#46 インキーとユルマキ草
大スペクタクル(?)のパニックホラーにして笑いも満載、それにかっこいいジュノの出番までそろった大好きな回です。本当にありがとうございます。
第46話「インキーとユルマキ草」
(脚本:大竹康師、絵コンテ:酉澤安施)
ワットは後ろを向いて何かおしゃべり、フォントンはうつらうつらの授業中。ティゲール先生は「こうなってこう…ここがこうか…」とつぶやきながら黒板に絵を描き、チョークの粉を払って講義開始。
「不思議植物にもいろいろあるわけだが、この校内に生えているものは何だか分かるか?」
不思議植物のなかま
1. ゆるまきそう
2. こりあらのき
3. りゅうこつそう(?)
3番は墓場にたくさん生えているやつ、名前はノートの文字からなんとなく推定するしかないんですが、でもちゃんと名前があったのね。うーんって考え込むアンプーがかわいい。今回はブルースパイダーメインなので、ウソップがイエローリザード回のチュービーみたいなかわいい悪ガキ枠なんだよな。
「わかったぜ、ジュノの人喰い花だ!」
「残念だが違う。ま、一番有名なのはユルマキ草だな。ほら、校庭にも生えているアレだ」
「そーよ、この子は恐怖植物なの。そこらの雑草と一緒にしないで!」
雑草と言われちゃいましたが、恐怖植物は不思議植物とは別種なんだろうか。
「ユルマキ草はよく見かける草だが、その生態は未だ分かっていない」
インキーは授業も聞かず、リディーちゃんと自分の絵を描いて「ふたりはラブラブ…」とデレデレしている。突然誰かに小突かれたと思ったら、人喰い花がインキーの席まで葉を長く伸ばしているではないか。人喰い花に挙手させられて、インキーは授業で観察するユルマキ草を取ってくる羽目になってしまった。知ってか知らずか不敵な笑みで視線を送るジュノ。
インキーけっこう口が悪く、「なんで僕がこんなこと! 全部あいつのせいだ!」とプンプンしながら校庭に出てくる。が、追い打ちをかけるようにユルマキ草にもケタケタ笑われ、頭に来て根こそぎ引っこ抜いてやったと思ったら、今度はそのユルマキ草が飛びついてきて……。
「……確かにユルマキ草を取ってこいとは言ったが、何も頭に入れてこなくてもいいと先生は思うぞ……」
転んだ拍子にフタが外れ、ユルマキ草はインキーの瓶にすっぽり入ってしまったのだ。しかもこれが、ウソップとマグネロとティゲール先生の3人がかりで引っ張っても一向に抜けない。
「なかなか根性があるなあ……気に入った! インキーの頭の使用を許可する!」
「せ、先生、勝手に許可しないでよ~!」
インキーの尻の動きが妙にかわいいお手洗い。所構わず笑い声を上げるユルマキ草を見て、フォントンはからかっているやら本気やら、
『ペットにするの?』
「ンン……フォントンのいじわる……」
外に出た途端、ジュノの人喰い花が突然インキーに襲いかかってきた。『あっ!』と感嘆詞まで紙で出すフォントン。
『ジュノのはながおこっている』
「なんで僕ばっかいじめんだよう……」
「あたいだって分からないわよ、こんなの初めて……!」
『ジュノ! おちついて!!』
というわけで、突然フォントンが画力の高さを発揮してくれるわけですが。
ユルマキ草の絵。人喰い花は無関心。
インキー(ちゃんとフタも閉まっている)の頭にユルマキ草がくっついた絵。人喰い花は一瞬で紙を食いちぎってしまう。
「シシシシ、やっぱりインキーが気に食わないんだ」
「違うな……人喰い花はインキーが好きなんだ!!」
最後に、インキーだけの絵。人喰い花は笑いながらパネルをぺちぺち叩き始める。
「殴るなよ……」
恐怖植物が好きなものは恐怖、人喰い花を怖がっているインキーには恐怖がたくさんある、だから人喰い花はインキーが好き……って、好きな相手に対する反応がいじらしすぎるよ!!
「じゃあ、さっきトイレの前でインキーに襲いかかったのは……」
「嫉妬だよ! インキーと一緒にいるユルマキ草にやきもちを焼いたんだ。こいつは大発見だぞ!」
『すごいぞインキー!』
この間フォントン、ニコニコ笑顔で人喰い花と握手して、使い終わったインキーのパネルを渡してあげていて微笑ましい。「そんなの発見しなくていいからこいつを抜いてよお!」と焦るインキーだったが、突然顔のインクがなくなって倒れてしまう。ユルマキ草はインクを吸い上げて急成長していく……。
……『すごいぞインキー!』(2回目)なんて言ってる場合じゃなくなってきた。栄養のあるインクってなんか気持ち悪いんだけど、ユルマキ草はどんどんそのインク(つまりインキーの本体だ)を吸って、枝分かれして天井まで届くほど大きくなってしまった。私うっすらボタノフォビア気味なので今回のユルマキ草がずっと怖いんですが、個人的にはこの段階が一番不気味ですね……。ウソップは何やら先生に耳打ちすると、「すぐに準備しろー!」「ラジャー!」と教室を飛び出して行ってしまう。
「この発見はもはやフシギの域に達している。私たちは新しいフシギの目撃者になれるかもしれんぞ!」
『すごいぞインキー!』(3回目)
「そんなのならなくてもいいよお……」
インキー、こういうとこ消極的だから教師志望なの意外な感じなんだよね。
「いいか、インキーの青いインクでこれだけユルマキ草が成長したんだ。これだけでもすごい大発見だ! ということは、インキーのインクが青じゃなかったら……!」
そう、ウソップが背中を押して連れてきたのは「やっぱり」リディーだったのでした。黒板の文字がいつの間にか「ユルマキ草の観察」に変わっている。
「ささ、リディーももっと近くで見てくれ!」
先生が無理矢理2人を近付けると、インキーは瞬く間に沸騰。リディーも親切で手なんか握っちゃうし、ピンクになったインクを吸い上げて赤く変色したユルマキ草は、次第にグロテスクに変貌していく。
「ちょっとやばいんじゃないの……」
一気に成長したユルマキ草、怪物と化す。主客逆転、インキーは幾多の触手うごめく巨大なユルマキ草にぶら下がるような形でくっついているだけになってしまった。慌てて逃げ出す生徒たちの中で、例によってマグネロはちょっと走るのが遅い。
「慌てるな、たかがユルマキ草だ! こんなもの先生が軽く……」
先生の方が軽くぶっ飛ばされたよ!!
