こいつのせいで1カ月掃除当番させられるチュービーが本当にかわいそうなんですけど……。


ボロッカは竜巻に飛ばされてからずっと上にいたのでしょうか。みんなで屋根の上に登って校庭を見ると……。

「偶然とはいえこれは本物のふしぎに近い! 2000年前に卒業した教え子ナスキーを思い出すぞ」

「サラマン先生にほめられると照れるズラ~!」

「なんだよ、つむじ風フォーエバーのおかげだろう」

なるほど、だからサラマン先生は最初にナスカの地上絵の話をしていたんですね。しかし2000年前から教師やってる大ベテランとは、かなり大きく出たなと思う。

「ご褒美をくれるズラか!?」

「フン、俺もついに卒業か」

最後までチュービーはピュアッピュアだし、ドッキーはこんなんだし、サラマン先生は「掃除を忘れちゃいけないよ」と容赦ないし、見終わってみたらひたすらチュービーが泣きっ面に蜂を食らい続けるかわいそうな動画だった気がするぞ!!


ふしぎコレクション「校庭の地上絵」

今夜のふしぎはチュービーじゃ!

「キバのないドラキュラなんて、怖くもフシギでもないよ!」

チュービーは第1話のナメクジからずいぶん画力向上したよね……。ドラキュラの絵を描いて貧血(貧絵の具…?)になるチュービー、体調にやや難ありなところも不憫っぽい。


アイキャッチ:B

いかにも小学生が使うような何の変哲もない青い傘。よく見ると手前の骨が一本折れていて、ボロ傘……!


<まえつぎ>