分類にあたっての観点を示したい。
着地原則の例外である死に体は、一定の場合に技として相手を着地原則に追い込むことではなく、その前の時点で技が決まったと評価すべきものとした。そこで、そもそも技ではない自爆的な着体着足については、死に体による相手の敗北時点の繰り上げはないものとしたい。
現実との乖離が小さいと言っておきながらやや飛躍が激しいかもしれないが。
両足が地面から離れておらず、次に土俵内に足を送れない状態を、重心喪失としたい。死に体の基本類型である。
先に説明したところであり、そこでは、相手との位置関係によっては、死に体にはならないものとした。
死に体が採られにくい典型例は、土俵際へ押している側の力士が、足の裏が返り、足を送れない状態になった後、相手が着足し、その後押している側の力士が着体するような場合である。この場合、あまり死に体は採られない。もっとも、これについては両足が離れていても前傾であれば、あるいは相手を前に押しているときは足が送れる状態で重心喪失ではないという説明も考えられる。
後傾については、前傾よりも死に体が認められやすくなることはないということを除けば、前傾と同じ説明になるだろう。
前述のように、足の送りやすさで区別するので、横に飛んだ場合も後傾として扱う。
状況によっては、重心を喪失した後でも死に体にはならない。これは後述する。
土俵空間の外に出た場合も、一般に次に土俵内に着足することが困難であり、重心喪失に含まれ死に体となる。
というのは死に体を統一的に説明する理屈としては綺麗なのだが、体勢類型としては異なるものがあるので、別項で扱いたい。
先の規定では、足が出ているかどうかだった。これは妥当か。
上体が土俵空間に残っていて足は土俵空間外に出ている場合にどう判断するかということになる。
それなら、一般に次に土俵空間内に足を送ることは困難と言えるだろうから、死に体と扱ってよいものと思う。
これに加えて、肩の位置等で上半身をも土俵空間外の判断に加えるとすると、判定がますます困難になるという難点がある。
もっとも、これについては、どうせその後の判断が困難なので結局同じことなのかもしれないが。
類型としては別にした方が好ましいと思うが、重心喪失と理屈は変わらない。土俵空間外に出たとしても、それまでに意図していた技により、土俵空間外に出た時点において逆転可能な体勢とみれるときは、死に体にはならない。
重心喪失や土俵空間外出のみで死に体を考えても難しいのだろうが、実際問題輪をかけて複雑なのは、このような状況であっても死に体が採られない場合があることによる。
一例を挙げたい。自分の重心が喪失していても、相手の上にいる場合に死に体を認めるべきだろうか。
相手の押しに対して引いたが、相手の押しによって相手にかぶさる形で上に乗った。
この際、相手も前傾重心喪失ならば、先に相手が死に体になってることもあるが、相手は足が地面についており自分だけ重心喪失している場合もあり、後者の場合には問題となる。
このような場合に死に体を認めるのが不当だとすれば、自分の体の位置も死に体判断の要素となる。
なぜ位置が重力喪失の死に体の例外になるのか。まず、ほっとけば重力により落ちるのは相手の方が先である状態だから、ほっといたら勝つ状態なので、死に体にはならないという説明があるだろう。
この理屈でいえば、位置の比較は体の一番低い部分になろうか。
しかし、これはやや不自然であるように思われる。
投げの打ち合い事例を考えたい。両者投げを打ちあって、片方の投げによって相手は両足が地面から離れ、重心喪失したが、先に腕が着いたのは投げを打った側だったとする。
この場合、投げが決まったのは、どちらかといえば相手を重心喪失させた方だろう。しかし、高い位置にいるのは重心喪失した方である。投げが決まった側は足が地面に接しているからである。
片方が重心喪失しただけではそのような位置の比較はしないという考え方もあるかもしれないが、それは前述の体の生きてる相手にかぶさった形でも死に体を認めるということになる。ここではひとまずおいておきたい。
これがなぜ悩ましいのかというと、相手の体を引き付け投げるということは、投げの打ち合いにおいてはほぼ上に引き付けることを意味し、それは相手より上にいれば死に体にならない、ということと矛盾するということだろう。実際にこの判断は難しく見られていると思われる。
ともあれ、「体の一番低い部分」で判断するという考え方はなされていないだろうし、不自然である。
「不自然」が根拠の弱いものとするならば、以下のように説明しておきたい。
重心喪失した力士が上にいて、そうでない力士が下にいるとする。このとき、重心喪失していない力士は、自らの体重を両足で支えられる。のみならず、相手からの攻めも耐えられる可能性がある。だから、「放っておけば落ちる」という仮定自体が無意味である。
投げの打ち合い事例で双方腕をついた事例などでは、体が生きている力士であっても、支えられる見込みは小さいだろう。あくまで重心喪失した力士が上にいた場合一般論としては、放っておけば…という仮定が無意味であるということである。
放っておけば相手が先に落ちるという仮定が無意味であるとすれば、位置が死に体に影響するという別の理由を考えてみたい。それは、自分の体重を相手に与えることで「落とす」技ができ、この技は重心を失ってもできる技なので、落とす技ができるうちは死に体ではない、という説明もできる。これは技ごとに考えていくという方向性である。
1-2-1で述べた相手を前に押しているときは足が送れる状態で重心喪失ではないという説明も、同様に技という観点から説明したものである。
