#11 ふしぎ機関車

この回、ノイジーが実況しまくってるなーというくらいで、どちらかというと印象の薄いエピソードではある。ジーニーの「本が抜けると全部忘れちゃう」という要素が強調されていて、キャラクター導入編という趣もあります。


第11話「ふしぎ機関車」

(脚本:山野辺一記、絵コンテ:西川伸司)


"HISTORY OF MIDNIGHT HORROR SCHOOL"という気になるタイトルの本。M、H、Sの文字を重ねた校章のようなマークがポップな校舎に不似合いなくらい……なんですが、別に読むわけじゃなくてドミノにされてるだけ。「お見事です」とヤムヤムの手を握るウソップの顔に、「今度はもーっとたくさん倒すんだー!」と振り上げた親分の手が直撃する。不憫。

本を何段にも重ねたりして、かなり手の込んだドミノで遊んでいた極悪トリオだったが、ヤムヤムとチュービーがケンカを始めてしまった。ウソップと違ってチュービーは親分にもカジュアルに反抗するのだ。

ウソップの心配もよそに本の引っ張り合いになり、ページが一枚破れてしまう。切れ端を本棚の下に隠して逃げる3人。「親分、授業が始まりますよ」と進言しつつ、その親分に置いていかれるウソップ。不憫。


「フシギというものを単に驚かせるだけのものだと考えてはいけません。……驚かせるだけだと人はすぐに忘れてしまうからです。君たちはいつまでも記憶に残るようなフシギを目指すべきなのです」

ホラースクールでは根底に「記録よりも記憶に残す」というテーマが一貫してあると思うんですが、人々の記憶から忘れ去られたものたちだからこそ、忘れられない不思議として記憶に残ることに何よりも重きを置いているんだよね。

「それに、先生のような大人はちょっとやそっとじゃ驚……」

サラマン先生の話もよそに背後をちらちら気にする生徒たち……と、突然リディーのロッカーから機関車が飛び出してきた! 教室は煙でいっぱい。机の上に逃げたドッキーは帽子の有効活用。

「先生、大人は驚かないんじゃないの?」

「たまに例外もあります……」

ヒッキーが皮肉っぽい表情から機関車に目を輝かせる少年の顔に変わるのがたまらねえ。顎が外れたままのサラマン先生を残して、教室の壁をすり抜けて行った機関車を追いかけ、ヒッキーとスピモンは教室を飛び出してしまう。


消えた機関車、今度はカフェテリアに現れる。機関車の発する謎ビームで連結させられてしまうベンダーマシンたち、またかわいそうな目に遭ってる……これ見てて気付いたけど、ジュースサーバーは頭に"THUNDER"とか"RAINBOW"とか書いてるんですね。ソーダの種類!

ちゃんと実況中継用にノイジーを連れてきたヒッキーとスピモン。個人的な話をすると、MHSを見始めて2週目がこの回だったので、初見時はリディーとノイジーの区別がついていませんでした。


ロッカーの宝物を心配して移動中のゾビーだったが、残念ながらバッタリ機関車に遭遇。機関車はベンダーマシンを解放すると、今度はゾビーのガラクタを連結し始める。怯えたように列をなして逃げていくベンダーマシンたち。ゾビーはコレクションを奪われると血相を変え、必死でガラクタにしがみつこうとする。

「また犠牲者が出ました、今度はゾビーです!……ていうか手を離せばいいじゃない」

「離せないゾビー!!」

機関車はゾビーごと水飲み場の中へと消えたかと思うと、今度は噴水の中から出現。鳥かごの中で居眠りをしているふくろうじいさんが異変に気づいて騒ぎ出す。ここだけだとセリフもないし、ただの飼い鳥っぽく見えるなあ。

機関車を止めるためにエディが立ち上がるも、それすら押し負けて飛ばされてしまった。


「エディが負けちゃうなんて……」

教室から眺めていたヒッキーのところへジーニーがやってくる。わざわざ2階のよそのクラスまで相談しに来るあたり、ヒッキー信頼されてんなあ。「えっへん! 確か図書室で…」と威張った途端、何もない場所で勝手に倒れるジーニー!!

「あの……今まで何を話してましたっけ……?」

「本が抜けると全部忘れちゃうんだから……」

キャラ設定の紹介、大事ね。

機関車はゾビーのコレクションを諦めたかと思うと、今度はひっくり返ったエディの頭を引きずり始める。胴体から引き離される頭蓋骨が痛々しい……。


さてここでしばらくジーニーの百面相をお楽しみください。

『格闘技入門書 拳龍』でカンフーの使い手になり……

『動物図鑑』でライオンになり……

『不思議乗物図鑑』の本を頭に入れた途端、メガネの裏からボタボタと大粒の涙が。

暴走する機関車はこの本から出てきたものだったのだ。ページを破られ離れ離れになった貨車を探しているらしい。

ジーニーは機関車と話をしてみると言い、「その間にヒッキーは破れたページを探してください!」……と言われたものの、当てもなければ探しようがない。「どこにあるんだよお……」何回も言うようだけど、ヒッキーがぞんざいな口調になる瞬間ってめっちゃときめくんだ。黙っていれば分からないのに、ヤムヤムはつい様子見に来てしまうのよね。

「知らねったら知らねえよぉ……ほけ、ほけ……」

隠し事がド下手なヤムヤムに対して、策士ヒッキーは頭脳戦が得意なのだ。

「あの機関車はね、多分ページを破ったやつを探してるんだよ。……誰も知らない遠くに引っ張っていくんだ。そうに違いない!」

後ずさりするヤムヤムをひょいとよける本棚がカワイイ。本棚も足があるから机みたいに歩けるんですね。おかげで破れたページを発見。壁にバナナ汁がべったりついちゃってるんですけど、まあそれはそのまま放置ということで。


機関車はとうとう目を真っ赤にして怒り始めた。「あのまま突っ込んできたら校舎がバラバラにされてしまうぞ!」ジーニーの必死の説得が始まる。

「私は君を本で読んで知っています! 昔はとっても元気に貨車を引いて走っていた、その姿はとても美しかったと思います。それが、貨車と引き離されて悲しいことは分かります。すぐに貨車を見つけてあげますから、もう暴れるのはやめてくださーい!!」

すんでのところでヒッキーが駆けつける。破れたページをテープで貼り合わせ元通りにした瞬間、貨車が現れ、機関車は消えていった。


整理してみると、今回の騒動を起こしたのは機関車のというより本のゴーストだったんじゃないかなあ。機関車自体が昼間の世界のどこかでフシギとして存在している(あるいは、存在していた)ものなのかは分かりませんが、破れたページを直したら機関車が消えたということは、本の方に魂(的なもの)が宿っていたと考えた方が自然だし。本に書かれたものだったからこそジーニーがあそこまで機関車にシンパシー感じられたんじゃないかな、とも思うし。

ジーニーの必死の呼びかけに機関車が応えたわけではなくて、物理的に本を補修したから戻ったというのが話の作りとしてクールだと思いますが、それでも物言わぬ機関車の気持ちに立って説得しようとしてみる熱心さがジーニーの魅力なんですね。ボケた秀才であるという以上にめっちゃ「いいやつ」なんだよなあジーニー!


ふしぎコレクション「深夜の廊下を走る機関車」

今夜のふしぎは機関車じゃ!

図鑑の中の機関車も校長にジャッジされるぞ。計画性のないフシギなどフシギじゃないぞー!


アイキャッチ:F

>>つぎ<<


<まえつぎ>