#51 リディーの恋占い

最終回の前に、最後に決着つけておかなきゃならないネタがまだ一つ残ってました。第1話からずっと引っ張ってきた、リディーの恋……!!


第51話「リディーの恋占い」

(脚本:須田泰成/糸瀬奈保美、絵コンテ:酉澤安施)


黄色とオレンジの縞模様の紙袋に入ったクッキーをむさぼりながら、「なんかおもしろいことないかな~」と校庭へ出てきたチャップス。ちょうどフォントンが一人で面白いことやってました。『みてて!』とそのへんの石を空中に投げ、ペン先で激しく格闘したかと思うと、ポーズを決めて着地。転がった3個の石には青インクのメッセージが……

『やあ!』

『チャップス』

『げんき?』

フォントン、真顔でそういうことするからほんと何考えてるのか分かんないよ!!

これでおもしろーいって飛び上がって喜ぶチャップスを見てたら、こっちまでなんか面白いような気がしてくるじゃありませんか。チャップスは自分の顔の形をしたクッキーと地面の石とを見比べて、「もっと面白いこと考えた!」とフォントンを連れて調理室へ向かう。


チャップスが焼きたてのクッキーをそれそれと放り投げ、フォントンがチョコレートを浸したペン先で一枚ずつ器用に文字を書き、クッキーはみるみる壺に貯まっていく。最後の一枚にはちょっと気合いを入れて『おもいがつうじる』の文字を……。

「チョコレートの文字もおいしそう。ありがとうフォントン!」

『でも、なににつかうの?』

チョコのまま紙に書いてしまったからか、一瞬筆跡を眺めてから尋ねるフォントンに、チャップスはウインクで返します。

「エヘ、たのしいこと!」


廊下の奥に壺を鎮座させ、怪しげなテントに「占いクッキー」の看板。「あなたのうんせいをうらなう!」とイラストの書かれた黒板に、ワンポイントでチャップス顔のドクロ。赤いとんがり帽子をかぶったチャップスが生徒を呼び集める。

「はーいみんなー、おいしいクッキーはいかが? あなたの運勢を占う占いクッキーだよお!」

寄ってきたヤムヤムがクッキーを手に取ると、『いちばんになる』と書かれている。「俺様はいつだって一番だぜ!」と鼻で笑うヤムヤムに、ヒッキーとアンプーは呆れ顔。ジーニーも「しょせん占いですから、当たったとしても科学的根拠は見出せませんね」と冷ややかです。試しに一つ、とヒッキーが手にしたクッキーには『なにもおこらない』。

「これじゃ占いの意味がないじゃない!」

ここのBGM、ヒッキーがクッキーを受け取ったときはヒッキーのテーマ、ジーニーのときは図書室の曲がそれぞれ占い風アレンジで流れてて仕事の丁寧さに感動した。ジーニーも一枚手に取るなり「これも当たりませんね。ほら、こんなことが書いてありましたよ」と『テスト0てん』の文字を見せる。「ジーニーが0点なんてデタラメに決まってるよ!」と笑うヒッキーたちに、あえて意味深な芝居をしてみせるチャップス、お人が悪いです。

「でももしかしたら当たるかもしれないよ?」


それからというもの、ヒッキーが「百発百中で絵を動かせるようになったんです!」と先生の前でお得意の犬を描いてみせても、絵は飛び出さず『なにもおこらない』。ピンクトードクラスでも、

「今回のテストで一番だったのは、」

「当然、私に決まってます」

「……ヤムヤムです!」

先生はもうちょっと疑うということをした方がいいよ!!

