#48 エディのホームシック

極悪トリオ、ついにお笑いユニット(?)と化すの巻。このところ氷河期、カボのアルバイト、秘密のキッチンなどあまり悪事を働かない回が目立っていましたが、今回ときたら花壇作りに協力してみたり素晴らしいダンスを披露してくれたり、ますます善良ぶりに磨きがかかっている……!


第48話「エディのホームシック」

(脚本:K・ヒラノ/ミシェル・マナカ、絵コンテ:奥山潔/酒井豊/松浦由紀夫)


いつもより明るくて青い夜空。満天の星を見上げて遠吠えするエディの足元で、ジュノが地面を掘り返している。チェック模様の地面でも掘れば土なのね、さらさらと落ちていく土の柔らかい質感が見ていて心地いい。

「この学校さあ、ちっともお花がないでしょう。あたいのお花がさみしがるんだよね、花畑が恋しいってさ。なんとなくかわいそうになっちゃって、それで花壇を作ってあげることにしたんだ」

大きな岩を掘り出すのも土を耕すのも、エディの大きな爪にかかればあっという間。しかしジュノの話を聞きながらエディはどこか思い詰めたように上の空で、気づくとまた夜空を見つめている。

「星が好きなんだ。エディってロマンチストなんだね!」

チャイムが鳴ると、ジュノは園芸道具を放り投げ、土を払って帰っていった。


ティゲール先生はユルマキ草のときのボケキャラを引きずっているのか分かりませんが、

「もしこの学校が花でいっぱいになったら、ミッドナイトホラースクールっていうのを改めて、ミッドナイトメルヘンスクールにしなくてはいかんなあ!」

生徒もだんだんツッコミしきれなくなってきちゃってるんですけど……?


このへんまでくるともうロッソがメインキャラとして画面の手前でセリフをしゃべってるだけで感動できちゃうんだよな。首を突っ込んできた極悪トリオ、今日は何を邪魔するつもりかと思ったら最初から協力的で、好奇心と食欲が旺盛なだけのただのいいやつなのである。

「どうせなら食えるもんも植えようぜ!」

「賛成、きっとみんなも喜ぶズラ!」

これで本当に手伝ってくれるんだから全く極悪のゴの字もないぜ。仲間が増えることにうれしさを隠しきれない人喰い花に、エディは静かに視線を向ける。ジュノが花の種をまき、ヤムヤムたちは「食えるもん」であるらしい顔のついた球根を土の中に並べていくが、

「おいロッソ、水は種を全部まき終わってからだぞ?」

「え、僕何もしてないよ……」

大粒の水滴の正体は、エディの目からこぼれ落ちる涙だった。


さすがにエディのことを相談するのに骨山は使えません。カフェテリアで机を囲む5人。ウソップはジュノの隣にピタッと寄ってきて「学校の事情に詳しいのは……」というわけで、忘れた頃の頼みの綱、ふくろうじいさんの出番です。

「ずっと空を見上げておるなら、エディはホームシックにかかっておるのかもしれんのう……ご覧、エディたちドラゴン一族は天の川からやってきたのじゃ」

一度天の川を離れたら戻ってきてはいけないとか、具体的には語られませんが何か掟があるらしい。だけどそもそもエディって校長の飼いドラゴンか何かなのか、どういう事情でこの学校にいるんだろう……。


ヤムヤムの発案でエディのためにイベントが開かれることになった。生徒全員校庭に集まって、エディだいすき!の垂れ幕も用意して、女子たちはみんなピンクのチアガール衣装に着替えてきて、ノイジーだけは通常営業で司会進行役です。

「さあエディ、今日はあなたが主役。パーッと楽しんでホームシックなんて吹き飛ばしてしまいましょう!」

生徒たちがそれぞれ出し物を披露していく。まずはエディの好物カメレオンパイ。チャップスたち3人がかりで運んできた大皿を、エディは一口で丸ごと飲み込む。

「次はぼく。これ僕が作ったエディのオブジェだマグー。これで寂しくないマグ!」

大きなオブジェを運んできたロボットのボディに輝くM3の文字……およそ40話の時をおいて再登場したマグネロン3号だ! マグネロ型のコントローラーもかわいいんだよね。

さらにヒッキーが描いたシーラカンス、じゃない、エディの似顔絵が夜空を飛び回るなどしたところで、大トリ・極悪トリオの出番です。そろいの衣装着てハチマキ巻いてローラースケートで歌って踊るイカした3人組、赤のヤムヤム、黄色のウソップ、緑のチュービーがその場の視線を一気にさらう!!