とはいえ、押しの場合は重心喪失でも死に体にならないとすれば、その理由はどのようなものだろうか。
以下のような理由としたい。土俵際まで押した場合、押す側とすれば、あえてそこから足を送っていなされるなど土俵を割るリスクを冒さずに、体勢を維持することを放棄して倒れこむという選択も合理的であるから、そのような選択を認め、あとは自分が着地着体する前に相手を土俵外に押しやれるかで決着すればよい。
このような思想から、押しについては前傾で重心を失った場合にも死に体にならないとしたものである。
長々と述べてきたが、仮に前傾重心喪失一般の場合に死に体を否定した場合は、当然押しの前傾重心喪失についてもこれに含まれる。
投げの打ち合いについて、先に重心を失った側についても、自分が投げなりそれが不発にせよ体を預けて浴びせ倒すことにより勝てる可能性が残っているのならば、死に体を否定することも考えられる。
他方、落とす系の技は、相手の重心を喪失させる技ではなく、実際に着足着体させることが必要としたい。結果、引かれて重心喪失して着体したとき、負けになるのは着体時点ということになる。結果から逆算している感は否めないが…
これを認めると、前傾重心喪失の場合はほとんどが死に体とはならないことになる。例外があるかどうかは現時点では分からない。
以上、重心喪失の場合であっても、このように技の観点から、浴びせ倒す、落とす、投げることができる体勢であれば負けにならないとすることはできるとまとめたい。
このような観点からは、「これらの技等により逆転が可能な体勢の場合」、重力喪失であっても死に体を否定することとなる。
この逆転可能性というのは、もちろん未来予測である以上不確実性、抽象性を孕むものではあるが、体勢等からそのような技をかけ、逆転することができることが合理的な場合に限られる。というか、そのような技は重力喪失の前にあらかじめ試みられており、あとは重力喪失時にそれが逆転可能とみれる程度かどうかを体勢から判断することになるだろう。
最初の覆いかぶさり事例は、「落とす」ことにより逆転が可能な体勢だから死に体にならないものとしたい。たとえば、体が十分に離れていれば、体が飛んでいる状態で相手を落とすことは困難だから、落とすことが可能とはいえず、仮に体が相対的に上の位置にあっても死に体となる。
土俵空間外をa、着足をb、前傾重心喪失をc、後傾重心喪失をd、着体をe、反則をf、重心喪失と土俵空間外については、死に体になる場合は0、相手の技によらずにその状態になった場合は1、逆転可能の場合は2を右に添えるものとする。同体の場合はその間に=をつける。
土俵際まで寄り、押し進んだ者がいた場合は、その者はアルファベットの小文字を、相手は大文字を用いる。そのような者がいない場合は任意とする。
時系列順に前から並べてもよいし、力士ごとに分けてもよい。
たとえば、令和元年名古屋場所 若錦翔-恵比寿丸戦https://sumoso.hatenablog.com/entry/2019/07/19/214633 については、
fB
同佐々木ー田原戦https://sumoso.hatenablog.com/entry/2019/07/19/214544 については、
c2d2e=Eとなる。
しかし、この記号が類型に寄与するかとなるか。ある程度可能だが、限界があると思われる。
どういうことか。この2番目の場合の記号化は審判の判断と思しきものだが、私はc2d0eEだと思っている。
私が想定していた類型化というのは、正に前傾が後傾になったか、逆転は可能か、着体はどちらの方が早いのかというような、どのような争点が出現したのかで類型化したいのであり、記号化だけでは目的を達成できなかった。
というわけで、類型化を考えたい。
まず、今まで述べてきたような状態になったかどうか、という判断がある。時間的順序が明らかであれば、死に体になったかどうか、足が着いたかという単純な判断になるだろう。先の分類でいえば、死に体にならない1,2を除外した6通りあることになる。
次に、前後関係が問題になることがある。死に体にならない1,2は考えなくてよいし、反則も前後関係は問題にならないだろう。
それ以外の5通りが、相手にもある。大文字小文字を分けても良いが、必ずしもあるとは限らないので、区別しないものとしたい。全部で15通り。合わせて、21通りとなる。
1.a0の有無
2.bの有無
3.c0の有無
4.d0の有無
5.eの有無
6.fの有無
7.a0とa0との前後
8.a0とbとの前後
9.a0とc0との前後
10.a0とd0との前後
11.a0とeとの前後
12.bとbとの前後
13.bとc0との前後
14.bとd0との前後
15.bとeとの前後
16.c0とc0との前後
17.c0とd0との前後
18.c0とeとの前後
19.d0とd0との前後
20.d0とeとの前後
21.eとeとの前後
敗北原因の類型化は以上だが、もう少し具体的な状況による分類もしてみたい。土俵際でもつれた場合、寄り、押しなどで相手を土俵際におしやった方を攻撃側、俵に近い方を守備側とする。
1.うっちゃり事例
2.土俵際での投げの打ち合い事例
3.正対事例
4.引き落とし事例
5.いなし寄り倒し事例
6.いなし押し事例
7.いなし事例その他
8.ひねり寄り倒し事例
9.ひねり押し事例
10.ひねり押し事例その他
11.送り事例
12.土俵内投げの打ち合い事例
13.土俵内双方後傾事例
14.土俵内その他事例
15.反則
以下未完