#26 ケロケロ読書週間

返却機さん、ケロケロというくらいだからカエルのイメージなのだろうか。本を返す、返る、カエル……?


第26話「ケロケロ読書週間」

(脚本:荒島晃宏、絵コンテ:奥山潔)


読書週間なので極悪トリオも本に親しんで(物理)います。本でだるま落としをして「どーだズラ!」「やるじゃねえか」こう言い合える関係はヤムヤムとチュービーだよなあ。天井高く積み上がった本の中には『美女と巨大モンスター』や『不思議乗物図鑑』、ジーニーの中身の色違いみたいな本もある。

DATA ROOM=資料庫はものものしくKEEP OUTって鎖張ってますが、返却機さんは普通に出入りできるのか。扉をバーンと開けて登場した返却機さん、飛んできた本をパクッと片付けてすごむまではよかったが、ウソップに本タワーを崩されて「あーあ、本を守らなくちゃいけねえのに」「図書室の番人失格ズラ!」。

さすが策士ウソップと思っていたら「さーてウソップ、おごってもらうぜ。本を倒したからな」……親分、ウソップのそーいう扱いがだんだん板に付いてきたよね。肩を落としてトボトボ後を追うウソップ。と、同じ声なんですけど、

「ゼリービーンズ食べる?」

「ビンセントさん。うるさかったケロ、読書の邪魔をしてすまないケロ」

「ゼリービーンズ食べる?」

「お言葉に甘えるケロ!」

微妙に会話の噛み合わないビンセントさんです。器用に伸びる舌でゼリービーンズを口に運ぶ返却機さんは笑い方がティゲール先生似。


「読書週間も今日までですが、生徒たちはどのくらい本を読みましたかな」

職員室で何やら難しそうな本を読んでいるサラマン先生、頭だけなのに本を閉じて手を後ろ回す動作が見えるようでなんかかっこいい。返却機さんは黙っていてもくるくる動く大きな目から、座標軸が骨になったグラフを映し出す。

「前回までは皆さんたくさん読んでいたケロ。それが今回……」

ピロロロ↓

「この通り大幅に減りましたケロ」

前回というのも今の生徒たちのデータなんだろうか。先生方、あまりの結果につついたり唸ったり、本能むき出しで怒り始める。

「これでは校長先生に叱られてしまうわ!」

「図書室の番人のくせに、本の楽しさをPRしてないのかー!!」

一冊も読まなかった生徒さえいると聞き、ペギナンド先生、もはや我を忘れて怒り狂っています。画像のヤムヤムは口が半開きでみょーにかわいい。

「あなたは番人失格です! クビですッ! リストラですッ!」

「嫌だケロ! ここが好きだケロ!」

ちょっと今回は先生方が異常に大人げないな。サラマン先生だけは大人な対応というか、むしろ若干腹黒にすら見えるんですが。

「今日中にあの3人に一冊本を読ませてください」

「もしできなかったら……?」

「利用者のいない図書室に番人は要らなぁーい!!」


一人で図書室の片付けをしていたビンセントは、片付けながら座り込んで本を読み始めてしまう。

「図書室の番人の『必殺技』教えます」

動くたびにゼリービーンズがカラカラ鳴るのも、二頭身の身長の半分くらいある本を読んでる姿もかわいいのだ。


約束通りおごりのデザートをむしゃむしゃと食らうヤムヤムとチュービーの隣で、空っぽのがま口財布をひっくり返してトホホなウソップ。返却機さんはみちみちエレベーターに詰まっていると案外でっかく見えるなあ。ヤムヤムは咄嗟に身構えてますが、チュービーは食べるのに熱中して若干反応が遅いw

抵抗も敵わずピンクトードクラスへ連行される3人。机に本を置かれてチュービーとウソップはやたらビビってますが、ヤムヤムは全く動じずにガン飛ばしてます。手遊びに本を持ち上げてみるウソップ。ヤムヤムは腹痛のふりをして2人に耳打ちする。

「楽しく読むケロ」

「「「やーなこった!」」」

お人好しな返却機さんの目を盗んで本を放り投げるの、ほんと手の付けられない極悪って感じです。机レース用の取っ手を取り出すと、煙幕スプレーを張って机ごとまんまと逃げていってしまった。


