前述のように、相撲の勝負の大原則は、人体のうち足の裏以外の部位が地面に着くか(第6条)、足の裏が土俵外に着いた(勝負規則第7条)方が負け、ということである。以下、前者を着足、後者を着体、両者によって勝負を決定するルールを着地原則としたい。
さて 、「死に体」という概念がなぜあるのかを考えたい。それは、着地原則によって導かれる勝負結果に不当なものがあり、それを是正すべきだという考え方があるからではなかろうか。
これを裏からいえば、着地原則以前にあるべき勝負規則というものがあるのだろう。そして、着地原則による勝負結果がその勝負規則に基づく勝負結果に反するから「死に体」という概念が考え出されたのではなかろうか。このあるべき勝負規則を、「実質的勝負規則」としたい。
では、実質的勝負規則とは何か。色々な説明がありえるだろうが、ここでは技を決めた者が勝ちである、という捉え方をしたい。
基本的には相手を着地着体させることが技として必要であり、そこまでしてはじめて相手の負けになるが、一定の場合には、相手を着地原則で負けに追い込むことまでしなくても技が決まっていると評価すべき場合があり、相手に技を決められた場合が「死に体」であるとする。