#6 激走!机レース

しっとりセンチメンタルだった前回から一変、今度は汗と火花の散る勝負の世界。机までもが意志を持つこの学校で、ピラニンとピラニンの机の並ならぬ因縁が今明らかに……(?)


第6話「激走!机レース」

(脚本:荒島晃宏、絵コンテ:なかの★陽)


お墓で怪しげに笑うユルマキ草。校長先生は本編中の登場人物としては初めて出てきたことになるのかな。

「かわいい私の生徒たちよ、今日はみんなが以前からやりたがっていた机レースを特別に許可するぞ」

校長先生杯争奪机レースグランプリ、いつもの階段手すり滑りなどより大規模な行事らしく、優勝者にはなんと校長先生が何でも願い事を叶えてくれるご褒美まであるという。顔を見合わせるBZの向こうで、ぐっと拳を握るヒッキーと、視線を交わすドッキー。目だけで語り合う2人は好敵手なのだ。


早速ヒッキーたちは廊下で練習開始。床の『GOAL♡』はリディーが書いたのかな、かわいいな。机が言うことを聞かないスピモンに「でもいいダッシュだったよ」とアドバイスするヒッキーはさすがの余裕です。

と、そこへ気だるい拍手の音が。ドッキー、階段の手すりから高みの見物である。

「前回チャンピオンの君には負けないよ!」

「フフッ、お前の腕前じゃいいとこ2着さ」

またまたこれはこれは、自分が勝つと宣戦布告はしておきつつ、2着になれるだけの実力は認めつつ、しかし練習風景を偵察したり口出ししたりせずにはいられないという複雑なライバル心ですね。

ふっかけられているのはヒッキーなのに、律儀にドッキーに言い返すリディー。残念ながら当のドッキーはレースに出ない相手は全く眼中にないのだ。「放課後が楽しみだぜ」と言い残し、颯爽と手すりを滑り去……るはずが、ハエに邪魔され頭から落っこちてしまった。歩き方がぎこちなくなるほどのケガってちょっとヤバくないか!


ところでヒッキーさっき「僕らで1、2、3位を独占」って言ったけど……ピラニンなど最初から練習にいません!!

これが机を乗りこなすどころか机の方が持ち主をナメきっていて、乗り手のいない他の机たちの方がむしろ俊敏に避けてくれるレベル。本人も最初から諦めモード全開で、ピラニンの机はバカにしきった様子でケタケタと笑うばかり。

「自分の机で走らないと失格だし……とにかく、机を飼いならすんだ!」

ヒッキーにはピラニンが出場しないという選択肢は最初からないようで、まずは自分がお手本を見せようと意欲満々。が、そこにもオイルスプレーの罠が!


「本日放課後に行われる机レースの優勝候補、ヒッキーが棄権しました!……机の足を骨折したためで、机は全治一昼夜と思われます」

机さん松葉杖ついてるよ!!

ニュースの流れるカフェテリアで(でっかいケーキを食べてるチャップス)、極悪トリオが追い打ちをかける。ワットは驚いて一瞬首が飛び上がってる!

「アチョーーーズラ! 机レースは危ないズラ、出ない方がいいズラ!」

絵の具を振り回すチュービーに絡まれて、同じ声のアンプー、バチバチいいながら倒れてしまう。ベンダーマシンさんは完全にとばっちりです。かわいそうに。

電撃を浴びて暴走するベンダーマシンを見て、グッドアイデアを思いついた参謀ウソップは「あのスピードをネ!」とヒソヒソ。基本的にレースと名がつけばロクなことをしない極悪トリオですが(そりゃもちろん対比的にカッコよく見せたいスピードスターがいるからね)、今回も既にケガさせたり破壊したりさんざんの暴れっぷりだ。


さあ放課後です。開幕の花火はMHSらしいドクロマーク形。2階廊下のスタート位置に並んだのは、さっきのチュービーの脅しが効いたのか、スピモン、ピラニン、ヤムヤムの3人だけ。ドッキーは棄権だろうとせせら笑うヤムヤムに、クイッキーが激しい怒りの視線を送る。とそこへ現れたノイジー、

「やっぱりここにいた! あんたは放送係でしょ!」

「やだモンレースに出るモン!」

「じゃあここで放送しましょ」

いきなり音量を最大にされ、スピモン、突然の死。気絶したスピモンをそのまま引きずっていくノイジーは本当にニュースのことしか考えてないって感じで恐ろしいものがある。しかしこれで困るのはピラニンです。

「ええ、ヤムヤムだけ!?」

「もう一人いるぜ!」

キャーーーアニキーーー!!建物の中なのにうっすら土煙まで上がる演出は格好良すぎるでしょ……BGMもなんかキマってるし……。

ドッキーは戦う相手がいれば対抗意識は燃やすけど、別に誰かと戦いたくてレースに出ているわけではないので、ヒッキーが出ないなら出ないでそれは一向に構わないんだよね。駆け寄ってきたクイッキーをも飛び越え、腕のケガも「心配するな」とヤムヤムたちに見せつけるように言ってのけるのである。右腕、骨、折っちゃったんですかね。骨。……クイッキーすら怪我を知らなかったということは、誰が腕の手当てしてくれたの?


ともかく3選手が出そろいました。こうなると当然ヒッキーもリディーもピラニンを応援するわけで、リディーちゃんの声援を受けたピラニンはへらへらと手を振り返す。ヤムヤムの「(こいつ……なんてうらやましい……)」がマジでうらやましそうで、試合前から勝負には負けている感すらあります。

ジュノのフラッグで一斉にスタートーーー!