『いちばん』になって目を輝かせるヤムヤムの前で、「どこも間違っていた覚えなどないのに!」と焦るジーニーはなんと『テスト0てん』。占いは的中してしまったのだ。ちらっと映ったクイッキーが28点しか取ってなかったのも気になるんですが。

ヤムヤムはテストで一番取っただけで「おやぶんサイコウ!」なんてプラカードまで作らせて、NO.1なんてハチマキ巻いて(ウソップの煽り立てる腕の動きよ)わざわざカフェテリアまで自慢しに来るんだからほんと人生エンジョイしてると思います。ここでようやく主役登場、占いが当たるという話を聞きつけて、リディーはチャップスのところへ足を運ぶ。


『いいことがある』……クッキーの占いを半信半疑で眺めながら歩いていたリディーは、階段で足を滑らせてしまった。そこへ偶然手すりを滑ってきたドッキーが、間一髪、転びかけたリディーの体を抱きとめた……!


『いいこと』が現実になってご機嫌のリディーは、鼻歌交じりで再びチャップスを訪れます。

「もう一枚クッキーくださいな!」

「あれ、リディーまたクッキー食べるの?」

「さっきの占いなんか当たったみたいだったから、もう一度試したくなったの」

「ふーん。じゃあ取ってちょうだい!」

並んでいたアンプーを押しのけて、これぞと引いたクッキーは『プレゼントをもらう』。教室に戻るとなんと本当に、机の上に大きなピンクのブローチがあるではないか!


ブローチを持って浮かれて飛び出したリディーのところへ、オンプーがさらにとんでもない占いを見せてきた。『こくはくされる』!

「ちょっと楽しみじゃない、思いを込めて食べると当たるって評判だし!」

確か公式サイトの各話紹介ページで使われていたのがこの妄想シーンの画像だったんですけど、頬を染めるドッキー ~水も滴るピンクのバラとともに~ はね、放送前に見たときはだいぶショッキングでしたよね。どうでもいいですがカフェテリアでクイッキーとピラニンという珍しすぎる組み合わせが同席していて二度見しました。


焦って2階に飛んで行くリディーだったが、山ほどあったはずのクッキーはもう品切れ。というのも、

「たった今スピモンが全部持ってっちゃったの。ほら!」

「このクッキー最高だモン!」

からの、リディーの声のトーンの変わり方が最高です。

「私のクッキーーーーーーーーーー!!」

スピモンの両腕からクッキーを奪い取り、『ころぶ』『きらわれる』それにヤムヤムの顔のクッキー(なんだこれ)などなど、これはやだ、これもサイテーと選り好みしてどんどんスピモンの口に突っ込んでいく。「あった!これにする!」もうすがすがしいほど欲望に忠実です。占いとはなんだったのか。お眼鏡に適う一枚を見つけたリディーは、餞別代わりに残りのクッキーを全部スピモンの口に押し付けて去ってしまった。

「どうか、どうか、ドッキーに思いが通じますように……!」

願いを込めて『おもいがつうじる』のクッキーを頬張るリディー。その姿を物陰から見守るインキーに、気付いている者は誰もいなかった……。


すっかり浮足立ったリディーは、授業中もチラチラとドッキーを気にしてばかりいる。そりゃこれだけ頻繁に振り返ってたら嫌でも目が合うってものだけど、「こんなに目が合うなんてもう思いが通じたのかしら…」と都合のいいように解釈する能力がとびきり冴えてしまっています。ちなみに今日の授業は不思議方程式、つい20話ほど前は不思議掛け算をやっていたので成長が著しい。

ドッキーは特にリディーに構わず教室を出て行ってしまうが、「きっと照れてるんだわ!」とまあこんなことで思い込みは止まりません。


個人的にはリディーとスピモンのお互い雑に仲良い感じが大好きなんですよ。

H「何かいいことでもあったの? 占いが当たったとか?」

S「オイラなんか山ほど食べたけどぜーんぜん当たらなかったモン」

L「あんたは占いなんて読んでなかったじゃない」

S「あ~そうだったモン!」

リディーがさっきのブローチをドッキーからの贈り物と思い込んで惚けていると、ゾビーがすごい剣幕で駆け寄ってきた。

「これは僕のだゾビ! 教室で落としちゃっただけゾビ……」

こういうときリディーはちょっと舌足らずなしゃべり方になるのがあざといかわいいよな。ガラクタの詰まった壺から落ちたきれいなブローチ……だと思っていたものは、4対の足でモゾモゾと這い出す宝石グモだった。こういうとき悲鳴が猛々しいのもいっそあざとい。放り出されたクモを追いかけてゾビーは行ってしまった。


