このように悩ましい取組編成の問題だが、平幕優勝については上位最優秀成績者との対戦がなければ必要であるという方向性については、優勝の概念をいじれば完全に達成できる。
上位最優秀成績者は、星数が下位最優秀成績者を下回る場合であっても、必ず優勝決定戦に進出できるとするものである。
長いので、「プレーオフ制」と名付けておきたい。
また、プレーオフ制が妥当する、すなわち、下位最優秀成績者以上の星数の上位力士がいない場合を、「下位最優秀の場合」、下位力士が現行の優勝決定戦に参加するような場合を、「下位同点の場合」としたい。
このような制度の場合、上位か下位に同点者が複数いる場合の処理については色々な方法が考えられる。
まず、上位最優秀成績者、下位最優秀成績者がそれぞれ複数いる場合に、予備戦を行うか。多すぎることもあるかもしれないので、このような規定を考えた。
下位最優秀成績者が上位最優秀成績者よりも星数が高く、共に複数いる場合を念頭に置く
5-1-1-1 全員を平等な条件で優勝決定戦(予備戦無し)
5-1-1-2 予め上位最優秀成績者を一人に絞り、それと下位最優秀成績者との間で優勝決定戦
5-1-1-3 予め下位最優秀成績者を一人に絞り、それと下位最優秀成績者との間で優勝決定戦
5-1-1-4 上位最優秀成績者も下位最優秀成績者も一人に絞り、両者で優勝決定戦
このような予備戦を導入するのであれば、現行制度において優勝決定戦が行われる下位同点の場合にもプレーオフ制を導入することが考えられる。
上位16人をいかなる意味とするか。今までなんとなく棚上げしていたが、この問題を取り扱いたい。
「番付に在位している者のうち上位16人」「出場者のうち上位16人」「初日出場者のうち上位16人」また、現実との乖離を小さくするならば、「三役以上」という制度も良いだろう。
まず、問題の是正のために出す案を最初から適度に現実との乖離を調整した案にするのは不適当だと思っている。それは他人の仕事ではなかろうか。
予備戦の導入については、そもそも必要なのかという根本的な問題があり、これはいずれ実証的に調べてみたいが、今のところはとりあえずそのような必要はあるということにする。
下位同点の場合への導入の絡みでは、明らかに不適当な案がある。下位最優秀成績者が、上位に同点の者がいれば優勝決定戦に、いなければプレーオフになるので、プレーオフの方が優勝決定戦よりも下位最優秀成績者に有利となるべきである。逆に、不利になるような制度は不適当となる。5-1-1-3の、下位最優秀成績者のみに予備戦を設ける場合で下位同点の場合にプレーオフ制を導入しないのは不適当である。
そのような有利不利の問題ではないが、5-1-1-4の、いずれにも予備戦を設ける場合で、下位最優秀の場合と下位同点の場合に予備戦を導入するかしないかを分ける合理的な理由は思いつかない。適当ではないだろう。
とりあえずは予備戦の必要があるものとしているので、5-1-1-1は採らない。あとは、制度の設計思想として、本来は上位力士のみに優勝の資格があり、下位力士にはないと考えるか、下位力士が本来は優勝すべきであり、上位力士は救済であると考えるかだろう。
各段については、当然上位だろうが下位だろうが優勝の資格はある。それでも幕内において別の考え方がありうるのは、やはり取組編成が特殊であるというのが問題の根本なのだろう。
取組編成について、同星で当てないという考え方については十両も同じだが、それは人数が少ないので問題になりにくいのだろう。そのうえ、幕内最高優勝というのは、全力士の中での最優秀でありそれ故に賜杯を賜るという、各段力士とは異なる特別なものだという意味づけがあるのではなかろうか。
予備戦の必要の有無自体疑問のあるところではあるが、ここでは上位最優秀成績者が優勝者であるべきとの設計思想のもと、5-1-1-3を採りたい。また、そうなると前述の不均衡が発生するので、下位同点の場合にも予備戦を設けたい。
上位圏内の概念だが、「初日出場者」は途中出場を考慮しない理由がなく不適当だろう。三役以上は折衷案であり、最初に出すべき案ではないと思う。あとは在位者か出場者かの比較で、出場者の方がより丁寧ではあるが、出場者単位では以下のような不当なケースがありうる。
上位から数えて17番目に在位している力士がおり、1番目は同部屋の力士である。当場所1番目の力士は休んでいたが、17番目の力士が勝ち進み、単独トップに立った。このままでは上位優勝者が優勝決定戦に出場してしまう。そこで、1番目の力士が途中出場した。
さて、このような場合が不適当なのは当然だが、これを制度に反映させるべきか。在位者よりも出場者で区切る方が適当であると思われ、反面このように同部屋の力士が出場することにより優勝決定戦出場者を操作できるという事態もかなり稀だと思われるし、単純にこのような出場を禁止すれば良いような気がする。もちろん、途中出場の目的などというものも容易に認定できるものではないから、しらばっくれたらそれまで、ということも容易に想定できるが、周囲の状況は明らかでもあるので、禁止という規定があるだけで十分に効果があるように思われる。
そこで、このような出場を禁止するものとして、出場者から16人圏内としたい。
以上より、出場者から16人圏内にある者を上位力士、その他の者を下位力士とし、下位力士が最優秀成績者の場合には、上位力士の最優秀成績者が優勝決定戦に出場する。
下位最優秀成績者が複数いる場合には、下位最優秀成績者同士で予備戦を行い、一人だけが優勝決定戦に出場できるものとする。