前述のように、大関昇進基準以上に改善の余地がある制度である。
大関の人数の改善には、この角番制度を修正するのが最も効果的である、というのは容易に予想できる。しかし、原則通り1場所の負け越しで陥落させるとすると、人数が不足するのも明らかである。
したがって、一定の成績を挙げた場合のみに角番の保護を与える、という形になるだろう。
以下、どのように変えるかを考えていきたい。
降格基準を考える大きな枠組みを考えたい。
世の中には大関については勝ち越しでも降格させるべき、という意見がある。
番付制度では、勝ち越したら番付は下がらない。その例外を認めるか、という話である。
もっとも、負け越しでは番付は上がらないことになっているが、番付最下位付近では負け越しても上がる。それを推及させれば、勝ち越し降格は認められないわけではないのかもしれない。
単純に1場所の8勝や9勝で下げるというのならば、大関がいなくなるだろう。前述のように、角番制度を廃止しただけでも人数が過少になることが予想されるのだからなおさらである。
しかし、ある一定の期間、例えば二桁の成績を一場所も収めなければ降格、というのは、人数の面からは適正な基準が作れると思う。また、勝ち越しよりも高い一定の成績を大関に要求するのならば、昇進基準のみならず降格基準もそれに合わせるのが整合的である。
とはいえ、勝ち越し降格なしで十分説得力のある基準を作れるのであれば、あえて例外的な勝ち越し降格を導入する必要はないし、現実との乖離も大きい。
というわけで、勝ち越し降格は導入しない。
人数を適正に保つため、もっとも効果があるのは、昇進基準と同様、最低限の明確性のある基準にとどめ、ケースバイケースで降格を決めることである。
これは、前述した不運な結果の回避の思想には反することになる。
今回は現実との乖離を小さくする方向性であり、それでも十分に大関の人数の適正を保つことができると考えられることから、大関降格基準について徹底した明確性は放棄しない。
大関の人数が過剰であることを抑制することを制度に素直に反映すれば、人数が好ましくない程度に至った場合に角番の保護を停止するという制度が考えられる。
人数としては5大関辺りだろうか。
このような制度でも、角番停止の条件が明確性を持っていればやはり徹底した明確性のある基準ではある。しかし、そうでない場所における負け越し事例と不公平感はあるだろう。また、新大関がいきなり角番の保護を受けられないのはやや負担が大きいかもしれない。新大関は別の扱いにすることも考えられるが、それは不公平の程度が大きく不当である。
人数に直接影響する効果が大きいから、これも一つの手段だろうが、今回は先に別の手段を検討したい。
基本的なアイディアとしては、先の昇進基準と同様である。12勝を一つの大関にふさわしい成績と考え、一定期間その成績を残せなかった力士は大関にふさわしくないものと考える。この考え方だと、反面、その期間内はどのような成績であっても大関に残すという扱いも考えられる。しかし、ここでも現実との乖離が小さいことを優先し、2場所連続負け越しで降格する角番制度を設ける。
優秀次点も同様に扱いたい。
期間については、12勝等と厳しいハードルを設けた一方、大関の人数の維持を図る必要があることから、判断要素にしうる場所の限界である1年6場所とする。
さらに、1度の10勝であっさり特例昇進する可能性がある関係から、頻繁に10勝を上げている力士があっさり降格することは避けたい。そこで、10勝から3場所以内も同様に保護するものとする。
新大関については、原則として昇進場所から6場所は角番制度の保護があるものとする。昇進場所において12勝をあげたのと同じ扱いである。このくらいの擬制は許されるだろう。
特例昇進については、10勝として角番制度の保護を受けられる。
以上、
負け越しで降格するが、
1.12勝、次点又は特例昇進以外の昇進場所から6場所以内
2.10勝又は特例昇進の昇進場所から3場所以内
3.前場所勝ち越し
の場合は降格しないということを降格基準1とする。