さて、そんな適当な賞なら特に縛りを持たなくても良いのではないか、思われるのだが、実際には受賞力士には制限が掛かっている。すなわち、幕内力士、関脇以下、勝ち越しの三つである。
最初のは良いだろう。一般に力が高く注目を受けるべき最上位のカテゴリの力士が対象なのは当然だろう。残りの二つはどういうことなのだろうか。
まず、関脇以下という括りである。
一般論として、幕内で好成績や技能が優れているのは大関以上であることが多いだろう。その結果、毎場所敢闘賞や技能賞は大関以上のものとなり、関脇以下の力士が受賞するのは期待できないことになる。
このような事態が不都合という価値判断があって関脇以下という制限がついたのだろう。
すなわち、関脇以下の、換言すれば優勝には手の届きにくい力士に表彰の機会を与えるところに制度の意義があり、だから関脇以下に限定されるとするのである。
このような意義を認めるとすると、受賞者がでないような厳しい基準は疑問である。関脇以下の力士を表彰する制度なのだから、表彰者が出ないような高いハードルを設けるべきではない。
なお、大関昇進が3場所33勝で動いていることからすれば、優勝争いできる力士と大関とは制度上若干の齟齬がある。が、その程度のズレは許容されてよいように思う。
次に、勝ち越し制限について。
この制約が課されるのは、三賞が場所単位で課されるものであるからで、負け越した力士を場所単位の成績で表彰することに違和感があるということにあるだろう。
この価値観は基本的に正当と思われるが、星数が少なくなるほど段階的に表彰の価値が下がっていくと考えると、勝ち越しで区切る合理性はあっても、必然性まではないように思える。
そして、技能や敢闘は特に不自然ではないが、殊勲賞は実態として、対優勝者戦勝利の一番が重視されているから、対優勝者戦勝利のある負け越し力士を三賞から除外するのは適切なのだろうか、という疑問が生じる。