今回は、次のような目的で望ましい取組編成を考えたい。
まず、上位16人は総当り、特に横綱大関は千秋楽に全対戦が終了する総当りとする。
そして、その他の幕内力士26人に含まれるもののうち、いかなる者をいかなる者と対戦させるかという問題を考える。
まずは、幕内上位最優秀成績者と対戦のない平幕優勝は不当であるという価値判断のもと、そのような優勝を出現させない、言い換えれば、そのような平幕優勝をしそうな力士と幕内上位最優秀成績者となりそうな力士との対戦を組むことを考えたい。
以下、上位最優秀成績者と対戦のない平幕優勝を、不当な平幕優勝とよぶ。
さて、目的1を、上位対戦を崩すことなく100%達成することは可能なのか。たぶんムリだという話をしたい。
横綱や大関の人数は、上限が定められているわけではない。
そうなると、仮定の上では16人全員が横綱や大関ということがありえる。
優勝可能な最低の星数は、おそらく8勝7敗だろう。この場合、8勝勢で優勝決定戦となるから、不当な平幕優勝は発生しない。
そうなると、不当な平幕優勝が発生する最低の成績は、9勝6敗となる。
この場合、この可能性がある平幕下位力士と、優勝可能性のある上位力士との総当たりを組むことは何日目でも不可能ということは明らかと言ってよいだろう。
つまり、理論上は、横綱と大関が初日から千秋楽まで総当たりで、6敗した力士までは優勝の可能性が残っているという事態がありえる。
前者の時点で、この割を崩さず下位の優勝可能性のある力士も総当たりに加えるのは不可能である。まして、後者も最悪13日目あたりまで全員優勝の可能性が残ることもありえ、これを加えた総当たりも全く不可能である。
これが非現実的すぎるとすると、もう少し現実に即した条件としたい。
理屈としてはともかく、実際の在位者の最大数は横綱4名大関6名である。
これらが同時に発生するとすると、計10名、6日目から総当たりが発生することになる。
また、一つの場所の横綱大関の在位数としては、部屋別総当たり制下では4横綱4大関8名の例がある。この場合、8日目から総当たりとなる。
実際に発生した幕内最高優勝の最低成績は11勝4敗である。また、上位最優秀成績者の最低成績は10勝5敗なので、下位力士の10勝は不当な平幕優勝にならないと考えれば、11勝4敗以上の下位力士の成績から考えたい。
横綱大関10名の場合を考えると、6日目から総当りが始まる。この割を組むのは4日目終了後だが、この時点では全ての力士に優勝の可能性がある。
そうなると、ここでも下位の優勝可能性のある力士を上位に当てることによる不当な幕内優勝の阻止の試みは不可能ということになる。
横綱大関8名の場合を考えるとどうか。この辺りからが、辛うじて計算上考えるに値するように思われる。
協会が不当な平幕優勝の出現を阻止すべく最大限努力するものとする。したがって、最大限平幕の成績優秀者を減らす取組編成を行うものとする。
そうなると、取組編成は、編成時の最優秀成績者同士、最優秀成績者の人数が奇数の場合はそのうちの一人をそれに次ぐ力士と当て、残りの最優秀成績優秀者に次ぐ成績の力士同士で対戦させ…ということを繰り返すものになるのではなかろうか。そして、最大人数を考えるから、勝負結果としては、同星同士の対戦でない場合は上位者が勝利するものとして考えることになるだろう。
2日目の最善は、おそらく以下のようにすべての力士が2勝と2敗に分かれるのではなかろうか。(上位16人圏内を除いた26人を4人で割ると2名余り、その2名の最善は2勝と1勝1敗が一人ずつということになる)
そうなると、優秀成績者の最大数は以下のようになるのではなかろうか。
全勝者だけならなんとかなるかもしれないが、一敗者以下の対応は無理そうである。
横綱大関同士の対戦を繰り上げれば対応可能と考えられる方もいるだろう。確かに、繰り上げは可能である。しかし、横綱大関の千秋楽から逆算して総当たりを組むのは前提条件でもある。
極端にいえば、初日から横綱大関戦の総当たりを開始し、それが終了した後に平幕の優秀力士と上位の優秀力士で総当たりにすれば、不当な平幕優勝の出現は殆ど阻止できるだろう。しかし、そこまでの意図を含む主張をされている方はいないのではなかろうか。
前の頁で述べた通り、不当な平幕優勝の出現を阻止したければ、ランダムに対戦を組めばそもそも不当性はなくなる。
そのような方法を採らない以上、ある程度現実の取組編成を前提とした議論をしており、初日から総当たりなどというのは現実からの逸脱が大きいということだろう。
いや、そこまで過激な意味を含むのではなく、横綱大関のうち数名の対戦を前半に組むことしか意図していないのだ、という主張もあるだろう。
この場合、問題はどのようにその前半に対戦する横綱大関の対戦を決めるかである。
成績で決定する、多く負けた力士を先に当てるとするならば、そのような力士が出ない星取も可能であり、ここではそのような方法で上位総当たりの人数を減らすことは不可能である。
そうなると横綱大関のうち番付順にある人数分だけ上位総当たりとし、それ以外の者は幕内前半からでも横綱大関戦を組むという対応が考えられる。
これは現実になされているわけではないが、ありうる編成といえるだろう。
たとえば、上位5名を、下位成績優秀者1名を交えて11日目から総当たりにする。
しかし、上図の通り、下位成績優秀者1名くらいは可能だろうが、4敗力士までの対応は困難である。
しかも、このとき、上位総当たりに加わった下位最優秀力士が上位最優秀成績力士と対戦する保障もない。大関の下の方の総当たりに加わっていない力士が最優秀成績になったときは、そのような対戦は保障されない
やはり、下位の最優秀成績の力士を上位と対戦させるという手段では、完全に不当な幕内優勝を阻止することはできない。