骨山で返却機さんの相談を受けるHLPGV。スピモンが外されてるのは、まあ本読まなさそうだからなあいつ……それはともかく、ジーニーが余計なことを聞き始める。

「ところで返却機さん、一番本を読んだのは誰ですか?」

「またまたぁ、自慢しようと思って」

「いやいや。ま、聞かなくても一週間で10冊!も読んだのは私だけだと思いますが」

返却機さん、わざわざ0冊の3人もグラフに入れてくれました。ヒッキーが2冊だけって意外な気もしますが、アウトドア派っぽいから分からないでもない。グラフの中でまでいちゃついてるHLを差し置き、ピラニンの5冊は健闘しているのではないか。

P「あ!」

G「えへへへっへっへー。ア゛!?」

\♪~/

V「あ」

ビンセントさん、週15冊なんてジーニーの本の中身も飛び出るレベルですよ! ちっちゃく拍手を送るリディーにも構わず、ビンセントはかなり上ずった調子で「本には妖精が住んでるんだよ」……あーこれはスイッチ入っちゃいました。呆然とするリディーといい、急に饒舌になるビンセントといい、このたたみかけるような流れは何回見ても面白すぎる。

「ものすごく遠くの宇宙……大昔……海の底……魔法の世界……怖ーいおばけ屋敷……本を読むと妖精が心に入っていろんなところに連れてってくれるんだよ~!」

返却機さんとジーニーが深くうなずく一方で、リディーは「ビンセントってそういう性格だったの……」とドン引きのお手本のような反応。2Dアニメな本の世界は『のってけエクスプレッツ』を彷彿とさせます。

ヒッキーに呼ばれて我に返り、空気を読んだビンセント、仕切り直しに「ゼリービンズ食べる?」。人数とゼリービーンズの数が合わないと思ったら返却機さん一人で6粒も食ってる。

「僕の瓶には本の妖精が集まってるんだ」

このセリフ、ここではただのビンセントの妄想の話かと思わせるのがミスリード。ゼリービーンズもらってないジーニーですが、「ヤムヤムたちに本を読ませる手を思いついたです!」と提案した作戦は……


「ア~~~~~ヤムヤム助けて~~~」

「助けに来たぜリディーちゃん!!」

リディーの絶妙な演技っぷり、ここぞとばかりに駆け付けるヤムヤム、もう隅から隅まで面白すぎるって。教室に突如現れた本のオバケに食べられそうなリディー……の後ろで糸を引くヒッキーとビンセント。表紙には見えないところまで丁寧にGIANT BOOKと書いてある。なお今回、ここでなぜかピラニンがフェードアウト。

「で、でけえ……」

「うかつに近づけませんぜ……」

ジーニーは台本まで用意して、牙のついた変声メガホンと返却機さんの舌の連携プレーでオバケっぽさを演出。

「コノ子ヲ返シテホシケレバ、本ヲ読メー」

ヤムヤムに渡されたアルファベットの本は26文字の後にちゃんと?が入ってる。ウソップは"Sunny Days"とファンシーな表紙の本、チュービーの本は"Who am I?"とホラーっぽい雰囲気。リディーちゃんのためにやむを得ずとは言いつつも、まだなんとか読む努力はしていそうなウソップはともかく、ヤムヤムは恐る恐る本を開いたっきり角度をあちこち変えてページをにらむばかり、チュービーなど表紙を開きもしないで船を漕ぐ始末。

Y「むかしむかしあるところに…むかしむかしあるところに…」

U「ふかいもりのおくに…」

チュービー(多分)はバナナがどうのと言ってるのしか聞こえなかったんですが、ヤムヤムから奪った本の持ち方がどう見ても読もうとしてる角度じゃねえ。文字が読めないヤムヤムもヤムヤムだけど、返事しちゃうジーニーも大概なんとやらだよ!

