計算上平幕の成績優秀者を上位成績優秀者と総当たりにするのは不可能だろうということは分かった。
そうなると次に考えたいのは、可能性として不当な平幕優勝が発生しうることを前提に、それをできるだけ少なくしようという方向性だろう。
そして、実際にあった星取において不当な平幕優勝の発生を完全に防止できないかどうかは未だ示されていない。まずは、それを考えたい。
対戦においては系統別総当たり制から部屋別総当たり制に変更されたのは大きな意味を持つだろうから、1965年1月場所以降で調べてみた。
ここで全休含む16人圏内と全休除く16人圏内とを挙げた。
全休含む16人圏内は、在位者上位16人、全休除16人圏内は出場者上位16人と表現すれば分かりやすいだろうか。
いずれが適当かを考えたい。
両者の差異は、全休者が出現したことにより上位と対戦が組まれる力士が、上位力士として扱われるか下位力士として扱われるかの違いである。
そのような力士は上位力士として扱うべきだろう。そうなると全休者除く16人が適当のように思われる。
さらに、皆勤者のうち16人圏内ということもありえる。上位力士の途中休場により上位力士と対戦がある力士を上位力士と扱うということである。ただ、これは皆勤者のうち16人圏内に在位する力士が、実際にどれだけ上位と対戦があるか不明であり、不当だろう。
まずは中日で考えてみた。
中日で下位全勝力士は最大1名。その対応は可能だろう。
下位1敗以上の力士は最大3名。この辺りが対応可能な下限だろうか。
しかし、私は中日1敗力士を上位に当てるのは躊躇する。この場合、上位に当てたことによる負け越しがあり得るからである。
もちろん上位に当てた時点で下位の成績優秀力士に不利になるのは当然の話である。が、それにより負け越しになるのは不当と評価する。
というわけで、中日の全勝、九日目の1敗を上位に当てるものとしたい。
もっとも、中日全勝ではない九日目一敗の最大数は三人。こうなると無条件で上位に当てるのは躊躇する。
そこで、1敗は、最優秀成績の場合、つまり、上位に全勝がいない場合のみとしたい。
これは以降も同様としたい。十日目以降上位に1敗以下が不在のときの下位の2敗、十一日目以降上位に2敗以下が不在のときの下位の3敗、十二日目以降3敗以下が不在のときの下位の4敗を当てることとする。振り返って中日全勝の場合はかならず最優秀成績だから、整合性は保たれている。
以下、下位の勝ち越しかつn日目終了時に黒星がn-8より小さい力士を、「対戦資格力士」という。上位最優秀成績者と同星以上の対戦資格力士を「上位対戦力士」という。
対戦資格力士が編成時に上位最優秀成績力士と同星以上であるときには、上位対戦力士となり、上位戦を組むということである。
前述のように、横綱大関は基本的に千秋楽に終了する総当たり戦であり、下位をこれに当てるとすると、一定の力士との対戦を繰り上げるか、崩さざるを得ないから、これをどのような規則で行うべきかを考えたい。
なお、現実の編成では、横綱大関の人数が増えてきた場合、最近では、大関戦を中日以前の前半戦で1番2番組むという編成になっている。
これは現実の割崩しが、下位成績優秀力士を上位力士と何人か対戦させることを目標としているからであり、その目標のためには確かにそれで概ね事足りるのだが、今は上位最優秀成績力士と対戦のない不当な平幕優勝の阻止を目標にしており、そうなると優勝する可能性の高い力士を当てる必要があるから、このような編成では不十分である。
中日全勝の下位力士を上位と当てるのは十日目であり、これを含めて残り6日、7人の総当たりが可能である。
下位の中日全勝は最大2名。
1名の分なら、そもそも十日目の時点で横綱や大関が6人以下であれば割を組めるし、そうでない場合でも、横綱大関同士の対戦を前に組めば対応は可能となるだろう。
九日目の1敗力士は5日6人、十日目の2敗力士は4日5人、十一日目の3敗力士は3日4人、十二日目の4敗力士は2日3人となる。