さらに、追い打ちをかけるように「占い当たるわけなかったわ!」とオンプーが現れる。

「フォントンから告白されたわ。クッキーに書いたのはデタラメだーって! 愛の告白どころかとーんだ告白違いだわ!」

むしろみんな本当に魔力でもあると思ってたのかよって驚きなんですが、まあ確かに、チャップスはそういうオカルト方面に関してマジそうな雰囲気はあるよな。

「でも、ちょっとたのしかったでしょ?」

『ごめん』

ヤムヤムとジーニーのテストの件も、提出時の入れ違いで点数が逆になっていただけだったことが判明。背後から飛び上がって教室の中を覗くスピモンがかわいい。

「じゃあ僕の占いは何だったの? 何も起こらないっていう……」

『それは…』

「ヒッキーの絵が単にヘタクソだったから動かなかっただけだモン!」

「あそっかー!」

「納得するなよ!!」

最終回のあの展開の前でも主人公disに容赦ありません。

リディーもそう簡単に諦めはしない。ヤムヤムの占いも「ビリから一番」と解釈すればあながち外れでもなかったのでは……とか考えてたら、とうとう、本当にドッキーがやって来た。「いつ渡そうか気になってたんだ……」と思わせぶりに取り出した手紙には、『リディーちゃんへ』という宛名が!!

「これ、あたしに……? ドッキー、あの、あたしもずっと前から……」

……しかしスピードスター、用事を済ませて帰るのも早かった。リディーがもじもじしている間に、

「ドッキーもういないモン」

「ドッキー、なんで!? こんな大切な時に! ドッキー、どうして行っちゃうの?」

「俺の用は済んだぜ? それさっき階段で見つけたんだ。じゃな」

慌ててラブレターを開くと、浮かび上がるのはインキーの顔。


リディーちゃん、

だいすき。

でへへ…

インキーより


デタラメでもこじつけでも、それまでの占いは全部一度は当たっていたのに、一番思いを込めて食べたはずのクッキーだけはかすりもしなかった。いや、きっとこのラブレターはフォントンの模範的手紙などではないだろうから、インキー直筆の気持ちがはっきりとリディーまで伝わったという意味では、これも当たっていたのかもしれない……そう考えるとそれもそれで恐ろしいが、絶望に一人取り残されるリディーに対し、一同は軽い調子で笑いながら去っていく。

「……占い、あたしも当たらなかったみたい…」

「でも、楽しかったでしょう?」

最終回直前にして、私はこの回が全52話で一番つらいのである。リディーにしてみれば通常運転の自業自得とはいえ、一人で勝手に浮き足立って本当に独り相撲で終わるのって心折れません? リディーのことだから一晩したらケロッといつもの調子に戻っていてくれると思うけど、だけど最後に一瞬、なぜかピンクトードの教室から顔を覗かせるインキーがマジのストーカーっぽいのよ……わ、笑えないよこのバッドエンド……!!


ふしぎコレクション「わたしの未来を占って」

今夜のふしぎは占いクッキーじゃ!

校庭に飛んできたクッキーは『おしまい』

「…………おお、当たっておるわ! 珍しいこともあるもんじゃ」

ふしぎコレクションのコーナーもこれでおしまいじゃ!


アイキャッチ:Z

ゾビーは若干斜視っぽいんだよね、ゾンビ歩きもかわいい……。


とうとう51話まで終わってしまいました。最終回の感想文を書いてしまったら本放送時に最後まで見終わったときのあの喪失感を追体験するようで寂しくて、どうにも今書きあぐねています……。


<まえ│つぎ>