……と思いきやピラニンが出遅れた。のたのたと柱に小便(!?)をひっかける机に、ピラニンも「まただよ……」と低い声。

一方ドッキーは難関の階段コースも机の片足で手すりに乗り、あっという間に滑り降りてしまった。スピードはバランスが大事っておっしゃってましたもんね。手すり滑りチャンピオンの机はやはり手すり滑りがうまい! 一段ずつちまちま歩いて降りるヤムヤムは当然大差をつけられます。はしゃぐクイッキーの隣で悔しさをあらわにするウソップ。

けしかけられたハエ軍団に二度もやられるドッキーではなかったが、レースのお約束・嘘のコース標示には引っかかってしまう。スロット扉も操作できる賢いハエ軍団。扉をくぐってからスロットを回しても行き先決められるのね。普通カフェテリアにはエレベーターで降りるので、スロット扉から行くとその辺の空間に穴が空くらしい。出迎える看板『コースアウト Bee-』と舌を出すヤムヤムの顔がめっちゃ腹立たしくて最高である。

そうこうしているうち、ピラニンは階段を転げ落ちるという荒技で一瞬にしてヤムヤムを追い抜いてしまった。ずっと地道に歩いていたヤムヤムの呆気にとられた顔!


さあ、最初に校舎から出てくるのはドッキーか、ヤムヤムか?

……ピラニンだーーー!!

焦ったヤムヤムは「奥の手」を発動。机の前足をポロッと外したかと思うと、代わりにアンプーの電力でパワーアップしたベンダーマシンの足と合体し、猛スピードで飛び出していった。階段下に縛り付けられたチキンのベンダーマシンの赤く光る目が恐ろしい……。ウソップはハンカチ振って「頑張って~」かわいいかよ!

ルーアがゆっくり引き上げるエレベーターで、ドッキーもようやくコースに戻ってくる。

が、ピラニンはコースを大きく逸れて噴水に転落。ノリノリで放送係しているスピモン、これにはさすがにあちゃー!な表情。ピラニンってばレース中だろうとなんだろうと水浴び大好きだし楽しむ気満々だし。


墓場エリアに入ったドッキーは、ヤムヤムの机の足の異変に気付く。むしろ、特別チューンナップのヤムヤムと互角の勝負ができるドッキーの実力がすごいという話かもしれない。と突然、猛スピードのピラニンが乱入!!

そのままコースは障害物だらけの危険なコリアラの林エリアへ。コリアラの木、ピラニンの机はヒョイとよけるのにヤムヤムにはそのまま激突してくれるファインプレーです。吹っ飛ばされて机の下敷きになるヤムヤム。駆け寄ったウソップが引っ張るあまり、ヤムヤムの顔、ものすごいのびまくってるんですけど。

「ヤムヤム選手クラーッシュ! バナナの中身が飛び出したー!」

「「親分!」」

「その中身を……ジョニークロウが持ち去ったー!!」

「「おやぶーん!!」」

つまづく親分と折り重なって倒れる子分たちの手前で、どこへともなく駆けていくベンダーマシンの足。この流れテンポ良すぎて最高だ。


最終コーナーを抜けた2人はエディーのあばらのトンネルへ。ピラニンは机にしがみつくのもやっとの様子で、風圧で耳が伸びるほど。直線コースのスピード勝負ではドッキーが有利かと思われたが、ここで一瞬の右腕の痛みが命取りになった……!

チェッカーフラッグ! ゴールでカメラマンまでこなすスピモンはもはや放送係として十二分の働きぶりです。ポラロイドカメラから出てきた写真を見ると……足の先ほどの差で、優勝はなんと、ピラニン!!

つめかける生徒たち。ワットくんも光りながら祝福してくれてます。一瞬ちょっと悔しそうに帽子を引くドッキーだったが、それもほんの一瞬だけ。机から降りていたわるように机をなでると、その声には一片の悔しさも感じさせないのだった。

「腕さえ怪我してなけりゃアニキの勝ちだっただぎゃー!」

「フッ、俺の負けさ」

そしてピラニンに歩み寄り、

「良いレースだったぜ」

と左手で握手を求めるドッキー。イケメンすぎる……。しかし、イケメンのドッキーより何より無欲なピラニンがかわいいのです。校長先生に申し出た願い事は、一日一回机に水浴びさせること。

「あの机、ぼくに似て水浴びが好きなの。さっき走ってもらう代わりに約束したの……水浴びさせるって……」


というわけで、極悪トリオの悪どさとそれに対するしっぺ返し、クールなカタキ役のドッキー、そして優しいピラニンが人徳(?)で得る勝利、という王道な配置が光るバツグンの娯楽編でした。水浴びのためならスピードスターをも超える机のポテンシャルが計り知れない。

ところで、ドッキーはただレースに勝ちたいだけで願い事に興味があったわけではないのだろうだけど、ヤムヤムは勝ったら何をお願いするつもりだったのだろうか。リディーちゃんとラブラブ、とか言われても校長先生に叶えられたのか……?


ふしぎコレクション「深夜に行進する机」

今日のふしぎは机じゃ!

「みんな、机をもっと飼いならすこと!」


次回予告

「やあ、あたいジュノだよ。いつも仲良しのリディーとオンプーが喧嘩しちゃったんだ。なんとか仲直りさせたいんだけど……」

「見なきゃあたいのお花が噛みついちゃうよ!」

来週もまだまだ続くジュノさんかっこいいシリーズ。


<まえつぎ>