#33 ティーチャーズ・デイ
DVD9巻のジャケット絵、みんなお目目キラッキラで泣いてて、ティゲール先生もしっかり泣いてて、ペギナンド先生もほろっときていて、サラマン先生だけ冷静なのがめっちゃ好き。
第33話「ティーチャーズ・デイ」
(脚本:シャノン・ミューア、絵コンテ:破李拳竜)
先生に感謝の気持ちを伝える日、ティーチャーズ・デイ。「ミッドナイトホラースクールにとって特別な日」とのノイジーの放送通り、HAPPY TEACHERS DAYの大きな垂れ幕に輪飾り、風船とカフェテリアの装飾も気合が入っている。
教壇の前でそろって一礼するAW。ワットが助走をつけて飛び上がり、空中で2回転して片手でアンプーの上に逆立ちして光る「ぴかぴかアクロバット」は、すぐバランスを崩して失敗してしまった。
「いいんだいいんだ。努力してくれたことが先生うれしいぞ。2人ともありがとう」
それぞれ先生にプレゼントを渡したりフシギを披露したりするのね。マグネロのプレゼントは鉄板の箱に鉄のリボン、また謎の芸術作品でも作ったのだろうか。
ウソップは机に肘をついたまま「インキーがまだだぜ」と告げ口する。そういうお前は何を用意したんだろうなあ。怒られたらちゃんとビビってくれるところがかわいいんだけど。震えながら小刻みに机をぺちぺちやっていたインキーは、内股気味で出てくると「プレゼントはないんだけど質問があるの」と話し始める。
「あの……僕……僕も先生になるにはどうしたらいいの」
途端に豪快に笑い出す先生。
「やっぱり、ばかみたいだよね……」
「とんでもない。その逆だよ。先生になりたいと思ってくれるなんて最高のプレゼントだ」
先生の提案でインキーは一日アシスタントティーチャーになることに。ウソップは「フンだ」と気に食わないご様子です。
インキー、早速ガッチガチに緊張して手と足が一緒に出ちゃってます。教室に笑いが起こるのを「笑うんじゃない! 失敗は誰にでもある!」とたしなめてくれるティゲール先生がいい先生すぎる。しかしプリントを配り始めたと思ったら、今度はウソップが転がした鉛筆に引っかかり、インキーは頭の中身をぶちまけて「僕ちゃんと掃除します…」と言い終わる前に貧血(?)で倒れてしまう。
ティーチャーズ・デイ恒例の勝ち抜きサッカー大会は、ピンクトードがイエローリザードを敗り、ブルースパイダーと決勝を争っている。試合は2-2で残り時間はあとわずか!……先生に感謝する日って何でもありのお祭りなんだな。
出場選手はそれぞれAWとキーパーのJ、OQとキーパーのGで、その他は応援要員です(F「ガンバレ!」)。インキーはホイッスルを首に下げ、「ゴールしたらちゃんと笛を鳴らすんだよ」とティゲール先生と共に待機中。
アンプーのスライディングを巧みにかわして前へ出るクイッキー。パスを受けたオンプーがゴールを狙うが、ここはジュノのナイスセーブ。こぼれ球にクイッキーが飛びついて、高所からのヘディングを決めて見事シュート! 優勝はピンクトードクラス……のはずが、ゴールの笛が鳴らない。インキーはハエ軍団に襲われてそれどころじゃないのです。
ティゲール先生のフォローで試合は無事終了したものの、犯人のヤムヤムとウソップはおしりペンペンして逃げて行ってしまう。涙ぐむインキーに「後片付けをしようか」という先生の声の優しさよ……。
サッカー場のMHSらしくなさにドキドキしてたんですが、そりゃそうだ、ミッドナイトホラースクールに青空なんかあるわけないんだものな。プレイルームの中なのだろうか、試合が終わったらちゃんと夕焼けに変わっていて、青春っぽさを演出する気遣い(?)が行き届いている。
片付けにも不器用なインキーは転がるボールを「まてー」と追いかけていく。先生が黒板を消していると、インキーが声をかけてきた。目に涙をためながら。
「ねえティゲール先生、ヤムヤムみたいな生徒がいるのに、どうして先生になろうって思ったの?」
職員室に場所を変え、明かされる衝撃の過去……ここで一つポイントなんですが、ティゲール先生、生徒に対しては自分のことを先生って言うことが多いんですよ。私って言うのは教師同士のときで。
「実はね、私も昔、恥ずかしがり屋で失敗ばかりしてたんだよ。鈍くさくて、同級生からも随分からかわれたなあ」
そんなティゲール先生が卒業できたのは、サラマン先生のおかげだった、と。
「サラマン先生が叱って励ましてくれなかったら、私は落ちこぼれて不思議なんて作れなかっただろう。だから決めたんだ、私も自分みたいなシャイで不器用な生徒を、励まして育てようってね」
何を隠そうティゲール先生自身がティーチャーズ・デイのアシスタントを買って出たことがあるのだそうだ。だから先生、インキーにすっかり自己投影して肩入れしちゃってたんですね。サラマン先生に君付けで呼ばれるティゲール先生、良い……。
「先生たちはどうして悪い生徒にも我慢できるの、嫌にならないの、ウソップとかヤムヤムみたいな」
「あれはひどいなあ。うんうん」
そこ、ひどいのは認めるんだw 「だけど、悪いことばかりじゃあないんだよ」と、先生方は3人そろって語り始める。
