続いて、大関昇進基準を作成したい。
これについては前述した。
横綱と比べ、人数の見地からうまくいっていないように見える。すなわち、多い時には五大関が頻発するが、いないときにはまったく昇進基準に合致する力士が現れない。
横綱、すなわち、連覇もしくはそれに準ずる成績を一度でも挙げた力士に次ぐ成績の力士の成績は変動が大きいという大前提はあるだろうが、それでも昇進基準の改善の余地はあるものと思って話を進めたい。
前述のように、人数の不公正の解決策としては昇進基準の修正も降格基準の修正もありうるが、どちらを修正すべきだろうか。または、双方を修正すべきだろうか。
どちらを修正すべきか、という点からみた場合、不合理の大きい降格基準をいじるべきように思われる。
しかし、前述のように、昇進基準も前述のようにあまり正当性がないし、明文規定もほぼ皆無である。そこで、昇進基準も3場所33勝とは別のものを考えたい。
昇進基準が必要なことは前提としたが、なぜ必要なのか、という基準の必要性は、どのような基準にすべきかを考えるうえで間接的に影響する。そこで、なぜ大関にまで昇進基準を設けるのかを考えたい。
事実としては、歴史性に基づくものだろう。横綱はもともと地位ではなく、最上位が大関であることから、昇進について慎重な態度をとった、ということだろう。しかし、ここで問題にしたいのは、沿革ではなく、制度として正当化できるか、ということである。正当化できないものであれば、議論としては、その経緯は改められるべきである、ということにしかならない
では、どのような正当化が考えられるか。
横綱という地位は角界にとっても重要なものであり、その横綱になる資格である大関という地位にも、一定のハードルを設ける必要があるということにしたい。
個人的には、大関以上は優勝争いが求められ、その中で優勝する蓋然性が一定程度認められる者を横綱とする、という位置づけに魅力を感じる。大関以上は、成績の上下ではなく、その頻度で決めるという発想である。が、これもやや現実との乖離が激しいので、今回は採用しない。
というわけで、大関昇進基準を修正したい。順番としては、問題点の大きそうな降格基準から作ることもあり得るが、昇進の前に降格を決めるのが不自然という感覚に従った。
横綱昇進基準では、昇進対象場所は3場所だった。これに合わせるのが自然、という考え方もあるだろうし、1場所で編成される関脇以下との間をとって2場所、とする考え方もある。さらに、人数の過不足が生じない限り原則通り1場所の成績で編成すべき、という考え方もあるだろう。
どれでもよいが、今回は、中間的な存在であることを重視して、横綱昇進基準から一つ減らして、1~2場所の昇進対象成績としたい。
1場所の成績でも人数の適正はある程度図れるが、何度か述べてきたように、大関にふさわしい成績をあげる三役というのは、次々と出現する時期もあれば、1年でない時期もある。そのような広い調整を、すべて考慮要素に求めてもよいが、2場所の昇進対象成績を導入することによって、より明確性のある基準を指向してもよいと思う。
次の表を見ていただきたい。1年で12勝を上げた三役以上の人数の階級表である。
3人から7人で、多いのは4人から6人。これは、12勝が横綱の次の地位を占める成績として優れていることを示したものといえるだろう。やはり、12勝は大関にふさわしい成績といえる。
以上を基本的な発想とした上で、見送り不当ライン、昇進不当ラインを決定したい。