ユルマキ草は床を這い、壁を伝ってイエローリザードクラスにまで侵入する。机も椅子もなぎ倒されめちゃくちゃになる教室。校舎から真っ先に飛び出てきたドッキーは逃げ足もスピードスターのようです。
逃げ遅れたリディーと、「ああリディーちゃんごめんね……でも僕何もできない……」とじたばたするだけのインキー、そんな2人を助けに来たのは人喰い花だった!
「あたいだってこんなところ来たくはなかったんだけど、この子がどうしてもって言うからさ!」
こんなときまでヒールぶっちゃうジュノさん、かっこよすぎるーーー!! 一呼吸置き、全身でユルマキ草と戦い始めるジュノ。「いいぞジュノ、ナイスガッツだ!」と言いながらただ通り過ぎていくティゲール先生。
校庭のモニターから学校中がジュノを応援する。どこにカメラがあるんだ、とは聞かないお約束。しかし成長したユルマキ草は人喰い花でも手に負えず、ジュノは壁に叩きつけられダウンしてしまう……
「先生、ごめんね、もうだめみたい……」
「よくやった。もう十分だ、後は先生に任せておけ!」
「先生何もしてないじゃない……」
今回のティゲール先生の調子の良さはほんとなんなの!!
人喰い花は最後の力を振り絞って手を伸ばすが、その葉もとうとう愛するインキーには届かない。ユルマキ草は学校中の窓を突き破って足を伸ばし、荒々しく地面を叩いている。もうどう見ても緩巻きでも草でもないこの化け物に、学校は支配されてしまうのか……!
「ジュノ、花に実がなってる!」
「実が……この子何をする気なの」
人喰い花がゆっくりと頭をもたげ、実から無数の綿毛を飛ばす。その種がユルマキ草の上で芽を出し、花開き、無数の人喰い花がユルマキ草のエネルギーを吸い取っていく……吸い取った養分で人喰い花が元気を取り戻すにつれ、反対にみるみるしぼんでいくユルマキ草。枯れた枝が自重に耐えられずに折れては落ちてゆく。人喰い花の勝利だ。学校は救われたのだ!!
早くも復帰したノイジーのアナウンスに、みんな浮かれて喜んでいます。真っ先に飛び上がるエックス、喜びすぎて後ろに倒れるエントン、なぜか親分を胴上げするチュービーとウソップ、喜びの舞いを舞うカボとゾビー、そして帽子放り投げちゃってるドッキー!!
「ユルマキ草にあんな変化が起きるとは、誠に有意義な発見だったなインキー!!」
体に巻き付いた枝を捨てて、笑うだけ笑って出て行ってしまったティゲール先生、もはや無責任すぎて逆に面白いレベル。
「ジュノ、ありがとう……」
「お礼なら、この子に言ってあげてよ」
またインキーをぺちぺち叩く人喰い花に、今度はインキーも笑顔を返すのでした。
すっかり元通りに直った学校。教室では相変わらず、授業中も人喰い花がシャーシャーと声を荒げている……ジュノの人喰い花も、インキーの人喰い花も。
「人喰い花の種が頭に残ってたんだよう……」
「せんせ、またリディーちゃん呼んでこよっか?」
「ええ、やめてやめて! リディーちゃんには会いたいけど、会いたくないよお!」
人喰い花は、インキーが自分のことを嫌いじゃなくなったら、それはつまりインキーに恐怖がなくなるということなので、構造的に片思いしか許されない定めなのよね……。自分のことを愛さないインキーをだからこそ愛する人喰い花と、そんなお花のためにと理由をつけて身を挺してインキーを救いに来るジュノ……決して結ばれることを期待しない奇妙な三角関係が大変おいしいやつで、本当に大好きな回です。重ね重ねありがとうございました。
ふしぎコレクション「ユルマキ草と遊ぼう」
今夜のふしぎはユルマキ草じゃ!
なんだかんだでインキー、ユルマキ草のこと気に入ってるのでは。
「一人で楽しんでる姿が不思議、というより不気味じゃな!」
……何だったんだこれは。
次回予告
「ハローエブリバディ、ミスターショータイムだ。みんなの学校で流行っている遊びは何だい? ミッドナイトホラースクールでは今、鉛筆レースが大流行りなんだ」