「活発な子(HDS)がいて、おとなしい子(E)がいて、いたずらっ子(YUT)がいて、みんな大切な個性なんだよ。毎日驚きがある」
んんん、ひどいいじめも「個性」だから、でまとめちゃうの……?? いろんな子がいるから楽しいというのは本当にそうだと思うけど、それはあくまで大人の視点であって、そのいろんな子に苦しめられてる子供であるインキーに今それを言うのはちょっと酷かな、と私は思っちゃうんですが……。この後「個性」を生かしたオチがつくかというとそうでもないし、若干ここだけ取って付けたみたいな感じがする。まあでも、今回に限らず21世紀なりたてのあの頃って「みんなちがってみんないい」がやたら流行ってたような気がするんですよね……。
カフェテリアでのパーティーがメインイベントってところでしょうか。原稿片手に司会を務めるインキーですが、
「こんにちは、ぼくインキーです」
「そんなのとっくに知ってるズラ!」
終始こんな調子で、ティゲール先生はひたすらアワアワしている。司会進行はノイジーの専売特許だったからなあ、まあ、声は同じだけど。
インキーが「先生への感謝の言葉を発表してもらいますっ!」とアンプーを雑に指名すると、当てられたアンプーは一瞬驚きつつ、マイクの前で作文を読み始める。スピーチのときは語尾プーなしでしゃべるアンプーなのだ。
「僕は、ティゲール先生に、ふしぎを作る楽しさを教えてもらいました、それから、親友のワットくんとケンカをしたときも、いろいろ相談に乗ってもらいました。何よりも、友達の大切さを、学んだので、先生に感謝しています……」
ケンカって写生のときの件かしら。あのときワットたちだけじゃなくアンプー側も先生に相談してたのかな……しかし、聴衆はそれどころではない。またしてもハエ軍団である。「これじゃあまりにもインキーがかわいそうです!」って、まずアンプーがかわいそうだろ。止めに入ろうとしたティゲール先生を、サラマン先生が制止する。
「みんな、静かにしてー!!」
突然のインキーの大声に静まり返る生徒たち……と思いきや、逆に笑い出す極悪トリオ。いや、これはそういう名前だからじゃなくて、本当に極悪だ……
「聞いたか! インキーが静かにしてだってさあ!」
「お前が先生になりたいなんてヘンテコなこと言い出すから悪いんだよ」
「そうズラ。冴えないインキーが先生なんて笑っちゃうズラ!」
「だいたいなんでそんなこと思いついたんだよっ!」
するとインキー、顔をピンクに染めて言う。
「ぼ、僕なんてロッカーの下に落ちてるただのインク瓶だもん。この学校に来て先生に教わってなかったら、もうとっくに忘れ去られて消えちゃって……。のろくてドジで、でもこんな僕でも、先生のおかげで頑張ろうって思ったんだもん。だから僕も、僕みたいな子がいたら、先生に教えてもらったように教えてあげたいって思って……。でも、僕のせいでティーチャーズデイがこんなになっちゃって、先生ごめんなさい。僕、先生になるの諦めます。だからみんなもちゃんと先生のこと考えて!」
そうなんだよなあ、みんなもう本当は死んだも同然の状態で、学校に来て初めて再び生きる道を得たんだものな……子供たちにとって先生は唯一頼れる保護者みたいな存在なんだよね。
ウソップは「俺だって物置に転がってるただのスプレー缶だー!」と床を叩き、ヤムヤムは滝の涙を流しながら、「スパイバエたちを手なずけることができたのも全部全部ペギナンド先生のおかげだよ!」とモニターに抱きつき、ワットも「今の僕たちがいるのって全部先生のおかげなんだ!」と涙が伝染していく……こういう場面、ドッキーがいると絶対に顔が映らないんですけど、「決して人前では涙を見せず、一人でこっそり泣く」という設定を丁寧に拾ってくださってるんだなあと感心しますね……。
みんな先生に駆け寄っていく中、極悪トリオはインキーの元へ向かい、
「お前絶対先生になれ!」
「オラたちが応援するズラ!」
「諦めんなよ!」
あれだけ極悪だったのに、こう単純なところがあるから憎めないんだよなあ……。ティゲール先生も「よく勇気を出したな、偉いぞ!」と涙ながらに褒めてくれて、インキーは先生になりたいという思いを新たにするのであった。そしてもう一人、インキーに声をかけるのは……
「さっきのスピーチとってもステキだったわ。感動しちゃった!」
リディーちゃんがいきなり手なんか握るから、インキーは完全に沸騰してしまいました。先生になる前にこれは直さないとな!
インキーは確かに気が小さいところはありますが、かなりガッツのある努力家なんですよね。28話の不思議チャレンジランキングも悪くない成績だったし。何より今回、ティゲール先生がいい先生すぎるよ……。豪快で強烈だけど洞察力があって、いつも弱い者に寄り添う視点を持っていて。涙もろいのもそういう過去があるからこそなんだなあーと思うと深みが増して見えて、ますます好きになってしまったわ……。
ふしぎコレクション「先生になったインキー」
今夜のふしぎはインキー先生じゃ!
先生になったらあの姿のままでモニターの中に映るのか。とりあえず教育実習はイエローリザード以外に行くことをおすすめします。
アイキャッチ:Q
ローマ数字の古臭い時計、針は0時5分。