星くずぼうやのぼうけんりょこう

いわたなおみの絵本シリーズ。角川書店から2冊出ている。

星なのに自分で光ることのできないトゥインクルが、光を手に入れるために、7つの星のかけらを探して地上へ旅に出るお話。

トゥインクルは友達もなくどこか寂しそうな子供なんですが、いざ地上に降りたとなると勝手に人の車乗り回して事故ってみたり、お菓子食べたさに危険な森の中に入ってみたり、けっこう調子のいいところがあって、そういう欲望に忠実なところ本当〜に好きだなと思いました。決して立派なよい子の物語じゃないところがいいんだよね……


星くずぼうやのぼうけんりょこう ピーナッツ大せんそう(1993年)

ネズミたちの暮らすピーナッツの村へやってきたトゥインクル。ギョロッとした目のネズミは体中表情豊かで一匹一匹見てるだけで楽しい。

青ネズミと赤ネズミはピーナッツをめぐって争いを始めてしまうのだが、そこへネコが現れて……。ネズミVSネコという関係、好きなモチーフなのかなあと思いますが、ここではGHSと視点が逆転してるのよね。

例によって年配キャラが良い味出してて、「知恵の金貨」から出てきたばあさんと、青ネズミの長老チューネリアス、あと多分赤ネズミの長老らしきキャラクターがいるんですが、みんな仲良さそうでかわいい。あと、何はともあれ赤青ボーダーですよ、赤青ボーダー。

なんやかんやあって一つ目の星のかけらを手に入れ、トゥインクルの旅は続く。


トゥインクルと森のまおう 星くずぼうやのぼうけんりょこう(1994年)

ドラゴンを乗りこなす妖精たちと、森に一人で住む魔王のお話。この魔王というのがピンクのスーツの似合う紳士なんですけど、知的で物静かで影があってめちゃくちゃ素敵な方なんですよーもう!!

魔王の家には雪とか虹とかつむじ風とかいろんなエッセンスの瓶が並べてあって、毒のエッセンスの瓶はヒッキーの椅子みたいな顔をしてました。

夢のエッセンスで現れたトゥインクルの夢は、光り輝く星になること。一方、トゥインクルが覗き見た魔王の夢は……。

なんやかんやあって二つ目の星のかけらを手に入れ、再び旅立つところで物語はおしまい。

いわたなおみのカラーインク・テクニック 一冊の絵本ができるまで。

(『マーカー&カラーインク・スタイルブック』美術手帖1994年9月号増刊)


こちらは雑誌記事。8ページにわたってトゥインクルの絵本の制作過程が紹介されていました。

絵本の絵は全て原寸大で描かれているとのこと。まずは下書きをして、それを色鉛筆でトレース、ドクターマーチンのカラーインクで色を置き、色鉛筆を重ねて風合いを出して完成……と文字で書けば簡単なんですが、実際の作業途中の絵を見ると「プロは絵が上手い……」としか言えなくなってしまう。円も直線も完全にフリーハンドっていうんですよ、表紙の三日月の丸さも!!

もともと前作『B級天使』は、エルジェの『タンタン』シリーズが好きだったことからあのようなコミックテイストになったとのことで、確かにこの時期の絵本とか記事で紹介されているラフなんかを見ると、アメコミ・カートゥーン調というよりはヨーロッパ的なバンドデシネを思い起こさせる雰囲気なのですよね。

このトゥインクルのラフ画も実際の絵本とはだいぶタッチが異なっていて、引き出しの広さに感嘆させられるばかりでした。


おまけ・MHSの美術室に置いてあるものの正体

『極悪メンバー大募集』『秘密のキッチン』あたりの回で確認できますが、MHSの美術室の棚にこんなものが置いてあります

紙粘土にニスを塗った工作のようなもので、SPHLYの分があることまでは分かるんですが、一番左の星のやつだけが明らかにMHSのキャラクターではなく謎の存在でした。これ、他でもないトゥインクルじゃん!! 十数年見てきて初めて気がついたわ。

ちなみに美術室には他にも『ペコラ』に出てきたお面と同じものが飾ってあったりなど、けっこう原作者ネタが仕込まれてたみたいで、掘れば掘るほど止まらないぞミッドナイトホラースクール……