#4 泣き虫ロッソ

ボロッカもよく泣く子でしたが、ロッソも泣き虫の甘えん坊。ボロッカは感情の高ぶりが即涙腺にきちゃうというか、繊細さや不安定さで泣く子だったのに対して、ロッソはいじめられて「泣かされる」弱さの涙という印象。そんなロッソだからこそ、守られる側ではなく守る側になれたとき、本物のフシギに一歩近づくのだ。


第4話「 泣き虫ロッソ」

(脚本:山名宏和、絵コンテ:平田敏夫)


ジーニーの「ジュースカクテルブック」が今回のキーアイテム(?)。要所要所で挟まるジーニーのボケっぷりがテンポ良く笑えて、話を明るくしてくれるところがいい。さっそく溶岩コーヒーと稲妻ソーダを混ぜると、それはそれはおいしいジュースが……

「アチチアチチです!」

……できませんでした。先週は水浸し、今週は頭が火事と災難続きのジーニー。記憶が心配になるレベルで本が燃えてますが、まあジーニーなので大丈夫でしょう。

リディーはスピモンになんとかしろと無茶を言いますが、スピモンの方もリディーを勝負の景品として売った前科があるので、この2人はお互い様。目に留まったのは一人でジュースを飲んでいるロッソ。この緊急事態にも背中を押されてやっとトボトボ歩いてくるあたり、いかにも引っ込み思案なのがよく分かる。

「噴水シャワー……!」

ああ~……。

ところで、なぜかジーニーに追いかけられたりそのまま一緒に吹き飛ばされたりしているピラニン、ロッソとのダブルキャストです。

と、そこへ消火栓を持ってくるヒッキー。……消火栓って持ち運べるものなの?? それが分かったらフシギじゃないマグ?? ともあれ、火事への対応としては模範解答。無事に火は消えたものの、ジーニーは本がコゲコゲ。ずり落ちた眼鏡からつぶらな瞳が覗いている。

どこからともなくスピモンが持ってきた本は『楽しいサンバ入門』。サンバって言ってソンブレロにマラカスなのは、ブラジルとメキシコをごっちゃにしていて雑だなーと思うんですけれども。

「アミーゴアミーゴ! 一緒に踊ろうぜー↑」

こんなんだから「そろいもそろって間抜けな連中だぜ」ってヤムヤムの意見が正論にしか聞こえなくて困る。

「消火栓のくせして火事の時に水が出せないなんてなー」

「水は出ないけど涙は出るズラか~?」

「それじゃマッチの火しか消せないけどなあ!」

こんなときばかりキレのいい極悪トリオの嫌味に、ロッソは号泣して走り去ったかと思いきや、戻ってきて消火栓を抱え周囲を一睨み、そしてまた勢いよく水を噴き出しながら行ってしまった。

「あいつがしっかりしないからジーニーが危なかったんだぜ……」

「ヤムヤムってサイテー!」

リディーちゃんは論の正当性を問わずヤムヤムを全面否定する方針のようです。露骨に嫉妬してみせるヤムヤムも相当かわいいんですが。

「な~んだよう! ロッソの味方ばっかりしちゃってさ!」

「だってぇ、ロッソってなんかかわいいんだもん。だから心配してあげたくなっちゃうの」

分かる、超分かるけど!! ショックを受ける飼い主の心境を察してか、息も絶え絶えのハエ軍団。興奮のあまり悪臭を放つヤムヤム。


「ジーニーの頭が火事だったのにね、ぼくお水が出せなかったの……おこってるかなジーニー……」

パパに寄りすがって一人涙を流すロッソ。ここで突然出てくるパパとは何ぞや?という話、公式キャラクター紹介を読むまで私もよく分かってなかったんですが、校舎に設置されている消火栓を父親だと思い込んで慕っている、ということだそうで。親だと思い込むって状況が謎なんですが、そもそもMHSの生徒に血縁の概念はあるのか……この話はカボの時までとっておくことにする。しかし、この手のキャラクターでマザコンではなくファザコンというのは珍しいような。イワタキャラ世界自体に「母」表象が希薄な気がするので、特に意味はないのかもしれませんが。


泣きながらいつの間にか寝ていたロッソを起こしたのは、

「あ、おはよう……」

「よくこんなところで寝られるわね。ま、あんたにとっちゃ大好きなパパのそばなんだもんね」

我らが姉御ジュノさんであった。この言い方、ロッソに半ば呆れてはいるのかもしれないけど、それも全部分かった上で受け入れる懐の広さが感じられて頼もしい。

「それよりお水ちょうだい……さすがのアタイも乾きだけはダメだわ」

このへんに至ってはちょっと色っぽさすらある。


ジーニーが稲妻ソーダと水晶ネクターでカクテルではなくドクロ雲を作っていたころ、ロッソはジュノに事の顛末を打ち明けていた。

「こうやってアタイに水くれるときは全然大丈夫なのにねえ……ひょっとしてアタイのこと好きなの?」

「ええええ!!///」

「冗談よ」

そして「あのね、みんなのまえだとドキドキしちゃうの……」はね、こういうのをね、あざといって言うんだろうかね。自分のことジュノさんっていうジュノさんが本当に頼もしい。

「よし、このジュノさんが何とかしてあげようじゃないの!」


ヒッキーたちにロッソの特訓の協力を要請するジュノだったが、スピモンは「面倒だモン…」と、やはり大人しい子には興味なさげ。そう言われた直後ロッソがジュノの後ろにいそいそと隠れるのがつらい。やる気満々のリディーとヒッキーに睨まれ、スピモンは後ろ歩きで渋々手を重ねるが、その間もロッソはやはりジュノの後ろで小さくなっているばかり。

あれ、ピラニンは?……と思ったら一人でジーニーの実験に目を輝かせていました。ちょっと、ジュースで机溶けたんですけど!!


