#36 資料庫の秘密
ちょっと今回、感想書くにもかなり言葉に迷ってます。極悪トリオの仲の良さはひたすら微笑ましいのに、ドッキー周りはどうしてこう……あの「…ああ!」とか、最後の「うん…」とか、ねえ……あと、帽子。どんだけ宙返りしても外れなかったあの鉄壁の帽子が、ついに……。なんか今回ずっとこんなテンションですみません……
第36話「資料庫の秘密」
(脚本:高橋孝之介、絵コンテ:奥山潔)
教室の後ろにBPSKTHDLZの順で並ぶ生徒たち。先生に「ロッカーを見れば普段のみんなの様子が分かりますからね」と突然片付けを命じられ、一同は不満たらたら。カボはチュービーの絵の具を引っ張って遊んでいる。
みんなインクとペン、本や傘は基本装備で、それにスピモンはカメラやマイク、カボはカボチャがいっぱい、チュービーの絵の具まみれのロッカーにはクイズ大会のときの双眼鏡なんかが入っている。「こんなことならちゃんと片付けておけばよかった…」というヒッキーのロッカーには、缶蹴りの缶や机の松葉杖なんて懐かしいものが。戸の裏側に犬と3本足ニワトリの落書きが見える。こういうとき素直にロッカーを開けないドッキーは、意図的にプライベートな部分を隠されてるよなーって思う。
「へー、さすがにきれいにしてるなあ」
「当たり前でしょ? これでも女の子なんだから」
ロッカーのきれいさに男女は関係ないと思いますが、確かにリディーのロッカーはよく整頓されています。2段に分けて入れてある本、衣装のテンガロンハット、コンサートのステッカーも貼ってある。その隣で、ゾビーのガラクタが雪崩を起こしていた。
「全くこんなになるまで汚くして。みんな捨てるのを手伝ってあげなさい」
「だ、だめだゾビ!」
「なんズラ! ゴミ捨て手伝ってやるズラ!」
「ゴミじゃないゾビ、みんなオラの宝物だゾビ」
ゾビーがじたばたしている脇で、ドッキーはガラクタの中の鍵らしきものに目を留める。
ゾビーによると、ずっと前に図書室で宿題をやっていたとき、落とした消しゴムを拾おうとしてこの鍵を見つけたらしい。そ、そんな大層なものがなんでそんなところにあったんだよ……。
鍵は図書室の奥にある資料庫の錠と同じ形をしている。学校にまつわる大切な資料が置いてあるとか、成績表が置いてあるとかウワサは聞くものの、誰も入ったことはないという資料庫。扉の前では一対のガーゴイルが仰々しく入り口を守っている……
「ヒッキー、怖いズラか?」
「こ、怖くなんかないさ!」
「じゃあ、誰があの部屋に入れるか勝負するズラよ」
「も、もちろんさ!」
「フン、俺も忘れるなよ」
煽られてムキになるヒッキーとか、こういうとこで自己主張するドッキーとか、このへん既に萌えポイントです。
まずはチュービー、「あんなガイコツ楽勝ズラ!」と絵の具を揺らして催眠術をかける。これがけっこう効いているのだが、効き過ぎて自分の方がウトウトしてしまい、失敗。
二番手ヒッキーはお得意の犬の絵で勝負。
「犬の大好物は骨ってわけか」
「さすがヒッキー!」
が、これもあえなく追い払われてしまう。犬、ドッキーの方を狙わなくてよかったね……ヒッキーから鍵を受け取ったドッキーは、エナメル生地のマイバッグを肩にかけて出てきた。
「つむじ風フォーエバー、ツインバージョン!」
2つに分かれたつむじ風は、紙くずを吹き飛ばしながらガーゴイルへ向かう。その隙にカバンからボウリングのボールを取り出し「「ストラーイク!」」勝負に負けてチュービーだけちょっと悔しそうです。ガーゴイルはバラバラになり、ドッキーはまんまと資料庫に入っていく……。
「なんにもないじゃないか。ったく人騒がせな部屋だな……」