さしあたり、6人までを千秋楽まで総当たりとし、それ以外の大関は中日以前に当てる編成を考えたい。
では、7人以上の場合、どのように事前に組む割を決めるか。
6-3-1-1 出場者番付順
簡明なのは、出場者番付上位から数えて7番目以下の大関を千秋楽までの総当たりから外すということだろう。
外す力士はそれでよいが、誰を相手に早い時期で割を組むべきか。
不当な平幕優勝の阻止のため最も効率的なのは初日から上位戦を全て組むことである。が、これにはそこまでする程の話なのか?という感がぬぐえない。
そこでもう少し弱い繰り上げを考える。
横綱や大関がたくさんいる場合でも、実際問題優勝に絡む力士はそう多くない。
この10年でいえばだいたい白鵬が優勝するし、最近でも白鵬と鶴竜といえばだいたい当たる。
というわけで、優勝しそうな力士のみに当てたいのだが、どのような成績の力士がそれに該当するのか。
このように、横綱大関の番付下位の力士を総当たりから外す編成を前提に、その力士と当てる横綱大関の条件を「下位大関対戦条件」ということにする。
ずいぶんと適当だが、1965年以降、優勝した力士が当場所を除いて6場所以内に優勝している確率は70%。
これでもよいような気もするが、何となく8割を念頭に置いていたので、もう少し拡張したい。
上の優勝した力士に加え、当場所を除いて2場所以内の次点以上の力士を加えると、全優勝者の81%となった。
これならば3場所以内次点以上も似たような数字になるのではないかと思い調べてみたら、78%となった。
当初想定していた8割には満たないが、分かりやすい場所数で揃えるのが簡明だと思われる。
というわけで、下位大関対戦条件は、3場所以内に次点以上の成績がある力士と総当たり以前に対戦するものとする。
6-3-1-2 番付順と成績の併用
このような方法を考えたが、繰り上げる力士が大関最下位力士というのは硬直的すぎないだろうか。
もう少し緩和して、繰り上げられる候補の力士を複数用意し、その中で成績の低い力士を総当りから繰り上げる編成を考えたい。
これも、繰り上げられる候補の力士の条件は色々考えられる。
まず、大関の2枚目以降という考え方。第二に、下位大関対戦条件である、前述の3場所以内次点以上のない力士。第二については、それがいないこともありえ、その場合は番付順としたい。また、それでは結びの一番が東西正横綱でなくなることもありえる。これも一概に不当とはいえないが、現実との乖離の観点から、それはやめておきたい。そして、東西横綱だけ繰り上げの候補から外してもよいが、地位の違いを重視して、横綱については繰り上げはないものとする。
さらに、下位成績優秀力士が出現する見込みがあれば、柔軟に繰り上げていきたい。
上位対戦させる相手はどのように特定するか。
前述の目的、すなわち、場所における上位最優秀成績力士と、その力士が特定しない場所中の段階において当てたいわけだが、その力士はどのようなものか。
分かりやすいのは、その時点における最優秀成績力士が、その時点では場所終了時の最優秀成績力士となる可能性が高いとはいえるだろう。
それが編成時の上位最優秀成績者が同数いる場合に、誰と当てるかを考えたい。
番付と前場所成績は通常対応している。が、大関はどれだけ好成績を残しても横綱は超えられない。
現実には横綱はそこまで酷い成績になる前に引退しており、番付順でもそこまで不当なことにはならないと思われるが、ここでは優勝者のみは大関を優先させることにする。
以上、編成時の最優秀成績者のうち、前場所優勝者がいるときはその力士、いないときは番付最上位者とする。
なお、これについては横綱大関ではない上位力士であることがありうる。これは総当たりを崩さないのでむしろ望ましいが、逆に総当たりからすれば早い時点で上位力士と当たり、千秋楽付近では逆に余裕ができるので、そこまで下位で優勝争いの力士がいたらその時点で当てれば良い。そこで、横綱大関ではない上位最優秀力士とは上位対戦資格力士との対戦を組まない。
