#47 コリアラロデオ

第47話「コリアラロデオ」

(脚本:後藤みどり、絵コンテ:西川伸司)


舞台は鉛筆レース開催で大にぎわいの図書室です。

R「誰が勝つと思う?」

O「ヒッキーじゃない?」

あれはまあ、本人が鉛筆だしな。

「先頭は8連覇を狙うヒッキー選手の鉛筆。続いてヤムヤム選手の鉛筆、今回も2着となってしまうのか?」

「うるせえ! 今回もは余計だ!」

今までは鉛筆といえばみんな同じ白い骨のやつでしたが、今回コースに並んだ鉛筆はそれぞれ個性豊かでかわいいのだ。エントリーしている6本は、おなじみ赤の方がちょっと少ない赤青鉛筆、控えめなステータスの水玉模様の鉛筆、パワータイプの花柄鉛筆、おしゃれ重視のカボチャ柄鉛筆、意外と能力のバランスがいい金属製鉛筆、そして極端にグラフの偏ったバナナ色鉛筆。

ヤムヤムが呼ばれたときウソップの「おやぶーん!」がちゃんと入っているのがいとおしい。時計係クイッキーは誰に手を振っているのだろう、赤く光るワットの頭をカボが青に取り替えて、鉛筆たちは一斉にスタート! ウィリアム・テル序曲をBGMに尺取り虫のように進んでいく。


ハードル、本の壁、頭蓋骨、水を張った皿、本の山、本のトンネル、と障害物を乗り越えてコースを一周するレースです。最初に頭一つ出たのはヒッキーの鉛筆。カボの鉛筆は初っ端からつまづいてしまう。

「練習の成果を見せてやれマグー!」と磁力で飛んでいったマグネロの鉛筆は、まっすぐ本に激突して『楽しいサンバ入門』の下敷きになってしまった。後ろでフォントンが飛び跳ねていたり、ビンセントが口元押さえて息を飲んだり、観客も白熱なのだ。

難関のドクロジャンプはさすがのヒッキーも一度では飛び越せない。チャップスの鉛筆はスプーンで引っかかり、ジュノが「お先に~」と追い越していく。

ヤムヤムは並走しながら「負けたら鉛筆削りでお尻から削っちまうからな~!」とバナナ汁をまき散らしてハッスル。隣を気にして横を向く鉛筆に、ヒッキーは「自分の力を信じて!」と励ましの声をかける……


と、とにかく大騒ぎの図書室で、喧噪から離れて本を読んでいるのが2人。ドッキー、ちゃんと読書なんかする人なんですね。己の肉体の速さが問われるわけでなければレースにもまるで興味なしなのか、「おちおち本も読んじゃいられないぜ」と読んでいたRODEO DRIVEの本を閉じ、図書室を出て行ってしまった。

一方、このうるささに我慢ならないのがジーニーです。だがいくら声を張り上げてもレースに夢中の生徒たち、誰も注意なんか聞いちゃいない。

「1着はヒッキー選手の鉛筆! 芯先1ミリの差でヤムヤム選手はまたもや2着です!」

リディーに賞賛されるヒッキーを見て、さらに別のところに火がついてしまった。うらやましい……!! こうなったらもう図書室で騒ごうが静かだろうが問題じゃありません。コリアラの木の「優れた素質」っていうよくわからん説明の濁し方がなんか好き。

「ヒッキー、浮かれていられるのも今のうちですよ……! コリアラの木で作った鉛筆があれば、優勝は私のものです!!」

宣言通り鉛筆をお尻から鉛筆削りに突っ込んでいたヤムヤムは、これを聞いて何やらまた悪巧みの顔をするのであった。


「鉛筆の長さほどの枝をポキリと頂ければよいのです。動かないでくださいよお……」

ジーニーが手を伸ばすのに合わせてヒョコヒョコと逃げる枝……の2本ほど先で、やはり同じことをしているヤムヤム。枝は激しい勢いで手を振りほどき、「木のくせに生意気だなあ!」と怒ったヤムヤムとコリアラの木との格闘が始まった。ジーニーも木によじ登って枝に手をのばしていたが、そこへヤムヤムの乗った木が走ってきて、枝でピシリ! 木は身震いして暴れ馬のように動き始める。