暗闇で目玉だけが光る。懐中電灯を取り出し、石造りの部屋の隅に本棚を見つけたドッキー、「これがリディーの言っていた成績表か」とDの本を手に取る。表紙のシボシボした質感が良い。
「『学校創立記念の日、ドッキーは階段手すり滑りタイムトライアルで通算23回目の優勝を飾り……』これって先週のことじゃないか!」
(文字はほとんど読めないように加工されてますが、公式サイトか何かの作品紹介の文章を引っ張ってきてるみたい)
「『ドッキーはミッドナイトホラースクール卒業後、数々の不思議を巻き起こすため、あちこちの学校を回り……』この本には俺の未来まで書いてあるのか!」
野暮なことを言うと、卒業後っていつだよ!とかちょっと不自然な文章ではあるんですが。
「今日のページは!?『ドッキーは資料庫を出た後リディーを突き飛ばす。さらにその日の階段手すり滑りでは、2階コーナーでバランスを崩し転倒、記録更新ならず』……」
4人は帰りの遅いドッキーを心配そうに……チュービーはちょっとイライラしながら、待っている。ようやく出てきたドッキーは「俺に構うな!」と手を振り払い『リディーを突き飛ばす』……走り去るドッキーを見て、嫌な予感が当たったとゾビーが不吉につぶやいた。
教室でも明らかに様子のおかしいドッキーをみんなチラチラ気にしている。だってこいつ、机に突っ伏して完全に沈み込んじゃってるんですよ。何も知らないクイッキーが駆け込んで来て「階段手すり滑りの時間だぎゃ~!」とアニキの腕を引く。ドッキーは動こうとしないどころか、引っ張られるまま床に落ちて……落ちて、ぼ、帽子が、落ちて!!
「…………頼むから俺をほっといてくれ……」
脱げた帽子を拾おうともせず席に戻るドッキー……帽子を持って立ち尽くすクイッキー……ヤバい……いや帽子の中ってそうなってるのかなあとは思ってたけど、けど、ただでさえショッキングな場面なのに絵が強すぎて、全然笑うところじゃないんだけど変な笑いしか湧いてこないのよ……。
困ったときのふくろうじじい、資料庫のことを尋ねたらふつーに教えてくれました。じいさん、久しぶりに出てきたら声が渋くなってる。
「あの資料庫には生徒たちの過去、現在、そして未来を記した本があるのじゃ。もともとはみんなが過去を振り返るとき、いつでも自分の記録を見られるように校長が作ったものだったのじゃが……資料庫の不思議な力が、未来までも書き込んでしまったのじゃよ」
校長、資料庫を封印したというわりに鍵の管理がずさんすぎる。
「でも、未来を知ってあんな風になったってことは」
「良くないことが書いてあったんだゾビ……」
「いや、そうとは限らんのじゃよ。考えてごらん、自分の未来が全て決まっていると知ったら、どんな気持ちかのう……?」
「そんなの楽しくないわ……」
ここは個人的に、リアルタイム当時はあまりピンと来なくて、今なら納得できるなと思うところ。何がどうなるか分からないから「不思議」なのに、結果が全部分かり切ってるなんて、それほど空しいことはないんですよね。まあ、手すり滑りで失敗するというだけであれほど落ち込むドッキーだったとしても、それはそれでらしいのだが。
ドッキーを元に戻すには、資料庫の本を塗りつぶし消してしまわなければならない。そうすれば「未来は白紙になり、ドッキーの記憶からも消えるじゃろう」。勝手に資料庫に入ったと知れたら退学になるかもしれないのだが……
「うん、分かってる。でも、僕は行くよ!」
ここなんです、ヒッキー、ここ即答なんです。ためらう表情すら一瞬も見せず、退学即ち死すら厭わない、本気の固い決意! う、うわーーーっ!!
