「あなたをふりむかせるから」

レポート:アフリカ料理店の日々

報告者: 福井裕貴(2018年度入学)

図1: アフリカ料理店の店構え。向かって右隣の料理店は、オセアニア料理店。

2018年度外語祭のアフリカ料理店「なたをふりせるから」は、11月21日(水)から11月25日(日)まで営業した。 5日間は、すっきりとした秋晴れの日でスタートした(図1)。涼しい朝と色がついてきた木々、特に銀杏がとてもきれいだった。

毎朝5時に起き、 とてつもなく肉臭い部屋のなかで、大量の鶏肉を切る。そしてたくさんのブリック(図2)をお盆に載せて運ぶ。とてもしんどかったけれど、終わってみるとあっという間だった。

図2: ブリックは、北アフリカ・チュニジアでポピュラーな料理。じゃがいもと卵を包んだ三角形揚げ春巻き。アフリカ大陸はアフリカ大陸なのだが、北アフリカは正確に言うと北アフリカ・西アジア専攻が対象としているので、割とグレーゾーン。

最初の2日間、試作会と勝手が違うので、少し緊張しながら始まった平日の日々。予想に反して、人が少なく、手が空いた時間に他の専攻の料理店を食べ歩きした。ペルシャ、アラビア、トルコ、ドイツ、カンボジア、中央アジア、そして隣のオセアニア。気づくとかなりのお金を使ってしまい、少し押さえようと反省した。

僕はマフェというセネガルのシチューを担当していた。マフェ作りは、まず肉と野菜を切ることから始まる。鶏肉を、包丁で無心に一口大に切っていく。ゴム手袋を着けた手にヌメッとした感触が伝わる。

最も大変なのは玉ねぎの仕込みである。玉ねぎを5日間平均で約30個をまず、四等分にし、フードプロセッサーで細かくしていく。包丁でみじん切りにするのは、とても大変だと言うことで導入されたフードプロセッサーだが、何回もやっているとさすがに目が痛くなってくる。目が開かなくなり、大粒の涙が溢れてくる。

材料の下ごしらえが終わるといよいよガスコンロに火をつけて、調理を開始する。少し肌寒い朝に、コンロの火はとても暖かく感じた。

販売開始と同時にまず、ブリックが売れていった。特に1日目と2日目は、平日であるため、一般のお客さんと言うよりかは、外大生が多かった。それで、前評判の高いブリックがどんどんと売れていく。フライヤーで揚げられた瞬間に買い手が決まっていく。そのため、ブリックの生産が追い付かず、何度も準備中でお客さんを待たせる他なかった。そのくらい売れていた。

ついに、三連休が、始まった。開店前からできる行列。1日目、2日目の経験からブリックが売れていくのかと思いきや、ダチョウステーキが、どんどんと注文されていく。ダチョウステーキを待つ長蛇の列。マフェはぼちぼち売れていく。この傾向はずっと3日間変わらなかった。ダチョウステーキを求める列は一向に途切れない。1日目、2日目のように他の料理店を回ろうという考えが甘かった。

タスカービールもどんどんと売れていった(図3)。「ビールなんて売れるのかな」。なんて思っていたが、その予想に反してどんどんと売れていく。昨年は2ケースも余ったらしいので、「余った分をみんなで飲もう」なんて考えていたが、そんなことは夢のまた夢だった。タスカービールは四日目にして、残すところあと1ケース、というところまで売れていた。

図3: タスカービール。ケニアで作られた爽快感があるビールらしい。実際には飲んでいないので何とも言えない。

それと相反するように、ルイボスティーは売れ行きが良くなかった。ルイボスティーを買うとペットボトル一本あたり0.4円がアフリカに寄付されるのだが、あまり買ってくれなかった。タスカービールに寄付をつけても面白かったかもしれない。というか、すべての料理に寄付をつけても良かったと思う。

4日目に、信じられないニュースが入ってきた。チェコ、ヒンドゥー、フィリピンの三料理店が、1日営業停止となったというのだ。理由を尋ねると、前日仕込みが外語祭実行委員会(外実、ガイジツと略称される)にばれたのだと言う。警告や注意もなく、一発レッドカード。外実の恐ろしさを知った。それからと言うもの、外実が、テントを来るたびに、何かミスをしていないだろうか、と気になってしかたがなかった。その3つの料理店はとても気の毒に、おそらく赤字になってしまったのではないか。

ついに迎えた5日目、これで最後だと気持ちを奮い立たせ、最後のマフェ作りに挑んだ。さすがに手慣れてきた作業。いつもよりスムーズな気がしていたが、以外と時間がかかってしまった。しかし、目標の販売数を突破し、マフェは営業が終わった。最後まで、閉店時間の18時まで残ったのは、ルイボスティーだった。18時が近づいて来るにつれ、各料理店が、売れ残りを歩き回り、販売し始める。ある料理店は値段を下げ、ある料理店はそのままに。そのままの値段で売れるわけないやろと半ば思いながらも、僕も部活の友達が売っていた分を買った。

僕は、店長の代わりに、外語祭を締めくくる最後のプログラム、フィナーレで一分間のスピーチをすることになった。とても緊張しながら、壇上に立ち、何かをしゃべった。あまり覚えてはいない。覚えているのは、オセアニア地域専攻が人気料理投票で一位を獲得したこと。自分のことのように嬉しかった。「学長賞とかとれないかな」と思っていたが、それは外語祭実行委員会が獲得していった。

外語祭の5日間は朝早くから準備をして、そして夜遅くまで片付けと次の日の準備をしたのでとても大変だったが(図4)、合間、合間にほかの料理店を回ったことや、みんなで協力して分業をしながら5日間をやり切ったことはとてもいい思い出となった。また、たくさんの方に買って食べていただいたし、とても美味しいと喜んでいただいたので頑張ってよかったと思った。来年は他の料理店をもっともっと思う存分楽しみたいと思う。アフリカ料理店に来ていただいた皆様、食べていただいた皆様本当にありがとうございました。

Thank you so much. Merci beaucoup. Asante sana. አመሰግናለው De rien!

図4: ガレリア(大学講義棟内の広い廊下の名称。イタリア語で「回廊」という意味。)に飾られていたアフリカ料理店の垂れ幕。個人的にカラフルなアフリカ大陸がお気に入り。

最終更新:2018年12月3日