「これを見ればエディだって元気が出ること間違いなし!」

「エディのためにれんしゅうしたズラ!」

「ザ・ダンシング極悪トリオ、それっ!」


1・2・3・Wow!

そうさハートに火をつけ

俺たち極悪トリオ

涙をふいて 時を駆け抜け

嵐の中で踊るぜ

ガラスのようさトリオ

いつもドキドキしてるぜ

誰が呼んでる そうさそのとき

俺たち極悪トリオ


頭の上を華麗に飛び回る姿に、生徒たちみんな呆然。エディも、マグネロのオブジェと一緒に口をあんぐり。予想もしないあんまり見事なパフォーマンスだったもんで、音楽が止まった瞬間にリディーを皮切りに校庭中に笑いが巻き起こる。「お笑いのつもりじゃなかったのに!」とふてくされるヤムヤムでしたが、エディに頬ずりされて「ま、いっか」と顔をほころばせるのでした。


エディもすっかり元気になって、あーよかったよかったと生徒たちは教室へ戻っていく。だけど、忘れ物を取りに戻ったジュノだけは、オブジェと2人っきりになったエディがまた悲しげに空を見上げていることに気付いてしまった。にぎやかなイベントでエディが喜んでくれたのは決してウソじゃなかったけど、でもエディが本当に求めていたものはそれではなく、結局どこか自己満足に過ぎなかったという事実がちょっとつらい。

……下世話な話で申し訳ないですけど、チアガール衣装のスカートの下、ピンクの縞模様のインナー履いてる?


ジュノは図書室の本の山の中から『THE SCARY PLANTS』……恐怖植物の本を見つけ出し、まるでおまじないをかけるように屋根の上を歩く。満月の光を一心に浴びた人喰い花は、あっという間に実をつけた。過去2回とは違って半透明で、キラキラした種がいっぱい詰まった実。

「あんたたち、きれいに咲いてね……」

種に優しく土をかぶせるジュノの頭上で、空は雲行きを怪しくしていく……。


「先生はこの間大発見をした。ユルマキ草の巨大化についてだ!」

……やっぱりティゲール先生あの件引きずってますよね!? フォントンはまた授業中にうとうとしてるよ。ジュノのノートには星に囲まれたエディの絵が落書きしてある。そういえばこの学校、ボロッカが泣く以外であんまり雨降ったことないんだよな……突然の大雨で、ジュノは花を心配して教室を飛び出してしまった。


「良かった、折れてない……」

校庭一面の花畑の中、つぼみの一つを優しく撫でるジュノ。お花を踏まないように歩き方も小股気味だ。

雨が止んだ。恵みの雨を受けたスターフラワーが次々と花開く。エディを取り囲む光る花の帯は、地面に咲いた天の川だ! 生徒たちが一斉に駆け出してくる。うれしそうに鼻先にジュノを乗せるエディは、やっと本当に元気な顔を見せてくれた。

「ねえエディ、スターフラワーは本物の星じゃないけど、天の川よりもっと素敵なとこがあるよ。天の川は雨が降ったら見えなくなっちゃうでしょ、だけどあたいの天の川は、雨が降ったって、雪が降ったって、いつだって見えるんだから!」

ラストシーン、ジュノに続いてエディの顔に乗ったヒッキーがヤムヤムの手を引いて乗せてくれるのが大変良い図でした。


次回予告

「やあ、ヒッキーだよ。お休み中のサラマン先生の代わりに、ショータイムが授業をしてくれてるんだけど、その隙に極悪トリオが勝手にプレイルームに入っちゃったんだ」

予告がとうとうヒッキーに戻ってきた。初回のときは「やあ、僕ヒッキーです」から始まったことを思えば、話し方も随分こなれたものだなあ……。


エンドカード

お盆を持ってうきうきのチャップスとベンダーマシンさん。


<まえつぎ>