「一つ頼みがある。ドッキーの本のタイトルを消した後、他の本のタイトルも全て消してきてほしいのじゃ……未来が書かれた本など、そもそも必要ないのじゃ。大事なのは、未来を自分で切り開こうとする意志なのじゃよ。分かるじゃろう、ヒッキー?」
ここから流れるやたら壮大なBGM、今回以外に使われてるのは最終回しかないんですよ。もはや準最終回と言ってもいいほどの並大抵じゃない盛り上がり。ドッキーのためにヒッキーが描いたガーゴイルも、今までの絵とは段違いに大掛かりで、しかもふつーに上手いのだ。
赤と青のガーゴイルが本物を押さえている間に、ヒッキーは鍵を開け資料庫に飛び込んだ。ぽつんと落ちているドッキーの本を拾い、今日のページを読み始めるヒッキー……目を閉じて今日のページを思い出すドッキー……遠く離れている風だけど、ドッキーも3階にいるんですよね。すぐ後ろの資料庫に、ヒッキー、いるっていう。
「(俺はあの本の通りの未来を進んでいくしかないのか……俺は、負けねえ!)」
決められた未来と知りながらも、階段手すり滑りから逃れることはできないのだ。不安げに上がってきたクイッキーに、ドッキーは決然と告げる。
「クイッキー、タイムを計ってくれ!」
「もちろんだぎゃー!」
コースは2階コーナーに差し掛かる。
『バランスを崩し転倒、記録更新ならず』
手すりから落ちる未来が見える……だが……
「俺は、自分の未来は……自分で決める!!」
うなずいて本を放り投げるヒッキー、猛スピードで滑り降りていくドッキー……激しく煙を巻き上げ着地したドッキーは、死んだように横たわっている……
「アニキー! 最高記録だぎゃ!」
「……………ああ!」
噛みしめるかのように間を置いて、目を閉じたまま、すがすがしい声で、こ、この、この返事、うわーーーーーっ
全部の本をぐちゃぐちゃに塗りつぶして出てきたヒッキーは、待ち構えていたサラマン先生のお咎めを受け、一気に真っ青に。赤青の比率が変わるの随分久しぶりだ。
「勝手に資料庫に入るなんてバカモン!」とこってり絞られ、ヒッキーは両手のバケツと共に廊下に立たされるのであった。と、横から手を伸ばす者があって
「俺が半分持ってやるよ」
ウワーーーーーッ
ヒッキーは片方のバケツを両手で持ち直す(この微笑みがまたヤバいのだ)
「話は聞いたぜ。世話になったな」
「ううん、僕は何もしてないよ。だって、ドッキーの本のタイトルを消そうとしたら、その前にページがひとりでに白紙に戻っちゃったんだから。それはきっと……」
「フッ、そうか……」
「うん……」
こ、この、言葉のないやり取りよ……互いに目を合わせるのではなく、横に並んで同じ方向を見つめる関係……ヒッキーが懸けた命を無下に捨てさせるようなドッキーでは当然ない、自分のことは自分で救ってしまって、その上で相手が命を懸けたという事実だけはちゃんと受け取りに来る男なのだ、ドッキーというやつは……!!
そんな2人を見ては先生も、今回だけは大目に見ようと言ってくれるのだった……
……いやマジで今回、いい話だったかどうかとか好きかどうかとか以前に、ヤバい。キャラクター描写が突き抜けてるっていうか、ドッキーとヒッキーの「理解(わか)り合ってる」感、濃すぎません? ちょっと通常のテンションを保つことは私には不可能でした。すみません。
多少冷静に話をすると、資料庫があるからといって未来が一通りにのみ決まっているわけではなく、一度書き込まれたことでもその都度上書きされていく可能性はあったと思うんですよ。でもその内容を、その未来がやって来るより先に知ることができるということが、それだけでダメだったのよね。やっぱりねえ、不思議の学校は記録に固執してちゃいけないんだよ……。
ふしぎコレクション「未来を記した本」
今夜のふしぎは資料庫じゃ!
資料庫には先生方の本もしっかり置かれているのだ。こっそり見に来たサラマン先生、
「えーと、私の未来はどうなっているのかな……おお、ここだ。なになに、今夜はこれでおしまいじゃ!?」
おまけ映像、わりと本編の余韻を台無しにしがちだよね!!
次回予告
「フッ、ドッキーだ。極悪トリオがティゲール先生の弱点を見つけたっていうんだ。あのティゲール先生の弱点なんて、ちょっと気になるよな」
しかし改めてかっこいい声でしゃべるなこいつは。
「見た方がいいぜ!」
エンドカード
先生3人とインキー!