もう一つ、朝青龍白鵬と一強時代を長く経験している現在の感覚かもしれないが、時代時代に最強の力士がいて、たいていはその力士が優勝するといってよいのではなかろうか。
そこで、そのような力士を特定したい。これを以下第一人者という。
第一人者の成績を高く設定するほど、その力士が場所における上位最優秀成績者となる見込みは高くなるが、他方そのような条件をみたす力士がいる可能性、ひいては第一人者が対戦相手の指定という役割を果たす頻度は小さくなる。
この第一人者を、編成時の上位最優秀成績力士に優先して対戦させるべき力士であるとすると、要は、最上位の成績ではなくても、結局優勝するのはこの力士だろうと思わせるような力士がここでいう第一人者となる。
そのような中で、前6場所のうち3場所優勝というのを条件とする。
これが複数いる場合も考えられるが、そのときは前場所優勝者の方を第一人者とする。
ただ、2差以上差がついていた場合は少し逆転が厳しいものとして、下位との対戦は組まない。
6-4-3 まとめ
以上をまとめると、対戦資格力士を当てる上位力士は次の優先順位とする。
1.前6場所のうち3場所優勝かつ編成時最優秀成績から1差以内
2.編成時上位最優秀成績者のうち、前場所優勝の者
3.1.2を除く編成時上位最優秀成績者のうち、番付最上位の者
の順とする。4番目以下は、それを除く上位最優秀成績者のうち番付最上位の者とする。
これを、「下位戦指定力士」という。
上位対戦力士が2名のときは、以下のようにしたい。
下位戦指定力士のうち、上位最優秀成績者の人数と優先順位1の者の合計人数を上位対戦人数としたい。
また、下位戦指定力士を上記の優先順位順にj1,j2,j3…、上位対戦力士を番付順にk1,k2,k3…としたい。
a.上位対戦力士同士の対戦が可能である場合
1日目 j1対k1、j2対k2
2日目 k1対k2
b.上位対戦力士同士の対戦が不可能である場合
1日目 j1対k1、j2対k2
2日目 j2対k1、j1対k2
対戦カードが同部屋のときは、下位戦指定力士の順位を1位下げた力士とし、それが同部屋だったときも同様の処理とする。
上位対戦力士が3名のときは、以下のようにしたい。
a.上位対戦人数が3人の場合
a-1.k2とk3が対戦可能
1日目 j1対k1、j2対k2、j3対k3
2日目 j2対k1、k2対k3
a-2.k2とk3が対戦不能かつk1とk3が対戦可能であるときは、
2日目 j1対k2、k1対k3
a-3.k1とk3も対戦不能であるときは、
2日目 j1対k3、k1対k2
a-4.全て対戦不可能であるときは、
2日目 j2対k1、j3対k2、j1対k3
とする。
b.上位対戦人数が2人の場合
b-1.k2とk3が対戦可能
1日目 j1対k1、j2対k2、k3は自由
2日目 j2対k1、k2対k3
以下、下位力士同士の対戦が不能な場合の処理は↑と同様
c.上位対戦人数が1人の場合
1日目 j1対k1、k2対k3
2日目 j1対k2、k1対k3
なお、編成翌日の結果により、2日目に上位対戦資格力士ではなくなった力士がいた場合、横綱大関の割が崩れるときは上位対戦から外す。
6-5 上位対戦力士が出現した場所
以上の条件で組む編成を割崩し1としたい。
未だ確定した条件ではないが、厳密に条件を組むのは困難のように感じたので、とにもかくにも再現してみたい。
中日横綱大関7人以上出場で7日目全勝者がいたとき、早めに上位対戦を組むことを考えていたが、実例が著しく少ないので省く。
6-6 代償措置としての三賞
制度論だが、この上位と当り、相対的に番付編成で不利益となる代償として、上位対戦を組んだ力士には三賞受賞するというのがバランスが良いように思われる。
以下未完