噴水の縁で本の続きを読んでいたドッキーは、2人のピンチを見て「やばいな…!」とつぶやくと、どこからともなく取り出したテンガロンハットをかぶり、その辺を歩いていたコリアラの木に飛び乗った。気分作りのためだけに帽子を取り替えるドッキーが見られるのはここだけですよ!! これがまた、自分の読書を放り出して人助けに走るというヒーロー役だしな。


ひとり図書館を片付けながらレースの余韻冷めやらぬノイジーは、校庭の騒ぎに気付いて大興奮。カフェテリアでテンション高く語らっているMCJやヒッキーたちも、放送を聞いて野次馬に駆けつける。

3人の乗ったコリアラの木はどうやら木同士でケンカしているようだ。しがみつくだけで精一杯のジーニーをなんとか助けようと、「ドッキー一人じゃ無理だ、僕も行く!」とーも一も二もなく木に飛び乗るヒッキーだったが……

「俺たちもヤバくなってきたぜ……!」

「ミイラ取りがミイラに!」

このピンチってときに「こうなったら勝負だ!」もないってものですが、それでみんな乗り気になっちゃうあたり、ほんっとイベント大好き学校だよなー!!

「よーし、コリアラロデオのスタートだ!」


ドッキーは衣装まで決めているだけあってさすがの枝さばき。根性だけは誰にも負けないヤムヤム。「意外とやる」なジーニー。まあこのへんの詳しい勝負の行方は映像に譲るとして、ノリノリの実況はおなじみノイジーがお送りしております。

4者ともそれなりに健闘していたのだが、コリアラの木は幹を上下させたかと思うと、とうとうジーニーを天高く放り上げてしまった。界隈では有名な話(?)ですが、ここで1カットだけドッキーの帽子がいつものに戻っているミスあり。残りの3人も次々と満月に向かって放り出されてしまう。


……さっきまで落ちたら大怪我って言ってた割に、イテッで済んで本当に良かったよ。ヒッキー、ドッキー、ついでヤムヤムが地面に落ち、その上に最後に着地したのは……

「第1回、コリアラロデオ、優勝は……ジーニー!!」

ドッキー、とりあえず最後に「いい勝負だったぜ」って言わせとけば丸く収まるみたいになってる節あると思います。ジーニーは勝ったとはいえあまりかっこよくはなかった気がするが、ともかくリディーちゃんに手を握られ褒められて、当初の目的を達成できて「それはどうも、おほほほほ…」とテレテレなのでした。一方ヤムヤムはまた2着。

「親分もそれなりにかっこよかったズラ」

「それなりは余計だ!!」


いつから見ていたのか先生たち3人が出てきて、コリアラロデオ禁止令が下されてしまった。「だとすると、優勝者は私だけなわけですね!」とまんざらでもないジーニーを見て、さりげなく興味なさげに去っていくドッキー。

「でも今度の鉛筆レースの優勝は俺様がもらうぜ!」

「鉛筆レースも禁止に決まりました。……オッホン! 最近皆さんの鉛筆たちが疲れて授業中に居眠りをするようになりました。鉛筆が寝てしまうと皆さんができなくなることがありますよね?」

「ノートが取れなくなります……」

「遊びも大切だが、勉強も同じくらい大切だってみんな分かりますよね」

勉強の方がより大切、とは言い切らず遊びの大切さを認めてくれる先生たち大好き……そう、遊ぶことは大切なことなのだ! だけど子供ってなぜか危ないことが楽しいんだよね。だからどこかでルールを決めて、決まりの中で楽しまなきゃいけないのだ……それがゲームやスポーツというものなのですね。

校長先生とも相談した結果、毎週金曜の放課後に限り鉛筆レースは許可されることとなった。図書室の使い方がひどい件についてもきっと折り合いをつけてくれたことなのでしょう。妙に感動的な盛り上がりをもって今宵は閉幕。美しい朝焼けの校庭に帰っていくコリアラの木も、肩(?)を組み合ってすっかり仲良くなったようでした。


ふしぎコレクション「レース前日」

今夜のふしぎは鉛筆レースじゃ!

「俺様の汁で他の鉛筆は滑って転んでしまうのだ。これで今回のレースは俺様の優勝間違いなし! ぐふ!」

こないだの階段手すり滑りと同じことやってんな……。ちなみに鉛筆レース会場、ゴールにはスピモンのカメラが置いてあるのね。


アイキャッチ:X

左に出ていって右から戻ってくるぞ

エックス、プロフィールにド直球で友達いないって書かれちゃってる……!


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