「全く、頭のいいやつはいねえのか!」

「ここにいますー!!」

ヒッキーの制止も聞かずに飛び出して、一人で本を支えていたビンセントも耐えきれず、クサい芝居がバレてしまった。本の中からリディーが這い出して「今回だけのお願い! 返却機さんがかわいそうでしょ!」と直談判するが、あのヤムヤムが今回ばかりはなんとリディーちゃんの懇願でも動かないのだ。「読書だけは大っ嫌い」にチュービーも力強くうなずく。

子分たちは返却機さんに同情するような目をしてみたり、目を見開いて驚いてみたりしてるんですけど、ヤムヤムだけは頑なにポーズを崩さなくて、やっぱり親分はそういうとこあるから親分なんだよなあと思う。

「彼は優秀な番人なんです! いなくなるととっても困るんです」

「じゃあ証明してもらおうか」


って、いくら相手からの条件とはいえ本投げはOKなのか……?

にしても返却機さんのアクションシーンは素晴らしい。360度見渡せる目、意外とアクロバティックな身のこなし、そして自在に動く舌。腕を回して投げるウソップ、横投げのチュービー、どの本も軽々キャッチ。カメラ回しも凝っている。

絶望的な顔のチュービーの横でヤムヤムは「やるじゃねえか…」とやはり態度を崩さない。相変わらず遊びにだけは本気なんだから! 息が切れてきたところで作戦会議に入る極悪トリオ。


「ゼリービーンズ食べる?」はいつも同じ調子に見えて、その度にビンセントなりの気遣いの表現になってるんですよね……力尽きた返却機さんを応援するかのように、『必殺技』の本から本当に妖精が飛び出した。図書室中の本の妖精が音を立てて瓶の中に集まっていく。キラキラ光る半透明のゼリービーンズを、「頑張ってね、返却機さん」と言葉少なに手渡すビンセントのかっこよさよ……。

「リフレーーーッシュケロ~!」

極悪トリオの小芝居も良いんだ。親分の「やれ」を受けて、「はあーっ!」と気合を入れつつニンマリ顔で本をつつくチュービー……

返却機さん、返却機というくらいだから、口の中に入った本はそのまま本棚にワープする仕組みにでもなっているんだろうか。崩れていくタワーに上から丸ごと食らいつき、返却機さんは見事一冊残らず受け止めた。「君は最高だよ!」とヒッキーも飛びついて大喜び。


校長、オープニングや特典映像で毎回出てくるのでレア感ありませんが、本編登場はだいぶ久しぶりです。

「ビンセント、どうじゃ、卒業して本の妖精を昼間の学校に広めてみないか?」

ピラニン恐竜のときは「居場所がないのでやむを得ず」くらいの感じだったので、本当に実力で卒業を認められたのは本編中では彼が最初で最後じゃないだろうか。というかヒッキーは絵を実体化できるようになってなお「卒業に一歩近付いた」程度なのに、結局卒業の基準って校長の気分次第……?

「ビンセントには負けました」と素直に認めるジーニーも良い。ジーニーは自信家だけど、それでいて他人に対しては懐がとても広いところが希有な器だと思います。が、無欲なビンセントは「あの、まだ読んでない本があるから卒業はしません」とあっさり答えるのであった。


こうしてみると荒島脚本・奥山演出回(最終回もこの組み合わせ)は安定してテンポ良くまとまっている気がします。本を読めって直接言われるより、読んで楽しそうにしてる人の姿を見せられた方が勝手に読みたくなるもんなんだよね!


ふしぎコレクション「本の妖精」

今夜のふしぎはビンセントじゃ!

「親分、ちゃんと読まなきゃ妖精は出てこないみたいですぜ……」

「うるせえ! お前も同じところばっかり読んでんじゃねえ!」

「……妖精さんこんにちはズラ~(ウトウト)」

読書する気になったからって最初からそんな字だらけの本で頑張らなくてもいいのよ!

その後ろでキラッキラしているビンセント、フタを開けっぱなしてものすごい量の妖精を集めている……理由は何にせよ本を読むのは良いことじゃ!


次回予告

「ティゲール先生だ! みんな元気か? アンプーとワットがけんかしたんだ。君たちも友達とけんかすることはあるかい?」

もう、これだからティゲール先生大好き……

「ああ、青春は素晴らしい………おぉおぉぉぉぉぉ!!」


<まえつぎ>