「ロッソのやつばっかりかわいがられやがって……!」

と相変わらず嫉妬に燃えるヤムヤムのサンドバッグになるため、器用にロッソ形になるハエ軍団がけなげです。


いちいち身軽なスピモンはエレベーターから降りるときもわざわざ扉を飛び越えていくのだが、ここでそれ以上に素早い動きを見せたのはロッソだった。パパ、極悪トリオに誘拐される事件である。

「どうせここで消火栓を取り返してもまたヤムヤムたちに他のいたずらをされるだけよ。それよりロッソ、早く水を出せるようになって奴らを見返してやりましょ!」

ジュノさんなかなか好戦的です。正義感は強いけどパパのことはきっぱり消火栓としか呼ばなかったり、どこかドライでトゲのある雰囲気なのも、次回への前振り……と思うと楽しい気がする。


特訓と称してジュノ風メイクを施したヒッキーたちですが……「これ、無理あるんじゃない…?」言わなくても分かることを言ってくれるのがピラニンなのだよな。ジュノも大概パワータイプである。

「どうしたらみんなにみられてもドキドキしないようになるかな……」

ロッソのセリフはいちいち平仮名で書きたくなるな。リディーは人前で演奏するときはみんなカボチャだと思うようにしているというが、こんな図太そうに見えても一応緊張とかするのか。


ということで今度は「題してカボチャ作戦」。カボチャをかぶってもつり目のリディー、たれ目のピラニン、横に長いヒッキー、と特徴が一目で分かる。ヒッキーが「やってみろよ」とちょっとぞんざいな口調で話しててグッとくるんだよね。

なぜかカボも紛れ込んでいました。スピモンの「あれー、カボだったモン」がいかにも何も考えてなさそうな声ですが、無言で走り去ってしまうカボも何を考えてるんだか分かりません。ともかく、

「ほら。特訓してもすぐには無理なんだモン!」

「はあ……苦手なものは苦手だからね……」

消極的なスピモンとピラニンを人喰い花で威嚇するジュノさん、とそこへ極悪トリオが尻から階段手すりすべりで現れた。

「何万年かかるズラか!」

「できるわよ!!」

できたはできたが、関係ないものができた。

「できました、できました!!」

「今はそういう雰囲気じゃないよ!」

ほら~ピラニン空気読むときは読めるんじゃん!! しかしソーダは振っちゃダメとピラニンが言うのも間に合わず、ジーニーの振ってしまった瓶からホールに火の玉が降り注ぐ。流星ソーダ、危険な飲み物すぎる……。

一瞬で火の手は広がり、スピモンはハウリングを起こして気絶、ロッソは突然の火事に硬直してしまい、何よりピンチなのはお花が火に弱いジュノさんです。ここでロッソの本気を引き出すのがヒッキーの言葉、というのが主人公の風格である。

「ジュノはいつだって君のことを信じてくれただろ!」

ジュノのためなら、ロッソはその一歩を踏み出せるのだ。

「噴水シャワー!!」

雨降って地固まる、雨があがれば虹が出る……というわけで、ロッソのふしぎは虹、っていう方向性、良くないですか。ここで傘じゃなくて消火栓に虹を持ってくるのがお約束外しっぽくて好き。ボロッカは「雨雲を出す」といういわば気象操作系のフシギだったわけですが、消火栓が水を出すのは当たり前なので、それだけじゃフシギでも何でもなーいなんですよね。

「焼きバナナになっちゃうよ早く!」

ロッソは弱い自分を克服したかっただけで、ヤムヤムたちに復讐したかったわけじゃないから、こうやって優しくなれるんだよね。それに対するヤムヤムも「いいのか俺たちも…?」と謙虚な姿勢。意外と自覚を持って悪さしてるんですね……。


校舎も無事消火され、極悪トリオもパパを返してくれて、今日のところは一件落着。

「ではお祝いに私が発明した新しいジュースで乾杯を!」

「「「「「新しいジュースはもういいよ~!」」」」」

オチもバッチリ決まっている!!


ふしぎコレクション「真夜中の虹」

今夜のふしぎはロッソじゃ!

ピンクトードの教室ですが、よく見ると左前方に入り口がない。

校長先生は「3色じゃ虹とは言えん」とおっしゃいますけど、虹の色の数は言語によるんじゃないかなー!!などと内心ツッコミながら見てしまいました今回。


次回予告

「あの……ぼく、ロッソだよ。仲良しのジュノのお花がみんなの頭に生えちゃったの。でもみんなは邪魔だって言うんだ……ジュノかわいそう……」

「絶対見てね!」

今回はロッソの面倒を見るジュノさんのお話でしたが、そんなジュノさんの面倒を見てくれるのは実は……というお話。この、序盤エピソードのJ&Rの輝きっぷりはただごとではない。


エンドカード

最初の「またみてね!」はヒッキーたちいつもの4人+B。ボロッカはアニメのメインキャラからは外れてしまったけれど、シャー芯のおまけ時代からいる古参キャラなんだよね。

エンドカードは本放送時は毎週絵が変わってたはずなので、つまり26枚分あったはずなんですが、DVDは13巻しかないので半分は収録されてないのである。もったいないことに……


<まえつぎ>